【失敗事例その4】 私の配慮が足りなかったケース

都市部の建築業W社。

40代の社長は、3代目で、社員10名ほどの会社です。

 

当初、事務所はまさに書類の山で、中央に配された長テーブルには、図面などがうずたかく積まれていました。

建築資材などを保管してある倉庫が数か所あったのですが、どの倉庫も、足の踏み場もないほどに、モノであふれかえっていました。

そうじの原則通り、まずは整理、つまり不要なものを捨てることから始めました。

W社の社員さんたちは、個性の強い人が多く、私が「要らないものを捨てましょう」と呼びかけると、「この書類は○○という理由であえて取ってあるんだ」と反論するような人もいて、毎回の支援では、丁々発止のやり取りが交わされました。

でも、そんなやり取りも、良い意味での緊張感を生み、活動はどんどん進んでいきました。

当初、書類の山だった事務所は、各人のデスクは机上ゼロ、そして中央の長テーブルは、まさに滑走路のようにクリアになりました。

数か所あった倉庫も、何年も使わずに眠っていた資材や道具を処分して、使い勝手の良い倉庫に生まれ変わりました。

 

ただ一つの難点は、業種がら、なかなか予定通りに集まれない、ということでした。

私が約束の日時に訪問しても、Aさんは顧客との商談で欠席、Bさんは現場で打合せのため遅刻、などというふうに、予定通りに始まらない、ということが多々ありました。

 

そんなある日、私がW社を訪問すると、ちょうど同業者が来訪していて、W社長が社内を案内していると言います。

他の社員さんたちも、そちらの対応に追われていて、約束の時間に研修セッションが始まりそうにありません。

ようやくW社長が同業者を引き連れて事務所に戻ってきたのは、約束の時間から30分ほど過ぎたときでした。

そして、その同業者にも、研修セッションを見学させてあげてほしい、というのです。

私はそこで、本題に入る前に、時間を守ることの大切さを説きました。

上述したような状況だったので、それまでにも何度か説いていたことです。

私はここで、あえて、同業者の面前で、きつくW社長を叱責しました。

そうすることで、この問題の重要性を理解してほしいと思ったからです。

また、同席していた同業者にとっても、通り一遍の整理整頓のレクチャーよりも、このほうが、よほど役立つのではないか、と思ったのです。

しかし、それは私の誤りでした。

W社にしてみれば、お客様の面前で、W社長の面子を潰されたのです。

W社のみなさんの怒りは、激しいものでした。

もっともなことです。

どちらが正しいか、ということは問題ではありません。

私の配慮が足りなかった、ということです。

私にしてみれば、あえてそこで波風立てることで、時間厳守の問題に真剣に向き合ってもらおう、という意図があったのですが、W社のみなさんの気持ちを考えれば、それはかえって逆効果だったのです。

私にもう少し、「人の気持ちの機微」に対する理解があれば、その場はやり過ごして、同業者が去った後に、しっかりと注意する場を設ける、という配慮ができたことでしょう。

W社に対しては、後日、私から謝罪をして、受け入れてもらえました。

 

その後もW社に対する支援はしばらく続き、同社の事務所も倉庫も、すばらしく整った状態になり、契約満了を迎えることができました。

ただ、私の心には、今でもあの時の失敗が棘のように刺さっています。