第110号「そうじの力だより」

事例紹介「無言実行」が改革を進める! 〈そうじを通じた業務改善活動〉~諫早建設(株)の「そうじの力」の取り組み~東京都小平市の諫早建設。地域密着でお客様の個別のご要望にお応えする注文住宅を得意とする工務店です。弊社がお手伝いしての「そうじの力」の取り組みが昨年八月から始まり、約束の一年が経ちました。この間に同社も大きく変わりました。この一年を振り返ってみます。まずキックオフにあたって、全員で議論し、この取り組みを通じて最終的に到達したい目標を決めました。それが『年間新築二十棟で残業ゼロ』という目標でした。同社は、注文が順調なこともあって、とにかく各人の業務負荷が高いのです。受注のペースを高めつつ、もっと社員にプライベートな時間を充実させてやりたい、というのが辻潤也社長の強い想いなのです。残業時間削減のためには、相当な業務の効率化や、思い切った発想の転換が必要になります。それを整理・整頓・清掃の徹底を通じて成し遂げていこうというのです。すごいのは、毎週月曜日の午後五時から七時の二時間を、「そうじの力」の活動に充てたことです。これだけでも、辻社長の「残業ゼロ化」への決意の強さがうかがえます。活動を始める前は、事務所のデスクの上には書類が山積みされており、倉庫の中は資材や工具類であふれかえっていました。なるほど改善のしがいがあります。しかし、接する中で私ついたのは、同社における問題は、物理的なことよりもむしろ社内のコミュニケーションの質にあるということでした。同社は、年齢が近い社員が多いこともあり、社員同士は非常に仲が良いのです。そのため、何となく阿吽の呼吸でコトが流れていってしまいます。ひとつの課題に対して、きちんと話し合いをして決め事を決めて、それに従って実行し、また検証する、ということが弱いように見えました。訪問するたびに、きちんと話し合い、決め事を決めて明文化することを繰り返していきました。ところで、お手伝いする中で面白かったことがあります。毎回、事務所や倉庫、建築現場といった「現場」に足を運び、現物を見ながら「ここをこうしたら」というアドバイスをするのですが、それに対して社員さんたちから反論があることが多いのです。納得していないのかな、と思って次回に伺うと、なんと私のアドバイス以上に良くなっているのです。みなさんシャイなだけで、実行力があるのです(笑)。私がお手伝いする先でも、「なるほどそうですね。分かりました」と返事だけは良いものの、ちっとも改善が進まないところもありますので、同社の「無言実行」は印象的でした。こうして一年間みっちり取り組んでみて、環境は劇的に変わりました。事務所は「机上ゼロ」になりました。倉庫からは不要なモノが一掃され、定位置管理ができるようになりました。何よりも、週一回の活動を通じて、「話し合い、決め、実行し、検証する」という風土が定着しました。活動を振り返ってのみなさんの感想をご紹介します。〈効率はすごく良くなった。みんなで協力をしてやったので意識も大分向上した。現場が近くなり残業は減った。〉〈最近は道路に落ちているゴミが気になるようになった。〉 〈業者会で監督達の意識の高さに驚いた。自分ももっと頑張らねばと思う。〉 〈これまでのように漠然とではなく、計画立てて仕事をするようになった。〉辻社長も、「社内できちんと議論ができるようになった。相手のことが気遣えるようになった。」とおっしゃっています。「残業ゼロ」への道はまだ半ばですが、これを基盤にして、同社はさらに発展していくことでしょう。     (小早)おそうじ匠の技道具をきれいに使いましょう!~モップをやめて雑巾を使おう~キレイな道具を使うと、キレイにそうじをする事ができるだけでなく、そうじをしようという意欲が湧きます。逆に、道具が汚いと、そうじをするモチベーションが下がります。多くの会社で床のそうじをするのに水モップを使っています。しかしその水モップがキレイに管理されていないケースが多く見受けられます。 ビルメンテナンスの専門家に話を聞く機会がありました。最近では清掃のプロの現場からは既存の水モップが消えつつあるそうです。理由は①衛生管理が難しい②固く絞れないからだそうです。きちんと洗いにくくて乾きにくいから不潔であるという事と、水モップで拭くとしっかりと水を拭き取る事ができないから不潔という欠点があるからという事でした。結論として水モップは、プロでも清潔に使うことができないモノなのだそうです。私たちがキレイに使えないのも無理はありません。そうじのプロの現場の場合は、しっかり洗えてしっかりと絞れるフラットタイプのモップに変わってきているとのことです。だからといって私たちもプロが使うフラットタイプのモップに変えるべきだという話ではありません。それよりもまずは「水モップを使うのをやめよう」ということです。「キレイにそうじをするためにはキレイな道具を使おう」は「私たちが常にキレイに維持管理できる道具を選ぼう」という事でもあります。私たちの周りでそれに適した道具は「ぞうきん」です。ぞうきんはキレイに洗ってきちんと乾燥することができます。しっかりと固く絞れます。道具も環境も衛生的に維持管理することができる優れものです。床そうじには水モップをやめてぞうきんを使うことをお勧めします。ぞうきんには他にも利点があります。対象物との距離が近いということは、汚れや異常に気づきやすい、ということです。柄がある道具は、どうしても距離が遠くなります。もうひとつの利点は、「ダイエットになる」ということです。あっ、これは私にとってのメリットであって、みなさんにはデメリットかも知れませんね・・・。   (飯塚) おそうじコラムゴミを捨てる人、拾う人~せめて毎日ひとつゴミを拾おう ~毎日ゴミ拾いをしていると、様々な場面に直面します。 道路に空き缶やペットボトル、吸い殻や弁当屑が落ちているのは当たり前の光景ですが、時々、「どうしてこんなものがこんなに大量にここに?」と思うようなものが捨てられていたりします。 田んぼの脇に、大量のタバコの吸い殻。どう考えても、この場でこれだけの大量のタバコを吸ったとは思えません。おそらく、車内の灰皿を、ここで空けたのでしょう。 やはり田んぼの脇に、アダルトビデオのDVDとエロ本、コンドームと大量のティッシュが捨てられていることもありました。いったい蚊に喰われるこの野外で、ナニをしていたのでしょうか?(笑)。 こういう場面に出くわすと、本当に情けなくなりますが、一方で、そのゴミを拾う人たちも、この日本にはいるのです。 私は出張であちこちを旅していますが、各地でゴミ拾いに出かけると、街のそうじをしている人を見ることがあります。 香川県高松市は、特に、そういう人が多いように思います。全国を見てみれば、他にもたくさんゴミ拾いを実践している人たちがいることでしょう。 神奈川県相模原市の福田隆之さんは、ある勉強会で知り合った方ですが、やはり毎日ゴミ拾いをしているのだそうです。 驚いたのは、福田さんの装備。私も含めて、多くの人は片手にレジ袋またはゴミ袋、もう片手にはトングといった格好でゴミ拾いをします。しかし福田さんは、それでは様々なゴミを効率的にたくさん拾うことはできない、と、オリジナルの装備を開発されています。 よりたくさんゴミを回収できるように、段差も乗り越えられる四輪カートを開発。腰から紐で引っ張ることで両手の自由を確保しています。 トングの先に磁石を取り付け、鉄類を容易に回収できるようにしています。 福田さんはこの装備で、毎日近所を二~三時間ほどもかけてゴミ拾いしているのだそうです。 福田さんのようには、なかなかできないでしょう。 しかし、多くの人が、毎日せめてひとつでも足下のゴミを拾うようになれば、世の中はもっと住みやすく楽しいものになるに違いありません。       (小早)飛鳥はミタ!素敵なチーム力をミタ! 諫早建設(株)編「そうじの力」に入社した五月から七月までの三か月間、諫早建設(株)の支援に同行させてもらいました。私が特に印象に残った点をご紹介します。 一つ目は、会長・社長・社員の皆がとても仲が良いこと。とても明るい雰囲気、フラットで、まさに「チーム」で仕事をしていることを感じました。 弊社の小早は常々、「そうじは楽しくやろう」と言っています。諫早建設のみなさんは、まさに「楽しそうに」活動をされていました。 同社は事務所と現場の二班に分かれてそうじの活動をしており、それぞれにリーダーがいます。お二人は割と物静かで、押しの強いタイプではありません。しかし、だからこそ、チームの皆の「もっとリーダーを手伝おう」「助けてあげよう」「盛り上げよう」という気持ちが、活動を盛り上げたのだと聞きました。 二つ目は、強い実行力です。カーペットの洗浄の実習を行った二週間後、伺った際には事務所のカーペットが全て洗浄されていました。カーペットを洗うのは結構大変です。一枚一枚洗った後に、しっかり水を切って干す手間がかかります。日々の業務の中で、時間を作り出し、「必ず」実行する。これは強く素直な意識があるからこそできることだと思います。 小早は支援の場面で、「ここをこうしませんか?」と色々な提案をしますが、強制はしません。できる限り社員さんたちの自主性が発揮できるように心がけています。 諫早建設の皆さんも、それに応えて、どんどん自分たちで考えて改善を進めていったようです。 ある時、在庫品置き場の倉庫に、背の低い折り畳みの長机が置かれていました。「あれ?今まで長机なんてなかったのにな。なんでかな?」と社員さんに理由を聞いてみると、「この倉庫は涼しいんです。外が暑いので、職人さんが涼しいところで、座って休めるように机を設置したんですよ」とのこと。以前は床に塗料などが飛び散っていましたが、それをすべてこそげ落とすことで、「職人さんが気持ちよく座って休めるスペース」を作り上げたのです。目を凝らしてよく見てみると、床がとても美しくなっていることに気が付きました。 そうじをすると、続ければ続けるほど「自分のため」のものから「人のため」の活動になり、どんどん良いサイクルが回っていくことを、同社の姿から実感できました。まさに弊社支援の目指す、「そうじを通じて社風を良くする」活動を間近に見ることができました。      (大槻)今月の読書から『逆説の日本史』シリーズ 井沢元彦 著~“ケガレ”思想に見る日本人の潔癖症とそうじへの態度~著者の井沢元彦氏は、歴史学者ではなく、作家です。従来の学会の常識を破る柔軟な発想で日本史を紐解き、現代にも通じる日本人の思考傾向やパターンを解き明かしています。 「出雲大社はなぜ御所や東大寺大仏殿より高かったのか?」「卑弥呼と天照大神との関係は?」「天智天皇と天武天皇は本当に兄弟だったのか?」「なぜ当時世界最大の金銅仏が奈良時代に建てられたのか?」「万葉集は誰が何の目的で編纂したのか?」「武士はなぜ生まれたのか?」など、知的好奇心をそそられるテーマが盛りだくさんで、読むほどにグイグイと引き込まれていきます。 同シリーズは現在までに20巻発刊されていますが、私はまだ4巻を読んだにすぎません。 ともあれ、私がこのシリーズを読む中で、ひとつそうじに関することで分かったことがあります。 それは、“ケガレ”思想と大きく関わっています。ケガレとは、タブー視された不浄なもののことで、物理的に「不潔」であることとは、ちょっと違います。たとえば、他人の箸は、たとえ徹底的に洗浄消毒して滅菌したとしても、それを使うのは「キタナイ」と感じるということです。 日本では古代から、死者や血、病気、みだらな行為、不慮の災害など罪、禍、過ちを“ケガレ”と見なし悪霊の仕業と考えてきました。 そのため、悪霊を鎮めること、すなわち祭祀が近世までの主な政(まつりごと=祭り事)だったのです。 日本人は、動物の死体に接する仕事、たとえば動物の皮を使って鎧兜や靴などを作る職業に就いている人たちを“ケガレ”ている、ということで差別してきました。しかし、そうした職業の人たちがいなければ、我々の生活は成り立たないのです。非常に身勝手な捉え方です。 日本人は、“ケガレ”思想のために、極端なほど清潔であることを好みます。「抗菌」グッズが人気であることからも分かります。 ところが、汚れはすなわち“ケガレ”なので、そこに自ら触れようとはしません。不浄なモノを浄化する役目は、他の誰かに任せる(押し付ける)のです。 そうじというものを、何か卑しいものと捉え、掃除夫(婦)にやらせるものだというように考えるのです。 企業においても、キレイにすることが良いことだと思う人は多くても、それをするのは自分ではない、と思う人たちが多いのは、このためではないでしょうか。 つまり、「問題を直視し、自らの手を使って解決に挑む」という姿勢を持たない限り、企業も地域も日本も良くなっていかないと思うのです。 今の日本社会を把握する上で、とても良いヒントを与えてくれる本です。(小早)お知らせ◆東京発 実践企業見学会(株)小河原建設の見学+小早祥一郎の講演 「東京一キレイな現場」を目指して、一日に5回のそうじを実践している小河原建設。定位置化が進み整然とした事務所と、「裸足で歩ける」建築現場を、ぜひ間近で見て実感してください。 日時: 9月25日(木)     13:30~14:30 小早祥一郎 講演     14:30~15:30 小河原建設 プレゼンテーション     15:30~17:00 小河原建設 事務所&現場 見学会場所: (株)小河原建設     (東京都中野区中央5-4-24 丸の内線新中野駅3分)会費: 3,000円主催: (株)そうじの力 (メールまたはFAXでお申込みください)株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動(5S=整理・整頓・清掃・清潔・しつけ=環境整備)は、「人づくりと組織づくり」です。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。