【第157号】各所にリーダーが生まれてくれば、組織は変わる|(株)小池勝次郎商店

そうじの力だより第157支援事例紹介やりたくないことも、時にはやらねばならない~各所にリーダーが生まれてくれば、組織は変わる~埼玉県深谷市の()小池勝次郎商店。「日本の農業を活性化して、農家を元気に豊かにする」を経営理念に、農業用資材の販売、農産物直売所、米の集荷と販売、ネギ栽培のサポート事業などを展開する会社です。同社で「そうじの力」の活動が始まったのは、今から四年前。その四年間で、見た目は大きく変わりました。しかし、変わったのは、物理環境だけではありません。人の意識が変わったのです。先般行われた「第七回そうじの力全国大会」のホスト役を務めていただいた同社の発表は、そうじを通じて組織が変わるとはどういうことか、を如実に示してくれました。農業用資材の小売店「こいけや」のレジ回り。当初は、モノで溢れかえっていました。ここはお客様からも見える場所。関係する社員が集まって、何度も改善策を検討しましたが、なかなかうまくいきませんでした。現在はこのように、スッキリとした空間に生まれ変わっています。店長、宍戸さんは、「そもそも、そうじという『やりたくもないこと』をやらせるのだから、簡単ではありません」と正直に話してくれます()。この活動の目的や意義などを、何度も何度も繰り返し説いたそうでです。大切な活動であることは分かっている。しかし、面倒だと思う気持ちや時間を取られたくないという気持ちも分かる。リーダーは、心を鬼にして、向かうべき方向性を説き続けなければならない、ということなのでしょう。宍戸さんによれば、こうした経緯を経て、「全員が経営的な感覚を持てるようになった」と話しています。こちら、大口顧客を回って営業活動を行う外販部では、詰所のレイアウトが大きく変わりました。当初は、各人に一台のデスクがあったのですが、それを廃止し、真ん中に一台の楕円形テーブルを置き、フリーアドレスになりました。外販部の内田さんは、その前後を振り返り、「正直なところ、個々人のデスクだけは死守したかった。相当な抵抗感があった」と述懐します。しかし、なかば強制的にフリーアドレスになってみると、意外にもメリットが多いことを実感します。「今になってみると、この方が話もしやすい。以前は、(デスクが外側を向いていたため)お互いが何をしているのか分からなかった。でも今は、お互いが何をしているのかがよく分かる」と、「変わる」ことの大切さを感じているようです。ビニールハウスを組み立てる職人さんたちを取りまとめる畔上さん。ハウスの部品庫は、当初、足の踏み場もないような状態でした。まずは、使うものと使わないものに分別し、使わないものを処分していきます。職人さんたちは高齢者が多いため、モノを捨てることに強い抵抗があったと言います。しかし、「今日入った新人でも、どこに何があるか分かるようにしよう」としつこく説いたところ、職人さんたちも徐々に前向きに取り組むようになってくれて、最近では、指示をしなくても自発的にやってくれるようになっているとか。こうした取り組みを通じて、仲間としてのコミュニケーションが深まっていると言います。「何か改革に取り組むときに、抵抗はあるものです。要は覚悟です」と畔上さんは力強く語ってくれます。一方、経理や労務などの事務員さんたちが働く事務所は、比較的抵抗感がなく活動が進められたようです。風通しを良くするために、各デスクを仕切っていたパーテーションを取り払いました。共用の書類が、誰でもすぐに取り出せ、元に戻せるように、キャビネの位置も変えていきました。この事務所で働くのは、多くがパートの女性ですが、彼女たちが意見を出し合って、工夫や改善を重ねていったそうです。同社における「そうじの力」の総リーダーが、望月さん。当時、入社してまだ半年でリーダーに任命されました。彼女が一生懸命に取り組む姿が、先輩社員たちにカンフル剤を注入したのです。必ずしも本人が望んだ任命ではなかったかもしれませんが、使命感が彼女を突き動かしたのでしょう。小池博社長は、活動のひとつの成果として、「トップダウン経営からの脱却」を挙げています。それが実現できたのは、こうして各所にリーダーが生まれてきていることのなせるわざなのでしょう。              (小早)飛鳥の視点「働き方改革」はそうじから始まる!~第7回そうじの力全国大会から~6月29日、子どもを連れて「第7回そうじの力全国大会」に参加してきました。ホスト企業の()小池勝次郎商店は、10年前に私が新卒で入社した会社。その後、縁あって()そうじの力に転職後、弊社が古巣の“そうじ”のお手伝いをすることになったものです。 私が在籍していた当時、取り扱う雑多な農業用資材で溢れかえっていた店舗は、いまや「社員が働きやすい職場」に日々日々進化しています。 私が今回一番感じたのは、「そうじの活動は、“自分の会社は自分でつくる”という、『自分主体の働き方改革』である」ということです。 「そうじに取り組むことによって、社内の膿(うみ)がどんどん出てきた」と、小池博社長。会社内に不要なものがなくなり、場が整っていく過程で、社員から会社への不満や希望がどんどん出てくるようになったそうです。高すぎる目標設定、財務、人間関係、労働環境や研修への不満・・・。それらが出てくることで、どうすれば解決できるか?と個々が考え行動する土壌ができ、会議の進め方も、トップダウンから社員主体に変わったといいます。 リーダーの望月さんは、入社半年で社長からリーダーに大抜擢されます。右も左もわからない中、まずは毎朝の朝礼で「なぜそうじに取り組むのか」と活動の目的を伝え続けました。そして「全社で楽しく活動する」ために、会議やチェック方法を考え、PDCAサイクルが回るように実行してきました。 望月さんの熱意に、普段外回りに出かけている営業部のメンバーも動かされます。以前は一人一人が抱えていた顧客情報や営業案件。それを「365日お客様に対応できるようにしたい。そして皆がきちんと休めるようにしたい」と、情報・知識を共有できる仕組みづくりをしています。  「そうじの力」が発揮されている企業に共通しているのは「みんなで、楽しく、変えていく」。一人での活動は自己満足の域を出ませんし、楽しくなければ「やらされ感」ばかり残ります。何かを捨てなければ「変化」はありませんし、会社で何かを「捨てる」ためにはやはり「みんな」でないとできないのです。 経営者・社員問わず一人一人が「こうしたい」を表現でき、みんなでそれを叶えていく。「働きたい会社」を自分がつくる。それが真の「働き方改革」だと確信できた全国大会でした。        (大槻)株式会社そうじの力  そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社弊社は“そうじ”を通じた企業の「組織変革」を支援します。講義、実習、チームミーティング、計画作り、現場検証を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)