第70号「そうじの力だより」
活動報告?マツバラおそうじPWU活動〈困難な環境でも粘り強く〉~「非常識」が見えてきた~岐阜県の鋳造メーカー?マツバラの「おそうじパワーアップ活動」のお手伝いをしています。活動をはじめて一年。年間の活動発表会が催されました。活動にあたっては、各部署から前向きな若手がプロジェクトメンバーとして集まり、彼らを中心に進めています。発表会では、各メンバーから、それぞれの部署の、この一年間の取り組みをダイジェストで発表してもらいました。今回圧巻だったのは、処理係です。ここは、鋳型を作る砂を扱う部署なので、粉塵の発生が特に多い所。掃いても掃いても、すぐに粉塵が降り積ります。ところが今回、現場を見てみると、いつもは粉塵でくすんで見える床が、なんと天井の蛍光灯を反射して光っているではありませんか。思わず、「ありえない!」と叫びたくなりました。聞くところによると、リーダーの下、部署全員が、暇さえあればバキュームやホウキ、雑巾を持ってそうじをしているのだとか。工場内でも一二位を争う過酷な環境にある処理係の成果を目の当たりにすると、「時間がない」「設備が古い」などと言った取り組みが進まない理由は、すべて「言い訳」であると分かります。処理係だけでなく、キュポラ係、溶解係、造型係なども粉塵の多いところですが、今では随分ときれいになりました。事務系の部署も頑張っています。購買係は、黒ずんでいた壁や什器を少しずつ磨いています。壁が白くなり、今では天気の良い日には、蛍光灯をつけなくても明るいのだそうです。ユニークなのは、電算係です。各現場に据え付けられているパソコンを分解し、内部に溜まっていたホコリをエアで除去しました。外側のそうじはしても、なかなか内部にまでは手が回らないものです。本当の問題は何か、と掘り下げる意識の表れでしょう。各グループの年間発表を基に、今年度顕著な活動を行ったグループを表彰すべく、審査が行われ、その結果、処理係が金賞を受賞しました。この表彰制度は、今回新設されたものですが、社長の「当社にとって大変に重要な活動。表彰にも重みを持たせたい」との意向を受けて、金賞、銀賞、銅賞それぞれに重厚な楯と金一封が贈呈されました。表彰されたグループのメンバーには、涙を流している人もいましたが、とにかく彼らは良い表情をしています。そうじを通じて、仲間意識が高まっていることが感じられます。私はこの発表会の講評の中で、「当社は、業界の中では『非常識』になりつつある。しかし、目指すべきは業界を超えた非常識だ」と締めくくらせてもらいました。おそうじ 紙上講座敷地外をきれいにする〈「私」と「公」の壁を低くする〉~大切なのは続けること~企業の環境整備では、活動場所として大きく「敷地内」と「敷地外」があります。敷地内をきれいにすることは当然のことですが、敷地外をきれいにすることの意味はなんでしょうか?私はその目的を、次の三つと考えています。?取り巻く環境を整える?「私」と「公」の壁を低くする?ブランドイメージを高める私たちにはエゴがあるため、どうしても自分中心に行動してしまいがちです。自分の家はきれいにするのに、街中ではタバコのポイ捨てをしたり、車の窓から道路に空き缶を投げ捨てたり、唾を吐き出したり。同じ会社内でさえ、「ここまではウチのゾーンだけど、ここから先は向こうのゾーンだ」などという責任の押し付け合いがあったりします。口でいくら「他人のことを考えましょう」などと言っても、なかなか人間の腹には落ちないものです。そこで、敷地外のそうじをすることで、「自分の敷地も外も同じ」という意識を腹に落とし込むことができると考えます。先日、ある会社で、ゴミ拾いとガードレール磨きの実習を行いました。工場の周りを歩いてみると、まあ、あるわあるわ、道路や歩道、植え込み、空き地、河原などに、空き缶、空きビン、ビニル袋、本などが大量に捨てられています。空き地にはおそらく所有者がいるのでしょうが、所有者の善意に期待していても、いつになるか分かりません。河原やガードレールの管理者は、おそらく国か県か市なのでしょうが、だからといって彼らを批判しても始まりません。新入社員研修も兼ねて、総勢三十名ほどでゴミ拾いをしましたが、二時間でトラック一杯分のゴミを拾い集めました。でも、これは氷山の一角で、まだまだたくさんのゴミが落ちています。ガードレールも、わずか百メートルほどの距離ですが、黒ずんでいたものが真っ白になり、見違えるほどきれいになりました。実習後の感想発表で、ある人が、「以前に、蛍の住む裏の川をきれいしよう、という話を聞いた時は、どうして自分がそんなことをしなければならないのか、と思っていたが、今日こうして実習してみて、それもありだな、と思った」と言っていました。こうしたきっかけで、すべての物事を「自分の問題」としてとらえることができるようになるのでしょう。ただし、大切なことは、「続けること」です。一回やっただけで終わりでは、単なる自己満足のイベントになってしまいます。特別レポート被災地に足を踏み入れて〈残された我々が何をすべきか〉~やっぱりそうじは大事~四月十五日から十六日にかけて、NPO法人エコツーリズムネットワーク主催の震災復旧ボランティアツアーに参加してきました。従来私はこのようなボランティア活動にはあまり関心がなかったのですが、今回ばかりは自分自身も多少被災したこともあり、何かしなければ、と思って参加しました。活動したところは、石巻市の大街道南。自動車が家の二階部分にまで積み上げられ、周囲はガレキの山です。幸いにも家ごと津波で流されることは免れたものの、家の中は海水と汚泥で水浸しになっています。私たちの役割は、家の中からすべての家財道具と泥を運び出すこと。家の中に入ると、潮の臭いと泥の臭いが混じって、悪臭が充満しています。畳などは、水を吸って百キロくらいの重さになっています。家電も、服も、本も、すべて泥水まみれ。床には五センチくらい泥が溜まり、ぬかるむ中を、流れ作業で搬出していきます。家財の搬出が終わったら、泥かきです。わずか一日の作業で何ができるのか、と心配しましたが、結局、一軒の家の中をどうにか片づけることができました。私たちは六人のチームで作業しましたが、もしこれを家主の方自身でやるとなると、気の遠くなるような日数が必要です。「にわかボランティア」でも、それなりに必要とされている、ということが分かりました。それにしても、たとえ全部が片づいたとしても、あの家にまた住むのは大変なことです。被災地の方々のご苦労を思うと胸が痛みますが、大切なのは、被災を免れた私たちがどう変わるかだ、という思いを、ますます強くしました。経済アナリストの藤原直哉先生は、「残された我々が、この政治的経済的閉塞状況を突破することのできる、未来に希望を持てるような理念を掲げ、イノベーションを起こさなければいけない」とおっしゃっていました。イノベーションというものは、思い立ってすぐにできるものではないと思います。そこに至るまでには、コツコツとした積み重ねが必要でしょう。「そうじ」を続けていると、感性が研ぎ澄まされてきます。イノベーションを起こすための基礎体力作りとして、ぜひとも万人が取り組まねばならないことだと思います。もうひとつ、そうじに関連したことで感じたこととして、家財道具が多いと片づけが大変です。今回、おそらく何年も使っていないだろうと思われる物もたくさん運び出しました。常に身の回りをシンプルにしておく必要を、あらためて感じました。お知らせ◆チャリティーセミナー『そうじの力で会社が甦る!』 本セミナーでは、なぜ整理・整頓・清掃に取り組むと会社が良くなるのか、その合理的メカニズムをご説明します。 また、そうじを取り入れて経営を改革した会社の事例もご紹介します。 そして、導入にあたっての具体的方法やコツなども伝授します。 尚、本セミナーの参加費は全額、日本赤十字社を通じて、東北地方太平洋沖地震の復興支援に寄付させて頂きます。日 時:五月十日(火)十五時~十七時場 所:高崎商工会議所講 師:小早 祥一郎対象者:経営者、経営幹部参加費:五〇〇0円◆創業道場対象者:経営者、後継者、起業志望者日 程:五月十一日(水)、 六月一日(水)、七月六日(水)、 九月七日(水)、十月五日(水)、 十一月二日(水)、十二月七日(水)内 容:六時~七時半 環境整備実習 (講師:小早祥一郎) 七時半~九時 懇親朝食会 九時~十二時 須田式経営塾 (講師:須田知身)場 所:高崎市産業創造館他参加費:無料(食事代等は実費)環境整備実習においては、公園トイレ、参加者の事務所、車両などを題材に、そうじをします。須田式経営塾では、各自の経営計画書に基づく実践発表に対し、アドバイスをもらいます。一回だけの参加、連続参加、いずれも可能です。遠隔地の方には前泊のホテルをご紹介しますので、どうぞご参加ください。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(5S=整理・整頓・清掃・清潔・躾)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習(トイレそうじ、倉庫内不要物撤去、工事現場の整理整頓、工場内機械磨き、洗車、書類の整理整頓、周辺地域清掃など)を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は半年~一年。毎月二回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また講演のご依頼も受け付けております。現状調査(診断)やご相談は無料です。全国どこでも出張が可能ですので、お気軽にお問い合せください。 編集後記◆どんな状況でもやれる! 二年ほど前から、合気道を習っています。 先日、私が通っている道場が、火災で全焼してしまいました。 代替の練習場として、近くの市民武道館を借りられるようになったのですが、追い打ちをかけるように、今回の震災による計画停電で、そちらの使用も制限されることに。 ところが、驚くことにわが師範は、近くの洞窟を借りて、そこにマットを敷き、練習を再開したのです。 そのスペース、わずかに十六畳ほど。最初は、こんなに狭い所で稽古ができるのか、と思いましたが、やってみると、意外にできるのです。 どんな状況でもあきらめない。 師範の不屈の闘志に学びました。