【第164号】「そうじ」とは、問題の表面化とその解決|(株)イシカワ
そうじの力だより vol.164支援事例紹介「そうじ」とは、問題の表面化とその解決~(株)イシカワ そうじの力プロジェクト~香川県琴平町。「こんぴらさん」の通称で親しまれる金刀比羅神社のふもとに、介護用品の販売とレンタル、介護用の住宅改修を請け負う(株)イシカワがあります。創業者が会長として一線を退き、現在は娘さんが社長を引き継ぎ、さらにお孫さんが後継者として加入したことで、三世代による経営体制が敷かれています。これまでは家族による「家業」だったものを、公の「企業」に育て上げようとしたことが、「そうじの力」を導入したきっかけでした。約一年前から、弊社のお手伝いにより、全員で環境整備に取り組んでいます。起こすアクションとしては、場を整えましょう、不要なモノは捨てて、必要なモノは分かるようにしましょう、ということです。実際、活動開始前は、事務所内も倉庫内も、モノ、モノ、モノで溢れかえって、足の踏み場もないほどでした。それを全員で協力して仕分けし、使わないものは捨て、使うものだけにしていきました。まだまだ課題は山積みですが、活動開始前に比べると、ずいぶんと場がスッキリとしてきました。さて、同社にとっては、実は物理環境の変化は「結果」であって、目的ではありません。目的は、「各人が本来の持てる力を発揮できるようにする」 ことであり、「互いに気持ち良く仕事ができるようにする」ことです。そのため、整理、整頓、清掃の活動をする中で表面化してきた様々な問題を真正面から取り上げ、その解決のための方策を打っていきました。例えば、毎朝の朝礼です。それまでは、開始時間になっても始まらないとか、人が集まらないとかいう状況でした。輪番で日直を決め、開始時と終了時にはベルを鳴らして、きちんとケジメをつけるようにしました。その後に行われる毎朝のそうじも、同様に、開始時の声掛けと終了時のベル号令を実施しています。また、何かにつけて、必要な情報がそれぞれにきちんと伝わっていない、という状況もありました。そこで、必要な情報をタイムリーに共有するため、週に一回、営業社員による営業ミーティング、そして月に一回、事務員も含めた全員による全体ミーティングを行うようにしました。それぞれのミーティングに責任者と事務局担当を任命し、事前に議題を調整して、議事録も作成しています。月に一回行われる、大掛かりな「全体そうじ」も、同様に責任者と事務局によって運営されています。そして、これら朝礼やミーティングを年間スケジュールに落とし込み、ここには緊急以外のアポイントを入れないことを徹底しました。業種がら、どうしてもお客様からの呼び出しが多く、社内行事をおろそかにしてしまう傾向がありましたが、「先約優先」を徹底するようにしています。こうした取り組みを通じて、「交わした約束を守る」という風土、そして、「一部の人間だけが分かるのではなく、誰でも分かる」仕組みが、徐々に出来つつあります。実際に取り組んでいる社員さんたちの感想です。「取り組みを始める前は、他の営業社員がどこで何をしているのか、まったく分からなかったが、今は皆の動きが分かるので連携や分担がしやすい」(営業社員)「事務社員にも意見を述べたりする機会が与えられているので、皆と話が出来て嬉しい」(事務社員)「『先約優先』を第一に掲げることで、判断に迷いがなくなった」(岡野社長)私の目から見ても、これまでの、良く言えばアットホーム、悪く言えばなあなあだった「家業」が、徐々に「企業」に変貌しつつあります。まだまだ発展途上ですが、今後の展開に大いに期待したいです。(小早)今月の読書から『不死身の特攻兵』鴻上尚史著~ダメなことは「ダメ」と言う勇気~ その人は、陸軍の第一回の特攻隊のパイロットでした。(中略)それでも、9回出撃して、体当たりしろという上官の命令に抗い、爆弾を落として、9回生きて帰ってきた人がいました。—-『はじめに』より— 衝撃です。太平洋戦争において、特攻を命令されながら、それを拒否し、生きて帰ってくる。それも、1回や2回ではなく、なんと9回も、同じことを繰り返し、戦争を生き延びて、戦後も生き続けた人がいるというのです。 特攻については、私も何冊かの本を読み、その背景や意味などを考えてきました。日本人は、目に見えない「空気」に支配されている、という説があります。明確なルールや命令などでなくとも、その場の雰囲気というものを感じ取って、その雰囲気に逆らわないように生きるのが、日本人の特質だと。 なかなか的を射た表現だと思います。特攻については、当時の陸軍や海軍の幹部にも、反対する考えがあったはずです。しかし、その当時の「空気」に支配され、とうとう終戦まで、反対意見が表に出ることはありませんでした。 前線の現場においては、特攻は表向き「志願」ということになっていたようです。しかし、それはあくまでも建て前であって、実態はもちろん無言の圧力による強制だったでしょう。 しかも、本書中にも出てくるとおり、実際に上官から、「ただ敵艦を撃沈すればよいと考えているが、それは考え違いである。爆撃で敵艦を沈めることは困難だから、体当たりするのだ」と、死ぬことを命令されているのです。 にも関わらず、この人は、「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。その代り、死ぬまで何度でも行って、爆弾を命中させます」と反論したといいます。 なんという勇気でしょう。上官に向かって反論するのは軍隊ではあり得ず、軍法会議での処分が当然だった時代でのことです。 特攻に限らず、戦後、そして現在の日本社会においても、この「空気」による支配は続いています。空気によって企業や官庁で不正が横行し、個人の尊厳がないがしろにされています。多くの人々が、「空気」に苦しんで、たくさんの不幸を生んでいます。 でも、戦争のさなかに、生きるか死ぬかの瀬戸際でも、「ダメなものはダメ」と言う勇気を持った人がいたのです。正しいことを主張する勇気が、私たち日本人には必要なのです。 私も弱い人間です。つい、空気に負けてしまいます。環境整備の現場で、「このことを指摘したら角が立つかなぁ」などと迷って、結局何も言わない、ということもよくあります・・・(笑)。 でも、正しいことは正しい、ダメなものはダメという勇気を持ちたいです。(小早)株式会社そうじの力そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社弊社は“そうじ”を通じた企業の「組織変革」を支援します。講義、実習、チームミーティング、計画作り、現場検証を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)そうじの力だより第164号2019年3月1日発行発行者:小早 祥一郎(株式会社そうじの力 代表取締役)〒370-0078 群馬県高崎市上小鳥町373-6 TEL:027-315-2333 FAX:027-315-2334メール:info@soujinochikara.com