第72号「そうじの力だより」
活動報告会社は変われる〈心は形となって現れる〉~「そうじの力」は「巻き込む力」~Y社で環境整備プロジェクトがスタートして、三か月目になります。Y社はいろいろな問題を抱え、この環境整備の取り組みも、いわゆる「反対派」の抵抗のために、なかなか進まないのではないかとの懸念がありました。まず火がついたのが、三つある営業所のうち、I営業所です。実はここは、取組前にはもっとも汚い所だったのです。不要物は多い、壁や床は汚れている…。ところが、社員から、「I営業所がきれいになってきている」との報告があり、本当かなあ、と半信半疑でした。先日のリーダー会議において、I営業所の写真が披露されたのですが、汚かった所がきれいになった形跡がくっきりと分かり、その「ビフォー・アフター」ぶりにびっくりしました。ここには一人、積極的な社員がいます。強制したわけでもないのに、定時よりも一時間以上早く出社して、周辺地域の清掃や会社内の床や壁の磨きこみなどを行っているとのこと。私が研修を行った後、彼が私に、「僕、今、燃えてるんスよ!」「環境整備を通じて社風を良くするということ、大賛成っス」「僕みたいな下っ端がグイグイやっちゃっていいんですか?」と話してくれました。彼に引っ張られる形で、周りの社員も動き出し、いまやI営業所全体が、早めに出社して、環境整備に取り組んでいるということです。もちろん、変わったのはモノだけではありません。I営業所の社員の顔が、明るく、実にいい顔になってきているのです。環境整備リーダー会議の場でも、他の営業所の社員から消極的な意見が出た時に、「でも、ウチの営業所は強制ではなくてみんなで決めたことだから問題ないよ」というコメントをしてくれました。この状況を見て喜んだのは、何よりも社長です。社長は、「環境整備に取り組んで、こんなに早く明確な効果が出てくるとは思わなかった。彼らの表情を見ていると、間違いなく良い方向に向かっていると、確信できる」と話しています。「そうじの力」とは「巻き込む力」なのです。おそうじ 紙上講座整頓=美しく見える化〈やるからには徹底する〉~徹底すると楽しくなる~「整頓」とは、「美しく見える化すること」です。その際、中途半端にやらずに徹底して行うことが肝心です。たとえば、デスクの引出し。まずは要らないものを処分する「整理」を徹底して行います。赤ペンは一本、消しゴムは一個など、一種類の事務用品は一つだけにします。それを、単に並べるだけでは、いずれ、いつの間にか場所がズレて、モノも増えてきます。これを防ぐのに最適な方法が、「くり抜き姿絵」です。まず、どの位置に置くのが適当か検討します。頻繁に使うものを手前に、頻度の低いものを奥に配置します。次に、ウレタンボードを引出の大きさに切り、その上に、位置決めした事務用品を置いていきます。事務用品の形に沿って、ウレタンにマーキングします。次に、マーキングに従って、カッターでくり抜いていきます。引出の下に、もう一枚ウレタンボードを敷き、テプラで表示をします。このやり方が優れているのは、「引出を開け閉めしても、位置がズレない」ということと、「モノを容易に増やすことができない」ということです。こうした工夫こそが、環境整備を後戻りさせない「歯止め」になります。別の利点もあります。それは、理屈抜きで「楽しい」ということです。私が支援する会社でこの実習をした時には、参加者は時間を忘れて夢中になってくり抜き作業をしていました。もちろん、ミスも減ります。コラムシンプルな生活を目指して「なんとなく」あるものを見直す~見えないものにこそ価値がある~三月十一日の東北地方太平洋沖地震以来、モノを持つことについて考えています。いくら高価なモノをたくさん持っていたとしても、あのような大災害があれば、それらは壊れてしまいます。また、モノが多ければ多いほど、被害も大きくなります。できる限りモノを持たず、シンプルに暮らす。それがこれからの時代のライフスタイルのような気がします。この考え方は、そのまま企業の環境整備にも当てはまります。こうした観点で、あらためて企業の中を見てみると、実に無駄なモノが多いことに気がつきます。まず、壁に掛けられた絵画や写真、ポスター、カレンダー、地図の類。これはある工務店の壁に掛けられているパース(設計イメージ図)ですが、果たして役に立っているのか、社員に聞いてみました。「このパース、見てますか?」「いえ、見てません」「お客様に見せるのですか?」「いえ、もう古いデザインなので、見せることはありません」「つまり?」「なんとなく飾ってある、ということですね」別の会社の社長室には、地域の地図が大きく貼ってあります。そこで私が社長に聞きました。「この地図、見てますか?」「いえ、見てません」「どうして貼ってあるのですか?」「以前、出店計画を考える際に必要かな、と思って貼ったのですが、結局使いませんでしたね」これは、ある会社の壁に飾ってある剥製の亀です。先代から引き継いで飾ってあるものらしく、社長いわく、「亀は万年と言いますから、縁起物です」とのこと。そろそろ竜宮城に帰してあげた方が良いのではないでしょうか…。ことほどさように、私たちは「なんとなく」モノを持っています。ゴチャゴチャと多くのモノに囲まれていると、本当に大事なものが見えなくなってしまいます。一切の無駄を省き、必要なモノだけが置かれた空間。そのようなお手本がないものか、探してみたら、ありました。それは、禅寺です。こうして寺の中に身を置くと、とても清々しい気持ちになります。同時に、五感が研ぎ澄まされてくるような感覚を味わうことができます。精神修養の場である禅寺にモノがないというのは、うなずけますね。お知らせ◆創業道場対象者:経営者、後継者、起業志望者日 程:七月六日(水)、 九月七日(水)、十月五日(水)、 十一月二日(水)、十二月七日(水)内 容:六時~七時半 環境整備実習 (講師:小早祥一郎) 七時半~九時 懇親朝食会 九時~十二時 あしたの社長学 (講師:須田知身)場 所:高崎市産業創造館他参加費:一〇〇〇円(会場費)環境整備実習においては、公園トイレ、参加者の事務所、車両などを題材に、整理・整頓・清掃を実践します。あしたの社長学では、各自の経営計画書に基づく実践発表に対し、アドバイスをもらいます。尚、朝のそうじのみの参加の場合は無料です。ご希望の方には詳しい資料を差し上げます。◆セミナー講演録DVD販売中 先日開催した『そうじの力で会社が甦る』セミナーの講演を収録したDVDを販売しています。 本セミナーでは、なぜ整理・整頓・清掃に取り組むと会社が良くなるのか、その合理的メカニズムをご説明しました。 また、経営を改革した会社の事例の紹介や、導入にあたっての具体的方法やコツなどもお伝えしました。時 間:百二十分価 格:五〇〇0円(送料込み)お申し込みは巻末連絡先まで。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(整理・整頓・清掃)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は半年~一年。毎月二回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また講演のご依頼も受け付けております。現状調査(診断)やご相談は無料です。全国どこでも出張が可能ですので、お気軽にお問い合せください。 編集後記◆縦?それとも横? 枝豆をつまみに、ビールを飲んでいた時のこと。 娘が「お父さん、枝豆を縦に食べてる!」と笑うのです。 へ?何のことかと思って息子を見てみると、息子は枝豆を横向きにして食べています。 なるほど!確かに私は枝豆を縦向きに食べますが、これだと下の方にある豆が食べずらいのです。指で勢いよく豆を上方に弾くか、歯でかき出すしかありません。横向きに食べれば、難なく食べられます。 四十三歳にして気づいたこの事実。「もう少し早く教えてほしかったよ・・・。」