2019年11月28日
社長が一緒にやらないと、環境整備をしても会社が変わらない理由。
私は支援先の企業で”そうじ”(=環境整備)を指導する際、常々、
「社長が社員と一緒にやってくださいね」
とお願いしています。
それは、
「社長が一緒に環境整備をやると成功し、一緒にやらないと失敗する」
という経験則があるからです。
でも、実は多くの社長が、「一緒にやる」ことをしません。
「社長が一緒にやる」というのは、どのようなことなのでしょうか。
社長が一緒にやると、どんな効果があるのでしょうか?
なぜ社長が一緒にやると環境整備は成功し、一緒にやらないと失敗するのでしょうか?
こんにちは。
そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社 株式会社そうじの力
代表取締役・組織変革プロデューサーの小早祥一郎です。
目次
「社長が一緒にやる」とはどのようなことか?
「社長が社員と一緒に”そうじ”をする」とは、どういうことでしょうか。
「一緒にやる」というのには、いろいろなスタイルがあります。
①社長が社員と一緒になって、手を汚し、汗を流す
什器を移動させたり、床を掃いたり、テーブルを拭いたり、機械を磨いたり…。
いわば、社長も一兵卒になって、手足を動かす、というもの。
②社員が汗を流している現場に顔を出し、鼓舞し、叱咤激励する
「ほとんど会社にいない」「時間を合わせることが難しい」という社長がとるスタイルです。
実際にともに汗を流すことはなくても、時に褒め、時に叱る。
いわば「心を向ける」というもの。
③社員と一緒にはやらないが、社長自身は独自に掃除に取り組む
社長が毎日、トイレ掃除を黙々と続けている、というようなスタイルです。
この中で、(1)のスタイルがベストなのは、いうまでもありません。
「一緒にやる」といえば、「一緒に汗を流すこと」です。
空間と時間を共に過ごすことで、言語化されていなかったものに気が付くことも多々あります。
ただ、それぞれの社長のカラーや諸事情もあるでしょうから、(2)や(3)のスタイルでも構わないでしょう。
問題は、上記の(1)(2)(3)のいずれも当てはまらないケース。
例えば、社長が社員に対して「掃除をしなさい」と命令するものの、社長自身はまったく動かないというようなケース。
「完全に任せて、口を出さない」
というスタンスならまだしも、たまに現場を見ては、
「ここが汚れている」
「あれが乱れている」
と社員を叱りつけるような状態は、「最悪」と言っても良いでしょう。
「社長自身が一緒に取り組む」ことは、一番の大義名分
“そうじ”は、一般の業務とは質が異なる
そういう社長さんの多くが仰るのは
「社長と社員の役割は違う」
というお言葉。
もちろん、社長と社員の役割は違います。
社長が社員と同じことをやっていたら、その会社はつぶれます。
でもそれは、一般の業務(仕事)のこと。
“そうじ”は、一般の業務とは全く質が違うものです。
製造業では、モノを作るのが仕事です。
小売業ならば、モノを売るのが仕事です。
サービス業ならば、何らかのサービスを提供するのが仕事です。
それらを遂行するために、経営者は経営者の立場で汗をかき、社員は社員の立場で汗をかくのです。
でも、”そうじ”は、やったところで売上が上がるわけではありません。
やらないとしても、特別に困ることもありません。
それでも、長い目で見ると、
・安全性が高まる
・生産性が高まる
・社内の快適性が高まる
・個々人の自主性が育つ
・創意工夫する力がつく
・互いに協力する風土が生まれる
このように、結果「社風がよくなる」ことは間違いありません。
「一緒にやる」ことは、社員に「我が社が大切にしていること」を伝えるメッセージ
ビジネスパーソンであれば、仕事を「重要度」と「緊急度」のマトリクスに当てはめ、優先順位をつけてこなしていることでしょう。
このマトリクスに当てはめてみると、“そうじ”は、
「緊急ではないけれど、重要度が高い取り組み」
の最たるものに位置します。
こうした、
「緊急ではないけれど、重要な取り組み」
を全社として推進するためには、大義名分が必要になります。
社員にとっての命題は、利益を伸ばすことや、期限に間に合わせることです。
それが、評価や待遇に直結することだからです。
そんな社員にとって、
「”そうじ”に取り組もう」
という言葉だけでは、
「この忙しいのに、やってられない」
「今日、この仕事をしたほうが売上が上がる」
と、社長の考える意義を伝えることは難しいでしょう。
大義名分を掲げる方法は、理念を明確化したり、目標を決めたりと、いろいろありますが、
「社長自身が一緒に取り組む」
ことは、一番の大義名分となります。
なぜならば、それは、
「社長が言っていること(理念・目的)とやっていることを合致させる行為」
だからです。
もし傍らで、
「この取り組みは、我が社にとって最重要な取り組みなんだ」
と、社長が一緒に掃除をしているとしたら、社員はやらないわけにはいかないでしょう。
そして何より、社員の何倍も忙しいはずの社長が一緒に取り組むことは、
「環境整備は、すぐに売上が上がるものではないけれど、重要な取り組みなのだ」
と社員に投げかけるメッセージとなるはずです。
社長が一緒に”そうじ”をすると現れる3つの効果
それでは、具体的に、社長が社員と一緒に”そうじ”をすると、どんな効果があるのでしょうか?
単に「キレイになった達成感」を共に味わえるというだけではありません。
①お互いの距離が縮まる
社長が社員と一緒になって”そうじ”に取り組めば、まず社長と社員の距離が縮まります。
実は私たちは、普段、会話をしているようで、意外にしていません。
業務上、必要な会話しかしていないのです。
極めて事務的です。
でも組織には、適度な雑談も必要です。
雑談は新たな発想を生み出したり、人間関係を円滑にする役割を持ちます。
しかしながら、
「雑談は大事」
と思ってはいても、お互いに仕事の領域が被らない社長と社員では、雑談の機会をとるのも難しいこと。
“そうじ”を一緒にする時間は、何を話そうがOKな時間です。
むしろ、じっくり向かい合わずに話をするからこそ、雑談が生きてくる時間でもあります。
床を一緒に磨きながら、何気なく交わす会話の中で、互いに、
・プライベートなこと(家庭のことや趣味のこと)
・どんなことを考えているのか(価値観)
・どんな心配事があるのか
といったことが分かることがあります。
②仲間意識が生まれる
「○○をキレイにする」という共通の目標に向けて、一緒に汗を流すことで、一体感が生まれます。
仲間意識が生まれるのです。
一般的に経営者と従業員の間には高い壁がありますが、その壁が低くなる、と表現してもいいでしょう。
なぜならば、”そうじ”は「同じ行為を、フラットな立ち位置で行う取り組み」だからです。
よく「同じ釜の飯を食った仲間」といいますが、一緒に掃除をすることは、まさに「同じ釜の飯を食った仲間」という感覚を生みます。
③社長自身に沢山の「気づき」をもたらしてくれる
なによりのメリットは、社長自身にたくさんの気づきがある、ということです。
たとえば、社員と一緒に床を磨いていたとします。
すると、床面がはげていたり陥没していたりすることに気づき、
「ああ、この建物もだいぶ老朽化しているな」
ということが分かるかも知れません。
あるいは、社員と一緒に、倉庫の中身の整理・整頓をしながら、
「管理職が倉庫の中身を把握できていない」
ということに気づいたり、
「社内で在庫の管理がうまくいっていない」
ということが分かったりするかも知れません。
また、社員たちが掃除をしている中に混じると、
「Aさんはリーダーシップがあるな」
「Bさんは協調性に欠けるけれど、一つのことに集中できる力があるな」
というような、
「書面で見た人事評価だけではわからない」
ようなことに気づくかもしれません。
実はこういうことは、社長が「経営者」としての仕事をしている中では、なかなか気づきにくいことなのです。
こうした、「社員と一緒に”そうじ”をする」中での気づきを、経営に生かし、会社の変革に成功している社長が、たくさんいます。
まとめ
「経営者と従業員の役割は違う」
という社長さんに申し上げたいのは、
「だからこそ、”そうじ”だけは、一緒にやってください」
ということ。
それは、上述したとおり
「一緒にやることで、経営者だけにしか見えないことが見えてくる」
からなのです。
せっかく環境整備に取り組むのであれば、「失敗するやり方」ではなく、「成功するやり方」で取り組んでいただきたいと思います。
★あなたの会社の「5S」「環境整備」は、なぜ会社を変えてくれないのか?その理由とは(↓)