2017年06月28日
【読書】汝、ふたつの故国に殉ず
台湾で英雄となった、ある日本人の物語。
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「汝、ふたつの故国に殉ず」
門田 隆将 著
角川書店 (2016/12)
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戦後、台湾で起こった「ニニ八事件」について知ったのは、二度目の台湾旅行の前でした。
それまで近代史といったら中学高校の歴史の授業で習った単語程度のことしか知らず、「戦争=殺す・奪う=悪」といった、たいへんザックリとした感覚しか持っていませんでした。
台湾への興味が、近代史への興味のきっかけになりました。
“日本人として生きる”とは
本書の主人公坂井徳章(湯徳章)さんは、戦後の台湾で「日本人として」信念に生き、亡くなった英雄です。
戦時下の日本で猛勉強をし、戦後本省人の人権を確保しようと奮闘し、「二二八事件」の犠牲になりました。
中国国民党による台湾の弾圧事件「二二八事件」は、多くの知識人が無差別に拷問され、虐殺された凄惨な事件です。
戦後台湾は、国民党の統治により汚職や賄賂が横行。国内の腐敗が進む状況に反発したのは、血気盛んな学生たちが中心でした。
彼らが暴動を起こせば、中国本土から国民党軍がやってきて、さらに酷い虐殺が起こる…。徳章氏は、台南の地で学生たちを説得し、彼らの怒りの矛先を「秩序を守る」ことに向かわせることにより、彼らの命・人権を守ったのです。
地道な努力で人々からの熱い信頼を受けていた氏だからこそ、届けることができた説得でした。
国民党軍に逮捕され拷問を受ける中でも、決して学生の名前を出さず、死の間際でも「自分一人の責任である」と言い放ち、銃弾に倒れた氏。
「”日本人”とは何だろう」と考えた時、私はこのような生き方をできた人のことを指すのではないかと感じます。
国籍や出自ではなく、どんな時でも自分の信念に忠実に行動したか。言葉と考えと行動が合致していたか。
「命をかけなければならないようなできごとが起きた時、肚を決められるか」と問われれば、私は全く自信がありません。
今できることは、小さな小さな「言行一致」。「時を守り、場を清め、礼を正す」行動の積み重ねだけ。
昨日より今日、今日より明日。”日本人”になるために、小さな積み重ねを大切にしていきたいです。
(↓)次の台湾訪問時には絶対に行きたい、「台北二二八紀念館」
写真:台北ナビ(http://www.taipeinavi.com/miru/34/)