【第166号】モノを動かすことが心を動かすことにつながる!|(株)谷口工務店
そうじの力だより vol.166支援事例紹介モノを動かすことが心を動かすことにつながる!~皆で一緒に取り組めば、コミュニケーションが活性化する~福井県美浜町。神秘的な美しさで知られる三方五湖のすぐ近くにある、創業一〇五年の、地域密着の工務店が、(株)谷口工務店です。現社長、谷口直利さんは、四代目。先代から経営を引き継いで、まだ間もないのですが、古い体質の会社を変えるために、何かをしなければいけない。しかし、具体的に何をしたら良いのか分からない。そんな悩みをお持ちでした。そんなとき、同じ福井県の、経営の勉強仲間である(有)ファインの藤井社長から勧められたのが、“そうじ”をつうじた経営改革でした。(有)ファインは、そうじをつうじて見事に組織風土を変え、残業削減や年間休日の増加、社員の自主性の向上や社内コミュニケーションの活性化を成し遂げています。そんな藤井社長に背中を押されて、谷口工務店でも、一年余り前から、弊社がお手伝いして、全社を挙げて環境整備(整理、整頓、清掃)に取り組んでいます。“そうじ”ですから、やることはまず、物理環境の改善です。実際、取り組み当初の同社は、事務所、書庫、倉庫、工場ともに、モノモノモノで溢れかえっていました。もちろん、どこに何があるのか分かりませんし、いろいろな異物が足下に落ちていたりして、危ないのです。そこで、セオリーどおり、まず「整理」、つまり不要なものを捨てることから始めました。倉庫に積んであった建築用の資材や道具類などは、その多くが、いまや何年間も使っていないようなものでした。それらを捨てることで、手狭だった倉庫に、余裕のある空間が生まれました。書類についても、保管しておかなければいけない一部の書類を除いて、どんどん捨てていきました。しかし、決して順調にコトが進んだわけではありません。特に、「モノを動かす」ことに、社員さんの多くが抵抗感を示しました。特に、デスク周りにあった衝立(パーテーション)や、衝立がわりの棚については、撤去することに猛反対がありました。これまでそうした周囲を囲われている環境に慣れていたわけですから、遮るものが何もないと、まるで自分が丸裸にされているような気持ちになるのでしょう。その気持ちは分からなくはありません。それでも、昨年の年末、それらの衝立や棚が、見事になくなっていたのです。今、事務所のフロアは、遮るものが何もないフラットな状態になっています。当初、玄関口に立つと、奥に何があるのか分からないような状態でしたが、今は奥まで見通すことができる、「風通しの良い」状態です。物理的な壁が、心理的な壁を作ります。こうして、物理的な壁が取り払われた以上、これから、もっともっと風通しが良くなっていくことでしょう。同社の良いところは、皆で一緒にワイワイ言いながら活動が出来ていること。モノを捨てるにしても、デスクや棚のレイアウトを変えるにしても、それなりの労力が要ります。事務、設計監理、工務といった部門にかかわらず、全員でモノを捨て、モノを動かして活動しています。当然、そこに会話が生まれ、コミュニケーションが活性化します。コミュニケーションの大切さは、誰でも認めることですが、飲み会をやったからといって、良くなるものでもありません。こうして、モノを動かすことが、心を動かすことに繋がるのだと思います。また、環境整備を進めるに当たっては、計画づくりや話し合いが必要になります。そうした機会を重ねることで、谷口社長と社員さんたちの距離は、間違いなく縮まってきています。実際、取り組み当初の谷口社長は、社業の全容を把握できていないことや、社員さんたちの気持ちを理解できていないことが、大きな悩みでした。まだまだ、課題は山積みです。でも、こうしてモノの動きを通じて心の動きが変わってくれば、少しずつ、しかし着実に、組織は変わっていくでしょう。今後の展開が楽しみです。 (小早)「そうじの力」コラムゴーン氏を不正に走らせたのは何だったのか? 私は大学を卒業してから、日産自動車(株)に就職し、その後十二年間勤めました。私が就職したのは一九九一年。バブルの絶頂期。世間的には「元気だ」と見られていた時期でしたが、入社してみてビックリ。長年の業績不振により、負債が積み上がり、財務状況は火の車でした。 入社して以来、毎年のように倒産説がささやかれます。そして、私が入社して九年目。いよいよ危ない、という時に、ルノーとの提携が決まり、ゴーン氏が送り込まれてきたのです。私はゴーン改革を三年間経験し、その後、独立をし、現在に至っています。 ゴーン改革については、色々な論評があると思いますが、私は、おおむね最初の十年間は良かったと思うのです。実際、ゴーン氏がいなければ日産は潰れていたわけですから。 さて、実は、私は、今回のゴーン氏の不正事件、ちっとも驚きませんでした。「さもありなん」と思ったのです。 私が入社するはるか以前のことですが、日産は、不毛な労使紛争で疲弊していました。労働組合のトップである塩路一郎氏が権勢をふるい、労組を私物化し、会社を食い物にしていました。 ところが、当時の日産の幹部は、「触らぬ神に祟りなし」とばかりに、見て見ぬふりをするばかり。「塩路氏に従っていれば何とかなる」という心情だったようです。 こうした労使紛争で、日産の経営は弱体化していきます。私が入社したころには、既に塩路氏は失脚していましたが、悪化した風土は残っていました。 毎年の春闘で、経営側は「経営が苦しいのでボーナスをカットさせて欲しい」と提案するのですが、組合側は「社員たちは頑張っている。それに報いるためにも、カットは認められない」と反論するのです。明日にも倒産するかも知れない会社ですよ。ボーナスが出るだけましです。 当時、日産にいた人たちが思っていたこと。それは、経営側・組合側も共通で、「いつか誰かが助けてくれる」 誰か、というのは、国だったり銀行だったり、というところが想定されていたのでしょう。「親方日の丸」体質です。 そして、結局、ルノーと提携し、ゴーン氏が助けてくれました。 こうなるともう、「ゴーン様さま」です。たとえ、ゴーン氏に批判的な声があっても、「ゴーン氏に従っていれば何とかなる」という空気には逆らえません。こうなれば、ゴーン氏の独裁となり、不正を働くことはいとも簡単になってしまいます。 結局、日産の風土・体質は、ずっと昔から何も変わっていないのです。 ひと言でいうならば、「依存」です。社長から末端の社員まで、総依存の風土なのです。 私は「そうじ(環境整備)」の取り組みは、「依存」から「自立」に変革するとても良い「仕掛け」だと思っています。日産も、ひょっとして全社でそうじに取り組んでいたら、その風土も変わっていたかも知れませんが・・・(笑)。 (小早)株式会社そうじの力そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社弊社は“そうじ”を通じた企業の「組織変革」を支援します。講義、実習、チームミーティング、計画作り、現場検証を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)そうじの力だより第166号2019年5月1日発行発行者:小早 祥一郎(株式会社そうじの力 代表取締役)〒370-0078 群馬県高崎市上小鳥町373-6 TEL:027-315-2333 FAX:027-315-2334メール:info@soujinochikara.com