2018年07月08日
5Sに取り組んでいるのにあなたの会社が変わらない10の理由 その1「社長がやらない」
世の中、「5S」「環境整備」などに活動に取り組んでいる会社は、決して少なくありません。
しかしながら、そのすべてが「期待するような効果」を上げているわけではないようです。
「やってみたけれど、うまくいかなかった」
「一過性で終わってしまった」
「続けてはいるけれど、マンネリ化してしまっている」
…
「期待するような効果」を上げられない理由は、一体何なのでしょうか?
その理由を解き明かすのが、本シリーズコラム。
全10回にわたってお伝えしていきます。
そうじは「社員の仕事」?いいえ、社長をはじめ「全員の仕事」です。
ウチの会社は5S活動に力を入れている、という社長さん。
でも、社長室に入ってみると、デスクには書類の山。
足下にもたくさんの荷物。壁にはたくさんの貼紙。
書棚には書類やら書籍やらが、横になったり逆さになったりして棚から転げ落ちそうです。
「そうじ(5S活動、環境整備)は、社員がやるものであって、社長がやるものではない」
と考えている社長は多いです。
どうしてでしょうか?
そうじには様々な効果があります。
安全性の向上、生産性の向上、快適性の向上、そしてコミュニケーションの活発化…。
だからこそ、「教育」として社員さんたちにやらせたいのでしょう。
でも、ちょっと考えてみてください。
「整理整頓しなさい」と言う社長の身の回りがそんな状態であったら、説得力はあまりないですよね。
言われた社員さんたちは、社長命令であれば、まあ取り組みはします。
でもそこには「言われているからやる」以上のモチベーションは生まれないでしょう。
ですので、社長も多いにやるべきです。
「自分が一番やっているぞ!」くらいの気概で取り組むべきです。
「いや、経営者と社員のやるべき仕事は違う」
そんな反論が聞こえてきそうです。
普段の業務においては、確かに経営者と社員の役割は違います。
でも、「社内を整える」ということに関しては、経営者と一般社員の役割の違いなんかありません。
経営者だから高度なそうじができるとか、ありませんよね(笑)。
会社は、社長・社員全員が関わる「家」であり、プラットフォームです。
家のそうじは誰の仕事でしょうか?
奥さんの仕事?とんでもない!家に住む全員がやるべき仕事ですよね。
そもそも、そうじって面倒くさいものです。
そして、健康な体があり、基本的な生活スキルが身についていれば、誰でもできてしまうことです。
多くの人が、「面倒」で「自分でなくてもできる」ことは、できればしたくないと考えます。
でも、だからこそ、社長がやることに意義があります。
社長がそうじに取り組むからこそ、社員に伝える「目的」「意義」「効果」「目標」に説得力が生まれるのです。
企業は、社長がすべてです。
社員は、社長の行動を見ています。
率先垂範?背中を見せる?社長、それは「やっている」ことにはなりません。
「小早さん、僕はそうじしているんですよ。」
という社長さん。
聞いてみると、毎朝、一人でトイレそうじをされているようです。
「でも、誰も手伝おうとしないんですよ」
と不満げなお顔です。
「どうして一人でトイレそうじをなさっているのですか?」
と問うと、
「だって、トップたるもの、率先垂範が大事じゃないですか。ほら、よく『背中を見せろ』っていうでしょ」
との答えが返ってきました。
私は、率先垂範という言葉が嫌いです。
なぜならそこには、
「自分がやっている姿を社員に見せれば、社員はやるようになるだろう」
という魂胆が見えるからです。
加えて、いったん社員がやるようになれば、
「もう自分の役目は終わった」
とばかりに、社長自身がそうじをしなくなる、という例もたくさん見ました。
はっきり申し上げます。
その魂胆は、社員に伝わります。
だから社員が手伝おうとしないのです。
大切なことは、社長と社員が一緒になってやることです。
社長が一人でやるのでなく、社員にやらせるのでもありません。
ある会社で、こんなことがありました。
私の研修中、講義やミーティングの場には同席する社長。
その後、工場内の現場を巡回したり、そうじの実習をしたりする際には、なぜか姿を消すのです。
その社長さんも、「私は一人でトイレそうじをしている」とおっしゃっていました。
毎朝朝礼で、5Sの大切さを説いていました。
でも、果たして社員さんたちにはどう映っていたでしょうか。
「社員と一緒にそうじをする」
というのは、
「社長と社員の間にある見えない壁を、社長自身が壊し、社員に歩み寄る」
ということです。
朝礼や会議で、「5Sの大切さ」を100回繰り返して説くよりも、一緒に実践する方が、ずっと効果があるはずですよ。
一緒にやればいいことたくさん!一緒にやらなきゃモッタイナイ!
先ほどお伝えしたとおり、そうじは「誰にでもできる取り組み」です。
役職や肩書、経験や知識は関係ありません。
社長、部長、課長、係長、主任、一般社員、パート、アルバイト、新入社員…。
企業における仕事の中で、唯一、それら全員がフラットに活動できる取り組みです。
社長と社員が、そうじをして一緒に汗を流すことで、お互いの距離が縮まります。
「社長がこんなに一生懸命やってくれている」という信頼関係が生まれます。
ある会社で研修の際、ドロドロに汚れた機械を、社長と新入社員とで、全身泥だらけになりながらそうじをしました。
「これはひどい汚れだね(笑)」
などという他愛もない社長の一言から、社長と新入社員の間にどんどん会話が生まれていきました。
普段はなかなか会話のない立ち位置の二人。
歳も親子ほど離れていますから、なかなか共通の話題もありません。
機械のそうじが、歩み寄るきっかけになったのです。
あるとき、その社長さんが
「最近、社員が僕に世間話をしてくれるようになりました」
と嬉しそうに笑って話してくれました。
その会社では、デスクの整理・整頓に関しては、社長も社員もありません。
定期的なチェックの際には、社員が社長のデスクについて、
「社長、もっと整理・整頓しましょう」
と指摘する場面もあります。
業務の中で、社員が社長に対してモノを申せる機会は、滅多にないことでしょう。
でも、そうじではそれができるのです。
「言いたいことが言える」
「やりたいことを『やりたい』と言える」
自主性のある社風は、こんなところから作られていくのではないでしょうか。
まとめ
そうじとは、単に「会社をキレイにする活動」ではありません。
私たちの定義するそうじとは、【本質を明らかにし、究めること】。
モノにアプローチしながら、実はそこにまつわるコトの問題をあぶり出すアプローチなのです。
社長が社員と一緒にそうじをすることで、様々な隠れた問題が表面化します。
問題が表面化するからこそ、課題設定ができ、解決する行動に取り組むことができる。
「期待する効果」を上げている企業は、社長も一緒に取り組んでいます。
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