2018年08月02日
5Sに取り組んでいるのにあなたの会社が変わらない10の理由 その7「目的を取り違えている」
世の中、「5S」「環境整備」などに活動に取り組んでいる会社は、決して少なくありません。
しかしながら、そのすべてが「期待するような効果」を上げているわけではないようです。
「やってみたけれど、うまくいかなかった」
「一過性で終わってしまった」
「続けてはいるけれど、マンネリ化してしまっている」
…
「期待するような効果」を上げられない理由は、一体何なのでしょうか?
その理由を解き明かすのが、本シリーズコラム。
全10回にわたってお伝えしていきます。
目次
「表面上の目的」と「真の目的」
あなたの会社が、”そうじ”(=5S活動や環境整備)に取り組む「目的」は何でしょうか?
「会社をキレイにすることです」という答えがひとつあるでしょう。
確かに、汚いよりはキレイな方がいいです。
キレイであることは、一つの価値です。
でも、それならば、大真面目に時間とお金と労力をかけて、皆で活動する必要があるでしょうか?
私は、“そうじ”にみんなで取り組む「真の目的」は、
・各人が本来の持てる力を発揮できるようにすること
・お互いに気持ち良く仕事ができるようにすること
だと考えています。
「会社をキレイにしていく」ためには、不要なモノの処分は必須です。
不要なモノがなくなれば、モノの置場が決められます。
モノの置き場が決まれば、探しものが少なくなり、無駄な時間を削減することができます。
そして不要物や汚れがなくなれば、危険な因子をすぐに発見することができ、事故や怪我、不良やクレームが削減されます。
万が一何か事故が起こってしまった際の、対処の手段も考えやすくなります。
結果、安全性や生産性、快適性や品質が向上するのです。
さらに、”そうじ”をすることで「気づき」の感度が高まります。
自分の起こした行動に対する結果がすぐに見えるので、「自発性」や「行動力」がアップします。
そして、実務以外の作業を皆で行うことで、社内の縦横のコミュニケーションが活発になります。
実務上では見えなかった、相手の「得意・不得意分野」「特性」などもお互いに見えてくることでしょう。
コミュニケーションの活性化は、社内のチームワークを促します。
最初に社員に示す、「表の目的」は「会社をキレイにすること」で良いかもしれません。
でもその奥にある「真の目的」を、社長であるあなた自身がいつも心に置いて、活動を進めていくのが良いでしょう。
“そうじ”は、「コト」へアプローチする手段
「真の目的」に鑑みれば、”そうじ”という「モノ」へのアプローチは、ひとつのキッカケに過ぎないということがご理解いただけるでしょう。
「モノ」へのアプローチは、その先にある「コト」へのアプローチ手段なのです。
たとえば、書類で溢れかえっているデスクがあるとしましょう。
ひとまず、要らない書類を捨てることから活動は始まります。
しかし、そこで終わってしまっては、いずれまた書類は溜まってしまいます。
「なぜ書類が溜まるのか?」
「どうすれば溜まらないようになるのか?」
この問いかけが重要です。
なぜ溜まるのか。
それは、捨てるルールが決まっていないからです。
だから、どの書類をどのようなタイミングで捨てるのか、まずはルールを決めなければなりません。
しかし、ルールを決めたからといって、そのルールが徹底されるとは限りません。
ルールが浸透するためには、
・必要な情報が円滑に共有される仕組み
・お互いに忌憚なく指摘したり意見交換したりできる社内の雰囲気
などが必要だと気付きます。
つまり、本当に大切なのは、
「書類を捨ててその場をキレイにすること」
ではなく、それをキッカケにして、
「ルールや仕組みを作ったり、良い空気を作る努力をしたりすること」
なのです。
「真の課題」に踏み込め!
そういうことを考えていくと、社内に存在する「真の課題」が見えてきます。
ある印刷会社では、不良在庫が多く、”そうじ”の活動においては、不良在庫を整理することが大きな課題でした。
しかし、
「なぜ不良在庫が多いのか」
と原因をたどっていくと、
・作業員の印刷技術の習熟度に差がある
・印刷技術の未熟な作業員が不良品を多く作っている
という事実が判明しました。
「真の課題」は、熟練工の技術が新人たちに伝承されていないことだったのです。
同社ではさっそく技術勉強会をスタート、それが不良在庫を大きく削減させました。
また、あるお弁当製造会社は、忙しくて社員の負担が大きく、なかなか清掃の時間を捻出できない現状がありました。
しかし、
「なぜそんなに忙しいのか」
と原因をたどっていくと、
・メニューの種類が多すぎる
・配達エリアが広すぎる
などの課題が浮かび上がってきました。
そこで、メニューを統合して削減し、配達エリアも絞るという経営判断をしたのです。
“そうじ”に取り組むことはすなわち、経営にメスを入れること。
目の前をキレイにすることだけにこだわっていては、決してこのような【本質的問題】には切り込んでいけないのです。
まとめ
私たちの定義するそうじとは、【本質を明らかにし、究めること】。
モノにアプローチしながら、実はそこにまつわるコトの問題をあぶり出し、改善していくアプローチなのです。
まずはトップリーダーである社長自身が、”そうじ”に取り組む目的を正しく理解すること。
そして、「これは経営改革だ」と肚をくくることです。
活動で明らかになった「真の課題」に、あなたがしっかり向き合えば、社員にも確実に「真の目的」が浸透していきます。
そうすれば、おのずと、「経営観を持ち、自ら考え行動する」社員が育っていくことでしょう。
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