2021年12月09日

会社を継いだときにすべき2つの大切なこととは?【そうじの力で組織風土改革】

先代から会社を継いだとき、あるいは、継ぐことが決まったときに、何をすべきでしょうか?

戦略立案? 新商品開発? 新市場開拓? 人事異動?

答えは、どれも「ノー」です。

私の尊敬する先輩S氏、この方は若い頃に急死した叔父から会社を引き継ぎ、年商を8年間で5倍にした実績を基に、企業再建コンサルタントをしている方ですが、S氏によれば、会社を継いだときにすべきなのは、「現状把握」だと言います。

 今、会社の状態がどうなっているのか。

 会社は利益が出ているのか?

 内部留保はどれくらいあるのか?

 逆に累積赤字はどのくらいなのか?

 借入金はどのくらいあるのか?

 主なお客様は誰か?

 商品構成はどうなっているのか?

 自社の強みと弱みは何か?

 社員の経歴や年齢、家族構成は?

 会社の土地建物、機械設備の状況はどうか?

などなど。

まずは、これらの現状をしっかりと把握しなければ、次に打つ手も考えられないわけです。

そして、S氏によれば、会社を継いだときにすべきもうひとつのことは、「環境整備」だと言います。

環境整備とは、整理・整頓・清掃の活動をつうじて、企業組織を強くしていく取り組みのこと。

なぜ、会社を継いだときにこの環境整備をすべきなのか。

その理由を今回は解説していきます。

 

 

会社を継いだときに環境整備が必要な理由

現状がよくわかる

環境整備の具体的行動は、整理・整頓・清掃です。

このうち整理とは、不要なものを捨てること。

整頓とは、必要なものを、取り出しやすくわかりやすく配置し、明記すること。

そして清掃は、掃いたり拭いたり磨いたりして、最高の状態を保つことです。

環境整備をすると、いろいろなことに気づきます。

倉庫に、見たこともないような商品が山積みになっていて、驚くことがあります。

在庫の山

過去に売れ残った商品かもしれません。

 

工場内の通路にいろいろな物が置かれていて邪魔なので、配置を変えようと思ったとします。

ベストな配置を案出するためには、製造作業がどのように行われているのかをじっくりと観察し、理解しなければなりません。

機械設備の油汚れを拭いていると、機械のあちらこちらから油漏れがあり、老朽化を実感するかもしれません。

事務所の床を雑巾がけしていると、床面に亀裂がたくさんあり、傷みが激しいことがわかるかもしれません。

商品棚の商品を一つひとつ拭いていると、わが社の売れ筋商品と、売れ残っている商品が理解できます。

トイレ掃除をしていて、便器の汚さにびっくりし、よく考えてみると、「わが社には掃除当番というものがない」ということに気づくかもしれません。

 

こんなふうにして、整理・整頓・清掃をしていると、実にいろいろなことがわかります。

 建屋や機械設備の状態。

 商品のラインアップ、在庫の状況。

 社員の動き方や意識の状態。

これらは、決算書には数字として現れていたり、報告書を通じて文字としては脳内に入っているかもしれません。

ですが、このように実地を見て、モノに対面しないと、こうした生の現実は見えてこないのです。

S氏が言った、「現状把握」は、まさに環境整備をつうじてできるのです。

 

人心を掌握できる

環境整備は、整理・整頓・清掃だと言いました。

このうち、整理と整頓は、一人ではできません。

不要だと思われるものがあっても、社員の誰かが使っている可能性があります。

だから、整理をする際には、必ず、社員たちと話をすることになります。

また、物の配置をより良くしようと思っても、実際にそれを使う現場の声を聴き、彼らと一緒にやらなければ、意味あるものにはなりません。

整頓する過程で、社員との協力関係を築くことが必須になります。

こういうやり取りの中で、社員一人ひとりと接することで、お互いの理解を深めることができます。

一方の清掃は、一人でもできます。

機械の油汚れを拭く。

床の雑巾がけをする。

廃棄物置場をホウキで掃く。

トイレ掃除をする。

トイレ掃除

休憩室のテーブルを拭く。

いずれも、「汚れ仕事」です。

この汚れ仕事を、経営者(後継者)自らが黙々と取り組むのです。

そういった姿を、社員は見ています。

別に、見せるためにしているわけではありませんが、社員は見ているものです。

 

汚れ仕事を自ら取り組む人間は、他人から信頼されます。

会社を継いだ(あるいは、継ぐことが決まった)ばかりの頃はまだ、社員たちも、新社長(後継者)の人物について、品定めをしています。

 先代と比べて、この人はどうなのか?

 デキる人なのか、デキない人なのか?

 やさしい人なのか?怖い人なのか?

 信頼できる人なのか?信頼できない人なのか?

こうしたことを、社員は見ています。

そして、汚れ仕事を自ら黙々と取り組んでいる人に対しては、少なくとも、悪い印象は抱かないでしょう。

最低限の信頼関係は結べる、と感じてもらえるのではないでしょうか。

今後、具体的な経営施策を打ち出していくにしても、こうした社員との信頼関係あってこそ、です。

それが、環境整備をつうじてできるのです。

 

負の遺産を一掃できる

先ほど、「倉庫に、見たこともないような商品が山積みになっていて」と書きましたが、継いだ当初は、こういうことがよくあるものです。

これこそ、「負の遺産」です。

整理とは、不要なものを捨てること。

こうした、先代が捨てられなかったものを、処分しましょう。

もちろん商品であれば、たたき売りであれ何であれ、何らかの換金手段を考えるべきでしょう。

しかし、どんなに値を下げても、需要のないものは残念ながら売れません。

思い切って処分しましょう。

 

会社内には、よく見てみると、不要なものがたくさんあります。

これらを処分することで、スペースが拡がり、より安全になり、効率が良くなり、快適になります。

加えて、整頓や清掃をすることで、各所が整ってピカピカになるのですから、「自分の代になって、より一層この会社を良くしよう」という意欲も増していくことでしょう。

まさに環境整備によって、負の遺産を一掃し、会社を「刷新」できるのです。

 

ただし、まだ自分が後継者であって、トップではない場合には、在庫の処分などには手をつけないほうが無難です。

先代には先代の考え方がありますので、下手に動くと逆鱗に触れて、事業継承そのものに影響することもあります。

負の遺産の一掃は、自分が代表になってから取り掛かりましょう。

 

環境整備を進めるうえで気をつけるべきこと

無理に周りを巻き込もうとしない

上述したことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、無理に周りを巻き込もうとするのも禁物です。

環境整備は良いことだと、皆が思っているわけではありません。

また、大枠では環境整備に賛同しながらも、実際に自分が関わる事柄については、変化を嫌う、ということもあります。

なので、いきなり「この作業場の配置では効率が悪いので、変えよう」と言っても、反発が強く、現場の納得が得られない、ということは、よくあります。

社長に就任したからといって、すぐに皆が自分の指示に従うわけではありません。

少しずつ、信頼関係を築いていくしかないのです。

だから、まずは、自分ひとりで完結する範囲内で、環境整備を進めましょう。

もちろん、周りの協力が得られるのであれば、それに越したことはありませんが、抵抗や反発があるものに関しては、無理に進めないほうが無難です。

 

自分の取り組みを誇示しない

自分ひとりで完結する範囲内で、と書きましたが、これを誇示するようなことも禁物です。

たとえば、トイレ掃除に黙々と取り組むとします。

ついつい、自分のやっていることを誇示したくなるものですが、そうした途端に、嫌われます。

自分が掃除をする姿を見て社員がやることを期待していると、社員はそれと気づいて、離れていってしまいます。

先ほど、社長の姿勢を社員は見ている、と書きましたが、それはわざと「見せる」のではなく、自然と「見られている」ということです。

あくまでも環境整備は自分の仕事、ととらえて、取り組むのがよいでしょう。

 

完璧を求めない

上記2項目にも通ずることですが、環境整備を進めるにあたっては、完璧を求めないことも大事です。

環境整備ををやっていると、ついつい完璧を目指したくなるものです。

ですが、それは、社長に就任して、しっかりとした基盤ができてからにしましょう。

環境整備に終わりはありません。

良くなったと思っても、次のステージがあり、それをクリアしても、また次のステージが待っています。

自分が社長に就任し、将来引退する日まで、環境整備は続くのです。

会社を継いだばかりの段階で、完璧を求めるのは、幼稚園児がいきなり大学入試に臨むようなものです。

現段階で大事なのは、どれだけ良くなったかの「結果」ではなく、取り組む「プロセス」なのです。

 

まとめ

S氏は、「会社を継いだときにしていいのは、現状把握と環境整備だけ」と言います。

それだけ、環境整備には経営者の自力を強める作用がある、ということです。

 

先代のやり方に不満があったり、「親父は古い、もっとこうしたら良いのに」と、取り組みたいことも山ほどあることでしょう。

しかし、やるべき「環境整備」をすっ飛ばして、いきなり新たな戦略を打ち出したとしたら、どこかで結局壁にぶつかってしまうのです。

 

あなたが取り組みたいことに加え、ぜひ環境整備も一つの柱に加えてください。

やりたいこと(攻め)と、やるべきこと(守り)の両輪をしっかり回すことで、足腰強く踏ん張れる組織を作っていってほしいと願っています。

 

 

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