【第156号】工場見学の増加と社員の自信の深まり|(有)ファイン

そうじの力だより第156支援事例紹介工場見学の増加と社員の自信の深まり~整った職場環境が社員の意識を変えた~福井県鯖江市で、メガネのフレームなどにデザインを印刷する特殊印刷業の有限会社ファイン。ここで私が「そうじの力」のお手伝いを始めてから、早くも七年近くになろうとしています。実は、同社の藤井高大社長と私は、ある勉強会で共に学ぶ、いわば「同門の友」です。その勉強会というのは、「理念」を基に企業経営をしていこうという趣旨のものです。その勉強会では、年に一回、共に学んでいる仲間が集まり、一年の成果を報告し合う発表会があり、先日、群馬県高崎市にて開催されました。発表会で藤井社長は、お世話になっている先輩社長から、経営の三本柱は「理念・環境整備・経営計画」だと教わり、以来、愚直にそれを実践してきた、と言います。()ファインの理念は、【社志】一、協働して総合力を発揮する集団をつくる一、進んで未来を拓く人材を育てる一、青少年が健全に育つ地域社会をつくる【社訓】一、役に立ち活かされる存在となる一、基本を身に付け実行する一、独自の長所の発展に努める一、自らを磨いて未来を拓く一、互いの成長を支援し合うというものです。この理念の実現のために、実践として欠かせないのが、環境整備、つまり「そうじの力」だと言います。藤井社長は、ここ最近の変化として、「工場見学が多くなってきた」ことを挙げていました。取引先や同業者からの見学者が、引きも切らないのだそうです。以前は、そのような見学は断っていたとのこと。理由は、技術を盗まれると困るから。しかし、今では、見学したくらいでは技術は盗めない、という自信があるのだそうです。簡単な仕事、つまりどこの会社でも出来るような仕事は減らし、代わりに同社にしかできない独自の技術を使った商品、つまり高付加価値商品の比重を高くしていった結果だと言います。また、以前に工場見学を断っていた理由のひとつは、工場が汚かったこと。こんな工場を見せたら恥ずかしい、というかつての気持ちは、今やまったくありません。それもそのはず、この七年余りの「そうじの力」の活動で、工場内は整理整頓が進み、快適な職場環境に変わっています。見学者が増えている理由が、まさにそれです。同社の技術や商品に関心があるというよりは、工場内が整っているということが評判を呼んでいるのです。「取引するならファインと」と、営業面にも良い影響が出ています。もとより、印刷業というのはインクの飛び散りなどで「汚いのが当たり前」という業界。その中で、同社のような事例があると、同業者もビックリしてしまうのでしょう。興味深いのは、こうした工場見学の増加が、社員さんたちの自信につながっている、ということです。普段の仕事の中で、社員さんたちが直接お客様の声に接することはあまりありません。自分たちの仕事が評価されているのかそうでないのか、分かりにくい、というのが、製造業のつらいところです。しかし、こうして見学者が来て、「キレイだね」「整っているね」「分かりやすいね」「動きやすそうだね」という声を聞くことが、彼らに大きな自信を与えているようです。同社においては、単にキレイにする活動をしているわけではありません。「そうじ=工夫・改善」ととらえて、そうじによって得られた気づきを、どんどん挙げて皆で共有し、日々進化させていっています。掲示板には、そうした気づきを記入したポストイットが貼られています。これを基に改善を進め、完了したらファイリングしています。また、これまでも進めてきた改善の内容を、きちんと記録に残していくことにも取り組んでいます。記録に残しておくことで、振り返りができ、さらなる自信にもつながります。藤井社長が掲げた理念が、まさに会社の血となり肉となり、具現化しつつあります。            (小早)今月の読書から『八甲田山 消された真実』伊藤薫著~公文書改竄は、昔から行われていた?~明治35年、八甲田山における陸軍の雪中行軍演習において、青森の第5聯隊が遭難し、199名が死亡した痛ましい事故は、新田次郎の小説およびそれを原作にした映画で有名です。 小説や映画においては、遭難の原因を次のようにとらえています。 演習の編成は中隊であり、本来の指揮官は中隊長である神成大尉です。ところが、上官である山口少佐が随行し、本来の指揮命令系統を無視して命令を発したために混乱が生じ、予想外の猛吹雪とも相まって、遭難に至ったと。 ところが本書によれば、事故の真の原因は他のところにあるといいます。 第5聯隊にとっては、これが初めての八甲田山での演習でした。彼らは、夏の気候の良い時期にさえも、八甲田山を行軍したことはなかったのです。つまり、下見も何もなかったのです。 ましてや、冬の八甲田は、積雪3mを超える豪雪地帯です。雪で何も見えないような過酷な環境を、下見も何もなしに、いきなり本番の行軍に臨んだのです。 また、第5聯隊は、雪を掘って仮眠場所を確保するいわゆる「雪濠」の設営訓練も行っていませんでした。 装備も極めて貧弱。もとより現代のような防水透湿機能のある衣類がある時代ではありません。隊員たちは、靴下の上に直接藁靴を履き、水で濡れた足は次々に凍傷にかかっていったそうです。 まったくの準備不足。なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。 そもそも、この雪中行軍の命令が下ったのが、行軍実施のわずか一週間前だったのです。 それは、第5聯隊のライバルである、弘前の第31聯隊が、冬の八甲田での雪中行軍を予定していると聞いた聯隊長の津川中佐が、ライバルに先を越されてはメンツが潰れると、急遽自軍に命令を下したことが事の発端だそうです。 加えて、演習隊が遭難した後の対処も、最悪でした。津川聯隊長は、予定を過ぎても帰営しない演習隊を、どこかでビバークして、そのうち無事に帰営するだろうと高をくくって、救助隊を編成することさえしなかったのです。 さらに醜悪なのは、事故後、陸軍大臣および天皇に充てた報告書には、こうした津川聯隊長の失態を隠蔽するために、様々な事実を改竄・ねつ造した文書が盛り込まれたことです。 組織において、上位者の自己保身は、必ず下位者を不幸にします。 リーダーたるもの、メンバーを動かすに当たっては、万全の準備を整え、いざ不測の事態が起こった場合には、全責任を負う覚悟が必要であると、私自身、肝に銘じた本書でした。        (小早)株式会社そうじの力  そうじで、組織と人を磨く日本で唯一の研修会社弊社は“そうじ”を通じた「良い社風づくり」を支援します。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)そうじの力だより第156 201871日発行 発行者:小早 祥一郎(株式会社そうじの力 代表取締役)370-0078 群馬県高崎市上小鳥町373-6 TEL:027-315-2333 FAX027-315-2334 メール:info@soujinochikara.com