【第180号】積極的なIT活用で、より働きやすい職場へ|鶴岡(株)

そうじの力だより第180号支援事例紹介得られた知見を皆で共有化していく!~積極的なIT活用で、より働きやすい職場へ~東京都中央区に本拠を置く、服飾卸、鶴岡(株)。かつては業界の大手として、多くの小売洋品店に服飾品を卸していました。しかし近年は、SPAと呼ばれる製販統合モデルの台頭により、規模をグッと縮小し、コンパクトな陣容で経営の健全化を図っています。こうした厳しい業界動向の中で、鶴岡基和社長が選んだ社内活性化策が、「そうじの力」でした。また、事務所移転を控えており、現在よりもさらに狭い事務所に収まるように、モノの整理・整頓を進めていく必要にも迫られていました。そんなわけで、昨年一〇月にスタートした「そうじの力」は、まずとにかく不要なものを捨てて、モノを少なくすることから始めました。たとえば、書類を留めるクリップ。各人がそれぞれでストックしてあるクリップを、一度、すべて一箇所に集めてみました。すると、とんでもない量に。いかに無駄な重複が多かったかがわかります。同様に、クリアフォルダも、各人が持っていたものを、一箇所に集めるようにして、そこで共有物として管理することにしました。こうすることで、新規に買うことなしに、十分な量を確保できるようになりました。一方、書類の削減については、まずは不要な書類を捨てていきます。既に終わったイベントの関連書類や、型落ちのカタログなどを捨てて、最新のものだけにしていきます。受発注書については、やり取りを終えたらスキャンしてPDF化します。そのPDFデータも、三か月が経過したら廃棄するようにしました。営業に使う製品サンプルも、かさばります。これも、中身を精査して、使用実績のないものは捨てて、本当に使うものだけにしました。スペースに余裕があると、ついつい余計なものまでストックしておこう、ということになりますが、かなり狭い事務所に移転することが決まっていますので、大胆に減らすことができます。同社の特徴は、なんといっても社員さんたちの動きが早いこと。たとえば、クリップやクリアフォルダの放出にしても、「やろう」と声をかけると、あっという間にクリップやクリアフォルダが集まります。まずトライしてみて、完成度は後で上げていくというスタイルです。じっくり考えてから動くよりも、このやり方の方が、改革のスピードは速いですね。もう一つの特徴は、ITの積極活用です。「そうじの力」の活動日は、グーグルスケジューラーによって全員に周知され、漏れがないように管理されます。前述した書類の電子化ですが、スキャンしたPDFファイルの名前の付け方も、全社で統一しました。「日付、顧客名、分類、備考」という統一ルールを基本として、細かい点については部門ごとに使いやすいようにアレンジしていくことにしました。また、データの廃棄期限をフォルダに明記することで、常に期限内のものだけにする工夫もしています。さらに、共有物の整理・整頓の仕方を動画で撮影し、Youtubeにアップして、社内で回覧するようにしています。動画を使った社内周知の方法は、私の知る限りでは同社がはじめてです。そして、こうした創意工夫を支えているのが、社員同士の活発な意見交換です。研修においても、いろいろなテーマでディスカッションをしてもらうのですが、皆さん、非常に建設的な意見を交わしています。メーリングリスト上でも、幹事役の提案事に対して、たくさんの前向きな改善意見がアップされます。コンパクトながら質の高い企業集団、という鶴岡社長の目指す組織像が、実現されつつあります。  (小早)今月の読書から『間違いだらけの日本のインバウンド』中村正人~理念なき経済はいつか行き詰まる~ 武漢コロナウィルスによって、私たちは様々な場面で、価値観の転換を迫られています。  そのひとつが、過度の中国依存からの脱却。サプライチェーンしかり、インバウンドしかり、です。 本書は、今回のコロナが流行する直前の、今年1月1日に発行されたものです。 本書においては、インバウンドが、決して喜ばしいことばかりではないことを、具体的な事例を挙げて説明しています。 「2016年には博多港に過去最多の328回ものクルーズ船が寄港した。その大半が中国発である。(中略)大型客船だけに、1隻2000人以上の乗客がいるため、1日2隻寄港する日は、100台以上のバスが福岡市内を駆け回ることになる。」 「観光目的のクルーズ船で入国した外国人が船に戻らず失踪するケースが、福岡、長崎両県で2016年1月から今年8月末までに計34人に上ったことが両県警の調べでわかった。」 「2012年4月29日未明、群馬県藤岡市の関越自動車道上り線で、金沢発ディズニーリゾート行きの高速ツアーバスが道路左側の防音壁に衝突し、死傷者46名の惨事を引き起こした。(中略)看過できないのは、事故を起こしたのが、普段は中国をはじめアジアからの団体客を乗せる外国客専門のインバウンド貸切バス事業者の派遣した運転手だったことだ。」 また、インバウンドで経済的に恩恵を受けている印象とは裏腹に、実は地元に金が落ちていない実態も紹介しています。 「問題は、ツアー客と一緒に海外から日本を訪れたガイドや日本在住の無資格のにわかガイドがコミッションを営業利益として受け取っていながら所得として申告することなく持ち帰ること、すなわち、観光収入のリーケージ(漏出)が起きていたことだ。」 「営業許可を持たない自家用車で中国の個人客の送迎サービスを行う中国系『白タク』が急増している。(中略)支払いは、中国で普及しているモバイル決済で完結するしくみだ。(中略)中国の配車アプリサービス会社が申告納税義務から逃れているという問題も考えられる。」 こうした問題の背景には、日本政府の打ち出した安易な政策があります。 「2016年3月、政府は東京オリンピックが開催される2020年の訪日外国人数の目標を、それまでの年間2000万人から4000万人に倍増すると決めた。」 なぜ「倍増」なのでしょうか?なぜインバウンドなのでしょうか?そこには、数を増やせば儲かるから、という安易で無責任な考えしかありません。 企業経営でも、同じことが言えるはずです。儲かるかどうか以前に、「何のために行うのか」といった基本理念や、事業が地域や社会に及ぼす影響をしっかりと考える必要があるでしょう。今回のコロナ禍を機に、考え直したいものです。 (小早)株式会社そうじの力 そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社弊社は“そうじ=環境整備”を通じた「企業風土改革」を支援します。講義、実習、チームミーティング、計画作り、現場検証を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月1回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)そうじの力だより第180号 2020年7月1日発行 発行者:小早 祥一郎(株式会社そうじの力 代表取締役)370-0078 群馬県高崎市上小鳥町307-1 TEL:050-3709-2333 FAX:050-6868-2721 メール:info@soujinochikara.com