【失敗事例その1】 社長自身が取り組まないケース

地方で製造・販売を行う社員15人ほどのZ社。

40代の社長は、20代で会社を継いだ二代目です。

 

社長から、「そうじを通じて社員の力を底上げしたい」とのオファーを受けて、取り組みを開始しました。

各部門からリーダーを選出し、そのリーダーたちを中心に活動を進めていきます。

私は、毎月1回同社を訪問し、社長を交えたリーダーミーティングと、全員研修の二本立てでお手伝いをしていました。

私がリーダーたちにお願いしたのは、大きく二つ。

毎日、時間を決めて、全員でそうじを行うこと。

そして、月に1回ないし数回、全員で集まって、大掛かりなそうじを行うこと。

そうじを行う時間帯やスケジュールは、部門や事業所ごとに事情が違いますので、それぞれにとって最適な設定を行うよう、各リーダーにお任せしました。

そして、当面の間、行う主要なアクションは、整理=つまり不要なものを捨てることです。

Z社では、事務所内は書類の山、そして倉庫にはたくさんの資材や在庫が積み上げられていました。

まずはそれらを整理し、動いた実績がないものや、今後使う宛のないものを、どんどん捨てていきました。

毎回の全員研修においては、実習として、それらの整理を行います。

社員さんたちの反応は、なかなか良いものでした。

「ずっとこれらの在庫が気になっていた」とか「この部屋を片づけたいと思っていた」などなど。

各リーダーも積極的に動いてくれ、それぞれの部署で、少しずつそうじの活動が定着しつつありました。

おかげさまで、パンパンに物が溢れていた倉庫にも余裕ができ、積み上げられた在庫も減っていきました。

 

ただ、気がかりなこともありました。

まず、モノを捨てようとすると、社長がそれを止めることです。

明らかに何年も使ってないものなので、社員が捨てようとするのですが、それを見た社長は、「これは高かったんだ」とか「何かに使えるかもしれない」と言って、捨てさせないのです。

でも、社員からすれば、不満が募ります。せっかく張り切ってそうじをしようとしているのに、そこに冷や水を浴びせられるわけです。

また、「どうせ取っておいても使わない」ということは、社員の目から見ると、自明の理なのです。

 

もう一つ気になったのが、社長室です。

社長室は、社員が執務する事務所とは別棟にあります。

その社長室が、書類の山で、足の踏み場もないほどなのです。

私は社長に対して、何度も整理をするように促しましたが、返ってくる答えはいつも、「これでもやってるんです」。

社長ご自身が、整理整頓が苦手なので、なかなか片づきません。

そこで、社員さんと一緒に整理をすることを提案しました。

他人の目が入ると、モノを捨てられない人でも、思い切って捨てることができます。

ところが、「社員に見られたら困る書類があるので、社員は社長室には入れられない」とのお答え。

これでは、進みようがありません。

 

そして極めつけは、社長が「社員がそうじをするようにならない。小早さんがもっと指導してくれないと困る」と不満を漏らしたことです。

私の目から見ると、社員さんたちは、それなりにそうじに取り組んでいるように見えます。

何が不満なのか、もう少し突っ込んで聞いてみると、毎朝のそうじの時間に、社員たちがそうじをせずにさぼっている、というのです。

私は、社長に「社長はその時、彼らに注意したり声掛けしたりしたのですか?」と聞いてみました。

すると社長は、「いえ、それはしていません。」との答え。

なぜですか?と問うと、「それは小早さんの仕事であって、私の仕事ではない」とおっしゃるのです。

私は常々、社長が社員さんたちと一緒になって活動してください、とお願いしてきました。

そして、そうじを成功させるのも、失敗させるのも、社長の姿勢次第だということも。

もちろん、Z社長のように、そうじや片づけが苦手な人もいます。

だから、完璧にキレイにすることは求めていません。

苦手でもいいのです。

社員と一緒になって汗を流すことが大切なのです。

でも残念ながら、Z社長には、最後まで、そのことをご理解いただけなかったようです。

 

結局Z社は、その後、訪問のキャンセルなどが続き、中途で解約となりました。