第73号「そうじの力だより」

活動報告経営改革は整理から〈執着を捨て、過去と決別する〉~モノの整理は事業の整理~N社の環境整備プロジェクトがスタートし、弊社がお手伝いしています。N社は材木屋さんなので、人数規模の割に敷地が広く、そこにたくさんのモノが置かれています。製材所の奥には、何年もホコリをかぶったような古い木材が積まれています。建屋と建屋の間には、古タイヤや粗大ごみが放置されています。驚いたのは、木材を展示してある建屋の上を見上げると、なんと梁の上にたくさんの木材が積まれているのです。社長に、「これは何ですか?」と聞くと、父親である先代社長の時代から、ずっとここに積み上げられている古い木材だということ。「こういう古い木材は、乾燥もしっかりできているので、高く売れるんですよ」とおっしゃる社長。しかし、ならばなぜもっと積極的に売る努力をしなかったのでしょうか?何十年もホコリをかぶっていたこと自体、そのモノが死んでいる証拠です。N社の改革に必要なのは、まず何と言っても「整理」です。整理とは、要るものと要らないものに分け、要らないものを処分すること。ここで大事なのは、機能的に使えるか使えないかで判断しない、ということです。確かに木材は、古いものであってもかえってその価値が高まる場合もあるでしょう。しかしそれを積極的に商品として売っていく意思がなければ、それは不要物と判断すべきなのです。先日の実習においては、社員全員で、梁の上に乗っている木材を降ろしました。ホコリとオガクズで、皆さん全身ドロドロになってしまいました。降ろした木材の中には、売れそうなものもありましたが、市場に持って行って処分することにしました。まだ使えるモノを捨てることについて、「もったいない」と抵抗する人がいますが、ホコリまみれにしておくことと、どっちがもったいないのでしょうか。徹底的に整理して、残ったものはピカピカに磨き上げて使う。これこそがモノを大切にするということでしょう。また、モノが捨てられないのは執着があるからです。過去の栄光を引きずっているのです。モノを捨てなければ、いつまでも時代に合わない考え方から抜け出すことはできません。過去と決別し、新しい経営に踏み出すためにも、整理は必要なのです。場合によっては、メインでない事業は切り捨てて、メインの事業に集中する「事業の整理」も必要になってきます。おそうじ 紙上講座整頓は創意工夫の世界〈後戻りしないための仕組み作り〉~視覚に訴える~「整頓」とは、「美しく見える化すること」です。端的に言えば、「置き場を決める」ことと「表示をする」ことですが、たとえ新入社員であってもどこに何があるかが分かり、その場所に必ず戻すことができるようにしておけば、仕事の効率は格段に上がるでしょう。しかしそのためには、後戻りしない工夫が必要です。口でいくら「元の場所に戻しなさい」と言ったところで、喉元をすぎれば、熱さを忘れるのが人間です。そこで、「視覚に訴える」のが有効です。色を使うことで、文字だけの場合よりも分かりやすくなります。下の写真は、住宅用建材のカタログを、メーカー別あるいは用途別に分け、棚と背表紙に同じ色のテープ(シール)を貼ることで、どの棚になにがあるかを分かりやすくしたものです。従来の置き方では、取る時に迷い、戻す時にまた迷っていました。また、右下の写真は、ファイルの背表紙に、斜めのラインを入れることで、もし違う位置に入れたならばすぐに分かるように工夫されています。見た目にも美しく、これをあえて乱れさせるのはかえって困難です。一方、「見える化」という観点では、キャビネの扉はない方が良いのです。扉があると、一見きれいですが、中に何が入っているかが見えません。だからかえって中が乱れてしまうのです。思い切って扉を外してみると、その乱れが耐えられなくなり、自然と整えるようになります。扉を開け閉めするという余計なアクションもなくなりますので、効率が上がります。整頓は、創意工夫の世界です。コラム何のための経営か?会社の維持は目的ではなく手段~創業の想いに立ち返る~依頼を受けて、ある観光地にあるホテルの環境整備の診断に出向きました。そのホテルは創業四十年ほどで、以前にはさぞ賑わっていただろうと想像できる造りをしています。しかし、今や観光客も減り、残念ながら「さびれた」感じのホテルになってしまっています。ホテルの内外を視察しながら、その不要物の多さや汚さに驚いてしまいました。客室内そのものは、それなりに清掃が行き届いていて不快な印象はありません。ところが、一歩客室を出ると、ひどいのです。まず、廊下や食堂の床が汚れています。古いカーペットですので、限界はあるかも知れませんが、きちんと洗えばずいぶんと白くなるはずです。すでに使っていないスペースは倉庫と化し、そこに机やら椅子やら、過去に使った家具や道具がホコリをかぶって保管されています。メイン棟の裏側の敷地は、雑草が伸び放題に伸びていて、まるでオバケ屋敷の様相を呈しています。どこかから持ってきた鉄道コンテナの中には、おびただしい量の不要物が詰め込まれていることでしょう。こうなってしまった原因は、おそらく、観光客の減少により売り上げが落ち、経費や従業員数を削減せざるを得なくなり、整理・整頓・清掃に手間やお金をかける余裕がなくなったことでしょう。そこでは、どうにかして会社を「維持」することが目的となってしまっています。ギリギリまでコストを削減しようとするのも無理はありません。しかし、そもそも何のためにこのホテルを作ったのでしょうか?何のためにホテルを経営しているのでしょうか?創業時にはきっと、「お客様を喜ばせたい」「お客様に旅の良い思い出を持って帰ってもらいたい」というような純粋な想いがあったはずです。お客様を喜ばせることが目的であって、会社の維持はそのための手段に過ぎません。 お客様に喜んでもらおうと思えば、客室に限らず、ホテルの敷地はくまなく清潔にしておくのは当然のことです。 清潔にすることでお客様の満足度が上がり、リピーターや口コミが増えるのです。目先のことにとらわれると、ジリ貧になります。お知らせ◆創業道場対象者:経営者、後継者、起業志望者日 程:八月はお休みです   九月七日(水)、十月五日(水)、  十一月二日(水)、十二月七日(水)内 容:六時~七時半 環境整備実習       (講師:小早祥一郎)    七時半~九時 懇親朝食会   九時~十二時 あしたの社長学        (講師:須田知身)場 所:高崎市産業創造館他参加費:一〇〇〇円(会場費)環境整備実習においては、公園トイレそうじの他、参加者の事務所、車両などを題材に、整理・整頓・清掃を実践します。あしたの社長学では、各自の経営計画書に基づく実践発表に対し、アドバイスをもらいます。現在の参加者は二十三歳から六十歳まで約十五人。異業種による相互交流も含めて、活気ある勉強会です。県外の方も、前泊してぜひご参加を!◆セミナー講演録DVD販売中 『そうじの力で会社が甦る』と題した約二時間のセミナーの内容を完全収録したDVDを販売しています。 なぜ整理・整頓・清掃に取り組むと会社が良くなるのか、その合理的メカニズムをご説明しています。また、成功事例の紹介や、導入にあたっての具体的方法やコツなどもお伝えしています。価 格:五〇〇0円(税・送料込み)お申し込みは巻末連絡先まで株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(整理・整頓・清掃)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は半年~一年。毎月二回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また講演のご依頼も受け付けております。現状調査(診断)やご相談は無料です。全国どこでも出張が可能ですので、お気軽にお問い合せください。 編集後記◆将来は決まっている? 先日、毎年恒例となった「感謝の集いバーベキュー」を我が家の庭で開催しました。 子供も含めて三十五名の方々にご参加いただき、歌あり、花火ありの大変に賑やかな催しになりました。 その中で、うちの四歳の息子が、他の子供たちの輪の中で、変身ヒーローのモノマネなどのパフォーマンスをして注目を集めていました。いわゆる『お調子者』というやつでしょうか。 それを見ながら私は、「どこかに似たような奴がいたなあ」と思っていたのですが・・・・・。 そう、私自身です(笑)。息子の将来の姿が見えるようです。