【第144号】継続は力なり! 環境整備普及の源に|(有)ファイン

支援事例紹介継続は力なり! 環境整備普及の源に~有限会社ファイン「そうじの力」~福井県鯖江市の()ファイン。眼鏡のフレームなどにデザイン印刷をする特殊印刷業の会社です。私(小早)がお手伝いしての環境整備の取り組みがスタートしたのが、今から六年前。当初、社内にはモノが溢れていました。一人あたり二台のスチールデスクが置かれた工場内は手狭で、通路もまともに確保できない状態。印刷業らしく、床と言い、壁と言い、機械と言い、飛び散ったインクまみれで、その状態を特に不自然だとも思わずに、皆さんが働いている状態でした。取り組みを開始して、まず、不要な物、多すぎる物を処分しました。これで工場内が広くなりました。定位置化を徹底して、きちんと通路も確保できました。床や機械にこびりついたインクは、スクレーパーでこそげ落とし、床面は自分たちでペンキを塗りました。今では、印刷工場とは思えないくらい、清潔な空間が広がっています。同社の特長は、「明るさ」です。「せっかくやるなら楽しく」を合言葉に、皆でワイワイ言いながら取り組んでいます。元々明るい社風ではありましたが、皆で一緒にそうじをすることで、会話が増え、個々の積極性や相互理解が深まったと言います。物理的環境に留まらず、仕事の仕方や商品ラインナップにもメスを入れた結果、無駄がなくなり、残業時間の削減や年間休日の増加、そして利益の増加につなげることができました。同社では毎年夏に、社員の家族を集めてパーティーを開いていますが、今回は、子どもたちと一緒に周辺地域の清掃(ゴミ拾い)を行った後に、流しそうめんをして、子どもたちも大喜びだったそうです。最近では、その明るさと印刷業という特徴を生かして、工場内をさらに明るく暖かい雰囲気にするために、装飾にも力を入れています。そうじ道具置場のサインを大きく目立つものにしたり、電気スイッチのカバーをデコレーションしたり、玄関口にスタッフの笑顔の写真を展示したりしています。工場内に入った瞬間に、暖かくなる「気」のようなものを感じます。また同社では毎年、外部の方々を招いての環境整備発表会を開催しています。その発表会に参加したA社の社長さんが、「ぜひウチの社員にもファインを見せたい」との希望があり、先日、A社の社員さんたちを招いての発表会&見学会を開催したそうです。A社の社員さんたちからの積極的な質疑応答もあり、大変に有意義な交流ができたとのこと。「社員さん全員が楽しそうに説明しているところが印象的でした。5S活動をやらされているのではなく、自ら積極的に行っているということが、短い時間でしたがひしひしと伝わってきました」「社内もいたる所まで配慮と遊び心が行き届いた環境整備が行われていて、とても参考になった」というような感想文が寄せられています。同社の将来的な目標は、環境整備の取り組みを、地域や業界に拡げていく「源」になること。ファインを見た人が感動して、「ウチもぜひそうじに取り組もう」と言って、仲間が拡がって行くことです。その目標が、徐々に実現しつつあります。同社の「そうじの力」がここまでこれた要因は、一にも二にも、「継続」にあると思います。毎朝、始業時の三〇分間をそうじに充てています。加えて、週に一回二時間、さらに月に一回半日を、機械内部の清掃やペンキ塗り、版の整理などに充てて活動しています。これを、もう六年間も続けているのです。時には停滞した時期もあったでしょう。最初のグンッと変わった時期からすると、最近の変化は微々たるものかも知れません。それでも、継続していると、振り返ったときには、ずいぶんと進んでいるものなのです。(小早)良い社風具現化プロデューサー大槻飛鳥のそうじを“楽しく”進めるコツ~「場づくり」を大切にしよう!~「そうじ」にみんなで取り組む上で大切なのは、“楽しく活動を進める”こと。しかしながら、注意をしないと、モノを捨てたり・移動したりする中で、「なんでこんなものをとっておいたんだ!」「どうしてこれがここにあるの?」と、”お互いに責め合う”状態になってしまうことも…。「社内の物理的な環境は確かにキレイになったけれど、人間関係がギスギスしてしまった」のでは、本末転倒です。今回は、「そうじ」を”楽しい”活動にしていくための様々なアイディアの中から、3つご紹介します。キーワードは「場づくり」です。①「グランドルール」を作るグランドルールは「活動を進めていく中でこれだけは守ろう」という“最低限“のルール。毎回ホワイトボードに書き出し、みんなで確認します。ある会社では以下の3つをグランドルールとして決めました。・チームメンバーを責め合わない・時間を守る(特に終了時間)・「できた」ことにフォーカスするグランドルールがあることで、ミーティングや実習が、メンバーが安心して自由な発想や発言・行動できる「安全な場」になります。②アイスブレイクを行う「そうじ」に中心になって取り組むメンバーを、部署を横断して選定する場合、「普段は一緒に仕事をしていないけれど、ミーティングの時にだけ顔を合わせる」状況になる場合があります。そこで発言しやすい場をつくるために、冒頭でアイスブレイクを行います。例えば「Good&New」というアイスブレイクは、「最近あった良かったこと・初めて知ったこと」などを、「1分」など時間を決めて1人ずつスピーチします。お互いの近況を知ることで、その後の本題にスムーズに入ることができます。③ツールを活用する現場巡回をみんなで行う時に「フィードバックシート」を活用している会社があります。これは、巡回して気づいた「良かったこと」「こうするともっと良くなる提案」をそれぞれが書き出すシートです。ポイントは「プラスの視点を書き出せる様式」であること。良かった点を認めてもらうことが、次への意欲に繋がります。「そうじ」の活動が楽しい“場“になると、アイディアが生まれ、雰囲気も良くなり、楽しい活動として継続していきます。ぜひ様々な「場づくり」の方法を、実践いただければと思います。(大槻)「そうじの力」コラム常識を疑え!~そうじも経営も、常識に疑問を持つことが大切~以前にこのコラムにも書きましたが、私はお風呂に入るとき、石鹸もシャンプーも使いません。体はお湯を含ませた柔らかいタオルで拭きあげ、頭はシャワーを当てながら指の腹でこすります。これだけで、十分に汚れは落ちます。そもそも、石鹸やシャンプーなどの洗剤の主成分は「界面活性剤」であり、その主な作用は油分の分解にあります。体の表面には、確かに皮脂汚れはついているものの、界面活性剤を使わなければならないような油分はついていません。お湯で十分です。だから私は、歯磨きをする際にも、歯磨き粉はつけません。歯ブラシでブラッシングするだけで、十分にその役目を果たすことができます。同様に、トイレそうじをする際にも、ほとんど洗剤は用いません。前述のとおり、尿にしても便にしても、界面活性剤を使わなければ分解できないようなものは、ほとんど含まれていません。お湯や水、そしてスポンジやタワシ、ブラシといったものを使えば、大概の汚れは落ちるのです。かといって、どんな場合でも絶対に洗剤を使わない「洗剤撲滅原理主義」ではありません()。体を洗う時でも、そうじをする時でも、油分が多いときには、躊躇なく洗剤を使います。もちろん、食器洗いの際には食器用洗剤を使いますし、洗濯の際にも洗濯用石鹸を使います。何が言いたいかというと、「常識を疑え」ということです。体を洗うときに石鹸を使うのは、「常識」です。歯磨きのときに歯磨き粉を使うのは「常識」です。トイレそうじのときに洗剤を使うのも「常識」です。しかし、前述したように、常識が必ずしも「唯一の正解」ではありません。私が思うに、常識とは「今までのやり方」だということです。前例踏襲というふうに言い換えても良いでしょう。私たち経営者は、この「常識」を、折に触れて疑っていくべきなのではないでしょうか。私が子供の頃は、『巨人の星』の影響か、足腰を鍛えるにはうさぎ跳びをするのが常識でした( )。今は、うさぎ跳びなどしていたら、笑われます。ビジネスマンはスーツとネクタイが常識でしたが、カジュアル化やクールビズ、ウォームビズの流れで、スーツ業界は苦境に陥っています。人が死んだらお墓を建てるのが常識でしたが、今や墓石の新規建立は激減し、コインロッカー式の納骨堂が流行っています。写真といえばフィルム、というのが常識だった時代の寵児であったコダックは、デジタル化により、フィルムそのものの需要が激減し、会社が消滅しました。今までのやり方で売れているからといって、安心はできません。常に「新たなやり方はないか?」「改善、改革のヒントはないか?」とアンテナを立てることが必要だと思うのです。(小早)良い社風具現化プロデューサー飯塚輝明の支援先ミニレポート短い時間の積み重ねで変わる! 重田商事()群馬県嬬恋村の重田商事()(建物解体・産業廃棄物中間処理業)では、四月からそうじの力の活動が始まりました。どこの会社でも、まずは整理(捨てる)から始まります。ということで、重田商事()でも捨てる練習をやっています。「捨てる練習ってなに?」ですよね。練習材料は、実際に使っている棚や机の引き出しです。時間は五分。参加者は、同じ部署のできたら全員。五分の時間は短いですから、広範囲になんてできません。だから、引き出し一個ずつ、棚一段ずつ、みたいに狭い範囲に絞ります。あとは、みんなで中のモノを広げて「これは使っている、これは使っていない」と仕分けていくだけです。五分たったらそこで終了。途中でもそこでさっさと終わりにします。重田商事()の事務の皆さんは、四人でカウンターの下の備品類の整理をすることにしました。きっちり五分で終了。そうしたら「なんてことでしょう!モノが減って、白いボックスケースまで要らなくなりました。」かかった時間はたったの五分!まさに劇的ビフォーアフターですね。重田商事()の事務所では週に一回、皆さんで五分間、整理(捨てる)作業をすることになりました。一年では約五〇回です。たった五分の一回でこの変化ですから、五〇回後が楽しみです。続いて、道具置き場。不必要な道具でも、会社の備品なので、皆さんの一存で捨てるのは難しいです。その道具類が練習の題材です。皆で協力して不必要な道具は捨てることにしました。 時間は一〇分×三回の計三〇分。参加者は社員二○名です。三〇分で写真のような成果!重田商事()の作業場では月に一回、皆さんで三〇分間、整理(捨てる)作業をすることになりました。一年では十二回です。三〇分の一回でこの変化ですから、十二回もやったらどんなことになるのか?事務所同様、今から楽しみです。こんなことを重ねながらそうじの力の活動は、さらに進んでいきます。(飯塚)今月の読書から『「公益」資本主義』原丈人著~英米型資本主義の終焉~本書の前半では、大手のグローバル企業の経営における恐ろしい実態が明かされています。経営不振に陥ったアメリカン航空は、従業員の給与を340億円削減しました。これによって同社は経営危機を乗り越えられたのですが、経営陣はその功績によって200億円のボーナスを受け取ったそうです。マイクロソフトは、当期利益に対する株式配当と自社株買いの総額の比率が119%だそうです。つまり、税引き後利益以上に株主に配っているということです。その原資は、内部留保を取り崩すか、外部から借入をするしかありません。NTTドコモも、20163月期、当期利益5484億円に対して、株主配当2675億円、自社株買い3075億円。つまり、配当と自社株買いを通じて、純利益の105%を株主に還元しているのです。こんなことをしていたら、いずれそれらの企業体力は落ちていき、やがて破滅に至るはずです。なぜこんなとんでもない経営がまかり通っているのか。すべての判断基準が「株主の利益になるかどうか」だからだとのこと。しかもこの場合の株主は、どちらかといえば短期的な株主です。これこそが「株主資本主義」だと言います。業績不振で赤字が出て、社員の給料を削減しなければならない事態になれば、責任はまず経営陣にあるはずです。自ら責任をとって、経営陣の給料を大幅にカットすべきで、利益がないのなら、株は無配当となるのが当然です。ところが株主資本主義の下ではそうではありません。経営の目的が、業績の立て直しではなく、株価の吊り上げになってしまう。その結果生じるのは、ファストフードなら食品産地の偽装、航空会社なら整備の手抜き、自動車会社ならデータの偽装、電力会社なら停電。いずれも従業員のモラルの欠如から生じるのですが、ROEを上げ、ストックオプションで儲ける株価優先の経営方針こそ根本原因なのです。しかしこの「株主資本主義」も、終焉が近づいてきているとして、著者は「公益資本主義」を提唱します。公益資本主義はとは「企業の事業を通じて、その企業に関係する経営者、従業員、仕入れ先、顧客、株主、地域社会、環境、そして地球全体に貢献する」ような企業や資本主義のあり方です。なんのことはない、日本に昔からある「売り手よし、買い手よし、世間よし」のいわゆる「三方よし」の経営です。つまり、著者は、日本的経営を見直していこうと提唱しているのです。本書の後半では、「中長期的投資」「社中分配」「企業家精神による改良改善」といった、具体的処方箋が提示されていて、我々経営者の参考になります。そうじの力」は、公益資本主義に貢献できる「力」だと確信しました。(小早)◆実践企業見学会720日(木)13:0016:00(株)小池勝次郎商店埼玉県深谷市菅沼91-2実践企業の見学と小早の講演です。◆読者プレゼント!「そうじの力」オリジナルTシャツ。抽選で5名様に差し上げます。◆「社風改革」セミナー日程712()18:0019:30 静岡県沼津商工会議所 講師:小早822()18:3020:00 群馬県高崎総合福祉センター 講師:飯塚株式会社そうじの力社風改革の支援弊社は環境整備を通じた「良い社風づくり」を支援します。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)お気軽にお問い合せください。そうじの力だより第143 201761日発行発行者:小早 祥一郎(株式会社そうじの力 代表取締役)370-0078 群馬県高崎市上小鳥町373-6 TEL:027-315-2333 FAX027-315-2334 メール:info@soujinochikara.com