2019年04月14日
人手不足を解消せよ!中小企業の定着率向上は「環境整備」から!
「せっかく採用したのに、人が辞めてしまう…」
早期離職者が出ることは、中小企業にとっては大きな痛手です。
3人に1人は、入社3年以内に離職すると言われる昨今。
「社長の想いについてきてくれる」社員の定着率を高めるために、どんな手が打てるのでしょうか?
▼目次 1.定着率の向上に有効な施策とは? 2.なぜ環境整備がよいのか? |
1.定着率の向上に有効な施策とは?
(1)福利厚生や給与が定着率を高める?
定着率の低さに苦しむ社長さんが必ず悩むのが、社員の待遇を良くすべきかどうか、ということです。
給料をもっと高くすべきだろうか?
ボーナスをもっと出すべきだろうか?
休暇制度や報奨制度、遊園地やリゾート施設の割引、スポーツクラブの特典など、福利厚生を充実させるべきだろうか?
確かに、待遇は悪いよりは良い方がいいでしょう。
ただ、そもそも中小企業には資源が多くありませんから、待遇を上げるといっても限界があります。
また、必ずしも、待遇が良い会社が定着率が良く、待遇の良くない会社の定着率が悪い、ということでもないようです。
定着率を左右するのは、待遇だけではないようです。
(2)人手不足を言い訳にしていないか?
今の日本は、どこを向いても人手不足です。
私も多くの企業経営者とお話をする機会がありますが、ほとんどの社長さんが人手不足を嘆いておられます。
だから、傾向的に人手不足であることは間違いありません。
かといって、日本のすべての企業が人手が足りないか、というと、そうでもないのです。
中には、「ウチはじゅうぶん人手は足りている」とか、
「募集をすれば、定員以上の応募がある」と、
胸を張る社長さんもいらっしゃいます。
同じ業界、同じ企業規模でも、会社が違えば、人手の充足感は違うのです。
だから、「人手不足だから」という決め台詞で会社の苦境を正当化するのは、実は言い訳に過ぎない、ということになります。
2.なぜ環境整備がよいのか?
(1)環境整備は誰でもできる
では、資源の少ない中小企業において、給与や福利厚生といった待遇を上げずとも、定着率を向上させることはできるのでしょうか?
そのひとつの施策が、”そうじ”(=環境整備、5S)です。
社長を筆頭に、パートやアルバイトも含めて、全員で、整理・整頓・清掃に取り組むのです。
環境整備の良いところは、誰でもできる、ということです。
整理・整頓・清掃をするのに、高い学歴も、公的資格も、専門技術も、長年にわたる経験も、必要ありません。
いってみれば、今日入った新人でも、取り組むことができるのです。
会社を変革する取り組みに、今日入ったばかりの新人さんや、社歴の浅い若手社員さんたちが参画できるのです。
また、取り組むのにお金がかからない、というのも、環境整備の良いところ。
新たな商品開発や販路開拓には、相当のお金が必要ですね。
でも環境整備は、「つくる」ことではなく「今あるものを見直す」こと。
つまり、初めからお金がかかる取り組みではありません。
ならば、どんな小規模・零細の企業でも取り組むことができます。
(2)環境整備は「働きやすい環境」を生む
ではなぜ、環境整備(そうじ=5S)に取り組むと、定着率が向上するのでしょうか?
まず一つは、職場環境が良くなる、ということです。
汚い職場、乱れた職場で働きたい、という人がいるでしょうか?
できれば、キレイで整っている職場で働きたいと、多くの人が願うのではないでしょうか。
整理・整頓・清掃を推進することで、間違いなく職場はキレイで整ってきます。
建築現場や製造現場などでは、危険物が取り除かれ、安全性が高まります。
事故やケガの心配なく、安心して働くことができます。
どこに何があるのかがひと目で分かり、探し物が少なくなります。
「何をどうしたら良いのか分からない」
「誰に聞いたらいいのか分からない」
といったことが少なくなり、ストレスが減ります。
清潔なデスク、フロア、トイレ、車両ならば、
すがすがしい気持ちで仕事に向かうことができます。
(3)環境整備は「やりがい」を生む
それだけではありません。
誰かが整理・整頓・清掃に取り組んだ結果、その職場が働きやすい環境に変わります。
すると、周囲の人たちは、その人に感謝するようになります。
「場を整えてくれて、ありがとう」と。
すると、その人も嬉しいですね。
自分の働きが周りの人たちの役に立つこと。
それを喜びと感じること。
これを「やりがい」と言います。
業務そのものでは、若手や新人さんたちは、なかなかやりがいを感じることが難しい面もあります。
業務において貢献しようとすれば、それなりの知識・技術・経験が必要になりますから。
でも、環境整備(そうじ=5S)ならば、今日入った新人でもできます。
つまり、若手や新人でも、会社に貢献できるのです。
こうしたことが、若手や新人の「やりがい」を生み、定着率の向上につながるのです。
3.成功事例
(1)「3K」職場を克服し、定着率の向上に成功!
岐阜県の(株)マツバラは、鋳造メーカーです。
鋳造というのは、鉄の原材料をキュポラと呼ばれる炉で溶かし、真っ赤な鉄のお湯にして、それを鋳型に流し込んで鉄製品を作ることを言います。
鋳型というのは、砂を固めて作られます。
だから、鋳造工場においては、製造過程で大量の粉塵が発生します。
工場中が粉塵だらけなのです。
そう、鋳造業は典型的な「3K職場」です。
(株)マツバラにおいても、当初は人材の定着が悪く、悩みの種でした。
せっかく育てた若手社員や、将来を嘱望していた中堅社員が、辞めていく。
経営者にとっては辛いことですね。
それが、環境整備(そうじ=5S)に取り組むようになってから、定着率が劇的に向上したのです。
まず、大量に降り積もっていた粉塵が、大きく減少しました。
粉塵まみれの汚い工場よりも、粉塵の少ないキレイな工場の方が、働きやすいのは当たり前ですね。
また、安全性が高まり、事故やケガも減少しました。
加えて、同社の環境整備の推進組織「おそうじパワーアップ活動」委員会の委員長や副委員長、委員メンバーは、あえて若手や職歴の浅い人を選びました。
すると、彼らが頑張ってそうじに取り組むことで、職場環境が良くなりました。
すると周りのベテラン社員たちも、「若手が頑張ってくれて職場が良くなっているから、我々もやろうよ」となるのです。
つまり、「若手や社歴の浅い人が、そうじを通じてリーダーシップを発揮する機会を与えられた」ということなのです。
こうして、「やりがいを感じられる機会が多くなったことが、定着率の向上につながったのではないか」と松原社長は仰っています。
(2)働きやすい職場環境と定着率の向上に成功!
東京の(株)小河原建設は、注文住宅部門とゼネコン部門を持つ、建築会社です。
「東京一キレイな現場」を目指して、環境整備(そうじ=5S)に取り組んでいます。
今でこそ、住宅産業塾の主催する『魅せる現場コンテスト』で最優秀賞を獲得するくらい、環境整備の先進企業になっていますが、環境整備に取り組む前は、問題も多かったようです。
現場での事故やケガ、納期遅れなどが多く、せっかく育てた社員も辞めていき、人材が定着しなかった、とのこと。
しかし、環境整備(そうじ=5S)に取り組むようになって、事故やケガ、納期遅れなどはなくなりました。
また、人材も定着するようになり、今では毎年、新卒社員を採用しています。
さらに同社の特徴として、女性を現場監督に任用しているのです。
同社では、学歴、年齢、性別に関わらず、各人に適した仕事を与えるのが方針。
業界ではまだ珍しい女性監督をどんどん育てています。
とはいえ、もし建築現場が危なく汚い状態であったならば、やはり女性は嫌がるでしょう。
長年の環境整備によって、キレイな現場が実現しているからこそ、女性でも抵抗なく現場監督が務まる、という部分は大いにあると思います。
4.まとめ
もし定着率の向上が、給与やボーナス、福利厚生など、待遇面での向上でしかなしえないとしたら、中小企業にとっては前途は絶望的になってしまいます。
しかし、上記でご紹介したように、環境整備(そうじ=5S)に取り組むことで、定着率の向上は実現することができるのです。
■「中小企業の○○は環境整備から」シリーズ、その他のコラムはこちら(↓)
◆”そうじ”で業績が上がった!社員が変わった!実践企業経営者の生の声が聴ける、実践企業見学会。開催情報はこちらをチェック!(↓) ◆各種お問い合わせはこちらよりどうぞ |