2022年01月06日

なぜ“そうじ”は組織変革や活性化の契機になるのか?【前編】

なぜ“そうじ”は、組織変革や活性化の契機になるのでしょうか?

なんとなく、

「汚いよりはキレイな方がいい」

「整っていたほうが、仕事がやりやすい」

「そうじをしている企業は、業績も良さそうだ」

という印象はあっても、

「なぜ”そうじ”にそのような作用があるのか」

を、きちんと説明できる人は少ないでしょう。

 

今回は、「なぜ”そうじ”をすると、組織が変革し、活性化するのか」を、丁寧にご説明します。

なお、長くなるので、前編と後編に分けてご説明します。

今回は、前編です。

 

 

心と体はつながっている

心の中の状態は体の状態となって表に現れる

なぜ“そうじ”をすることが、組織変革や組織活性化につながるのでしょうか?

いろいろな説明をすることができますが、ひとつは「心と体はつながっている」ということです。

おっと、精神論ではありませんよ。

 

たとえば、心がウキウキ楽しいと自然と笑顔になりますね。

逆に、心配事や不安、恐怖、怒りなどが心の中にあると、顔がこわばったり暗い表情になったりします。

場合によっては背中が曲がったり、熱が出たり頭痛がしたり、ということもあります。

このように、心の中のありようは、身体の状態になって反映されます。

笑顔

野球などのスポーツで、よく指導者が「声を出せ!」と言いますね。

これは、声を出すことで体の中が活性化し、前向きな意識が生まれるからです。

「もうダメだ・・・」と思っていたものが、「まだ頑張れる!」という気持ちに切り替わり、実際に体も動くようになるのです。

ガンや高血圧の患者さんたちに、落語や漫才を見せると、それだけで血圧が下がったり、免疫力が上がったりするという実験結果を、医療研究者が発表しています。

笑い、という体の表面の動きが、身体の内面に影響する、ということです。

 

また、腰骨を立てて背筋を伸ばすことを「立腰(りつよう)」と言いますが、立腰することで、集中力が高まり、仕事の効率が良くなったり、学校の成績が良くなったりします。

一方、背中が曲がっていると、気力が萎え、ケアレスミスが多くなったりします。

 

つまり、心の中の状態は体の状態となって表に現れると同時に、身体の動きを変えることで、心の中の意識もおのずと変化していくのです。

 

意識を変えるために行動を変える

会社を変えるためには、組織を構成する人たちの意識を変える必要があります。

よく「意識を変えろ!」と言いますが、意識って、実際のところ、どうやったら変わるのでしょうか?

眉間にしわを寄せて「ウンウン」唸っていても、意識は変わりません(笑)。

頭の中だけで意識を変えるのは、実はとても難しいのです。

だから、身体の動き、つまり行動を変えればいいのです。

 

デスクの上に書類が山積みになり、道具類があちこちに散乱している状況では、心が落ち着かず、仕事に集中できません。

だから、デスクの上を整理・整頓し、部屋の中を片づけると、気持ちが整い、仕事に集中することができます。

机の上をキレイに拭き上げ、部屋の隅や奥のホコリも見逃さずに掃き清めるという「行動」を通じて、納期に間に合わせ、ミスなく仕事をやり遂げるという“きちんとした”「意識」が芽生えてくるのです。

雑巾がけ

事務所や工場の床にゴミが落ちていたら、気づいた人がサッと拾う。

こうした行動を繰り返すことで、

「問題を見て見ぬふりをしない」

「人のせいにせずに、自分でできることを行う」

という健全な意識が育つのです。

 

何も行動せずに、「人の役に立つことをしましょう」と100回念仏のように唱えても、そんなふうにはなりません(笑)。

 

人は環境に左右される

人は、周囲の環境に適応して生きています。

会社の中に物が散乱し、どこに何があるか分からない状態。

あちこちにホコリが溜まり、使う道具なのかゴミなのかが分からないような状態。

こんな状態の中で、社員に“規律正しい行動”を求めても無理な話です。

 

こうした環境は、無言のうちに、

「遅刻しても構わないよ」

「納期に間に合わなくても仕方がないよ」

「安全のことなんか気を使うな」

「自分で好き勝手にやっていいよ」

というメッセージを発信しているようなものです。

 

逆に、

  • 必要最小限のものが、使いやすい場所に置かれ、どこに何があるのか一目瞭然
  • 隅を見ても裏を見ても、塵一つホコリ一つない

という状態は、

「約束を守ろう」

「人が見ていなくても手を抜かないようにしよう」

「物を大事に使おう」

「お互いに気を遣おう」

というメッセージを発していると言えます。

整理・整頓されたデスク

そしてこのような環境を、他の誰かにしてもらうのではなく、自分たちで手を入れてつくっていくことが、意識の改革につながっていくのです。

 

たとえば、汚くて臭いトイレを放置しておくと、心がすさみます。

そういうトイレでは、利用者は余計に小便を撒き散らかしたりして、どんどん汚れがひどくなります。

そのような環境に慣れた人は、会社の外でも、たとえば公園のトイレや取引先のトレイも汚すでしょう。

でも、トイレの裏も表もピカピカに磨いて清潔にすることが、心を変えます。

トイレという世の中で一番汚れる場所。

しかもその場所は、誰もが使う場所。

そのトイレを、自ら磨くことは、

「目の前の問題から目をそらさない」

「人のせいにせずに、自分でできることを行う」

「目の前のものごとに当事者意識を持つ」

「基本的なことをおろそかにしない」

という意識を育みます。

 

あるいは、車でもそうです。

汚い車は事故が多いです。

たぶん、車が汚いと、「どうせこんなポンコツ!」と思って、運転が乱暴になるのではないでしょうか(笑)。

車に載っている余計な荷物を降ろし、キレイに洗車してあげれば、運転もおだやかになり、事故が減ります。

車を駐車するときに、駐車場のラインを無視して、斜めに停める人がいます。

ついでにハンドルが左右どちらかに切られたままで、前輪が曲がっていたりもします。

こういう人も、事故が多いのですね。

普段から、ラインに対して真っ直ぐに停め、タイヤも真っ直ぐにすることを習慣づけておけば、

「規律を守る」

「丁寧に行動する」

ことが身についてきます。

 

実際、私のクライアントのバス会社では、運転士さんたちがバスの車内外を徹底してそうじするようになって、事故が激減しました。

 

時を守り、場を清め、礼を正す

再建の三大原理

昭和の教育哲学者である森信三先生のおっしゃった有名な言葉に、『再建の三大原理』というのがあります。

荒れた学校や企業を建て直すには、まず次の三つのことをしなさい、というのです。

・時を守り

・場を清め

・礼を正す

「時を守り」というのは、文字どおり、時間を守るということです。

もう少し広げると、約束を守る、ということになるでしょう。

「場を清め」はそうじです。整理・整頓・清掃をして、場を整え、キレイな状態を保つ、ということです。

「礼を正す」は、挨拶、返事、身だしなみ、言葉遣い、などでしょう。

この三つ、まことに基本的で、当たり前のことです。

わたしたちが子どもの頃、親や学校の先生からしつけられたはずのことです。

こんな当たり前のことが、なぜ『再建の三大原理』なのでしょうか?

それは、こうした基本的なことがしっかりできている企業が、実は世の中には少ない、ということ。

そして、こうした小さなことをおろそかにして、大きなことはできないからです。

 

基本をおろそかにして大きなことはできない

たとえばスポーツにしても、基本をおろそかにした選手が大成することはありません。

学校の勉強でも、基礎ができていなくて応用問題が解けるわけがありません。

企業においても、こうした「時を守り、場を清め、礼を正す」という基本ができていなくては、いくら良い商品や斬新な販売方法があったとしても、長期間にわたって安定的な業績は残せないでしょう。

実際、私も、いろいろな企業を訪問・視察する機会がありますが、やはりこの三つの基本ができている会社は、安定的に業績が良いようです。

逆もまた、しかりです。

 

これは聞いた話ですが、銀行員は、取引先企業の状態を把握するために、その企業を訪問すると、事務所内の書類が整理・整頓されているかをそれとなく確認したり、トイレが汚れていないかどうかを、さりげなくチェックしたりするのだそうです。

また、私の知り合いに、数多くの会社の再建を手がけてきたターンアラウンド・スペシャリストがいますが、その人いわく、「潰れる会社は、必ず汚い」とのこと。

会社の業績が傾いてきたから人心が荒れ、そうじをしたりすることに気が回らなくなって、結果として会社が汚くなるのか。

あるいは、そうじをすることをしないという風土が、会社の業績を悪くするのか。

そのへんは、「ニワトリが先か、タマゴが先か」よくわかりません。

でも、「潰れる会社は、必ず汚い」とは、重い言葉です。

 

ということで、”そうじ”をすると、なぜ組織が変革し、活性化するのかについて、もっとも基本となる考え方をご説明しました。

後編では、企業における”そうじ”にどのような作用があるのかについて、ご説明します。

★後編はこちら(↓)

 

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