第79号「そうじの力だより」
活動報告リーダーが育つ 〈環境整備プロジェクトの意義〉~「俺がやらなければ」の意識~企業で環境整備の推進をお手伝いする際に、必ずプロジェクトチームを編成してもらっています。メンバーは、管理職であったり、無役であっても若手を登用したりと、社長の考えで様々ですが、将来、会社の中核を担ってもらいたい人材にメンバーになってもらっています。茨城のW社では、活動を始めてから半年弱が過ぎました。毎回プロジェクトメンバーで会議を開き、どこをどのようにキレイにしていくか、計画を練りながら進めています。取組前はかなりの不要物があったのですが、まず整理(=捨てること)を半年間かけて徹底して行ったので、ずいぶんとすっきりしてきました。今後はモノの置き場を決め、表示をしていく、という整頓の作業に入ります。これも、メンバーがアイデアを出しながら進めています。W社の実行責任者である専務は、「プロジェクトサブリーダーのUさんが、最近変わってきた」と言います。「以前は、もっと先頭にたって業務を進めてもらいたいと思っていたが、どうも弱かった。今は自信を持ってやっている」とのこと。名古屋のY社では、先日のプロジェクト会議で、それまではどちらかというとおとなしくて発言も少なかったMさんが、「自分がやらなければ誰もやらないと思うので、空いている時間に倉庫の整理をやっている」と発表してくれました。そしてその場で、「今日できればこのメンバーで、休憩所の不要物を捨てたい」と言うので、さっそく取り掛かりました。誰も見ていない掲示物、賞味期限切れのお菓子、今や誰も指さない将棋盤、記念楯など、どんどん捨てていきます。テレビが置いてあるのですが、アンテナに接続されておらず、誰も観ていない、とのこと。これも思い切って処分しました。社員全員に火がつくまでは、なかなか時間がかかります。しかし、プロジェクトメンバーから、必ず将来のリーダーが育ってくるものです。 (小早)おそうじ紙上講座身の回りを正す 〈道具や衣服を整えているか〉~そうじの実作業以上に大切なこと~環境整備というと、「とにかくそうじをすること」ととらえられがちです。そのとおりではあるのですが、そこで忘れてはならないのは、そうじの実作業の前後あるいは最中に、自分の身の回りが整えられているか、ということです。具体的には、使う道具があちこちに散らかっているようなことがなく、一か所に集められていること。道具が通行人など周囲の人たちの邪魔にならないような位置に置いてあること。雑巾を絞った水があちこちに飛び、床などを濡らしていないこと。さらに、作業の邪魔になるからといって、着ていたジャンパーを脱ぎ、そのへんに無造作に放っておくことのないようにすること。道具や衣服が散らかっていると、外部の人間が見ると、「だらしがない」と映ってしまいます。せっかくそうじを通じて場も心もキレイにしようとしているのに、副次的なことで場を乱しているのです。また、そうじ道具の片づけも大切です。多いのは、雑巾やスポンジ、タワシなどの水気をきちんと取らないケース。たとえば私が仲間と一緒に行っている公園のトイレそうじの道具類は、毎回終了後に私が干しています。その際、水気の取れていない雑巾やスポンジは、いくら干しても乾きません。また、水分があるというのは、一番雑菌が繁殖しやすい環境なのです。道具を管理する人間に配慮すること。そして次回使う際に、すぐに使える状態にしておくこと。こうしたことを通じて、他人を思いやる気持ち、モノを大切に扱う気持ちなどが育まれていくのです。 (小早)おそうじコラム抵抗勢力の出現 〈そのとき社長はどうするか〉~必ず越えねばならぬ壁~環境整備を企業で始めると、初期の段階で必ずぶつかる壁があります。 それが、「抵抗勢力の出現」です。 環境整備は良いことだから、誰もが納得するに違いない、などと思ったら大間違い。不思議なもので、世の中には良いことほど反対する人がいるのです。 私がお手伝いしたある会社における、研修の感想文をご紹介します。(守秘義務の関係上、表現を多少変えています) ――-先日の研修内容から得られる物があったかといわれると、少し首を傾げたくなる内容であった。 何度も言わせて頂くが、我々は○○という職務であり、△△というスキルを活かして業務を行うことが本分である。 私には、本社サイドが環境整備=掃除ということにこだわり過ぎているようにしか感じられない。 掃除は確かに必要だが、それが業務遂行の足枷になってはいけないと思う。 今後はもう少し実のある研修にして頂きたいと思う――- これは、ある店の店長の感想文です。 なるほど、言っていることは一理あるようにも思えます。 彼を納得させられなかった私の講師としての力量不足も認めざるを得ません。 しかし、彼の店舗を見ると実態が分かります。汚いのです。ホコリが溜まっています。環境整備どころか、日常清掃さえ、きちんと行っている様子がありません。 実はこうした抵抗は、「できる」タイプの社員に多くみられます。理屈は立派なのですが、本音のところは、「面倒なことはやりたくない」のです。 彼のような強硬な例はそう多くはありませんが、程度の差こそあれ、必ずどの会社でも抵抗勢力が現れます。 こうした場面で、経営者の手腕が問われます。もちろん、面と向かって頭ごなしに彼らを叱責するのは得策ではないでしょう。かといって、彼らを野放図にするわけにもいきません。 どのように対処するのかは様々なケースがあり、一概にベストな方法があるわけではありません。 ただ一番大事なのは、経営者が「ひるまない」「あきらめない」「ブレない」ということだと思います。 先の感想文を書いた店長がその後どうなったか。残念ながら、不祥事を起こして解雇されてしまいました。 一方、当初「面倒だ」とこぼしていた社員が、活動が進むにつれて「キレイになると気持ちいい。もっとキレイにしたい」と感想を述べるようになった、嬉しいケースもあるのです。 (小早)新時代の経営を考える大義を掲げよ 〈本心から燃える使命感があるか?〉~数字目標ありきでいいか~ 「売上○○億円が、私の夢です」 支援先の社長がおっしゃいます。 そのこと自体は否定しません。企業において、数値目標を設定するのはむしろ当たり前。定性的な言葉だけでは、具体的行動に移しにくいのも事実です。 問題は、数値目標の位置づけです。 売上目標が第一義に掲げられたとするならば、それに共鳴するのはどんな社員でしょうか。 おそらく、「金銭」のことを最優先にする社員が共鳴するのではないでしょうか。 もちろん社長にしてみれば、「売上目標を第一義にしているわけではない。きちんと理念を掲げている。売上は掲げる目標のひとつにすぎない」とおっしゃいます。 しかし、それは本音でしょうか? タテマエで理念を掲げても、社員は見抜いてしまいます。 「売上目標○○億円を達成するためには、お客様から信頼されなければならない。だから誠実な仕事をするのだ」と考えているとしたら、それは順序が逆だと思います。 そのような考え方で、果たして本当に誠実な仕事ができるのか疑問です。 「我社の商品(サービス)は世の中に必要とされている、役に立つ、唯一無二のものである。これを提供できなかったならば、お客様が不利益を被る。何が何でもこれを提供し、お客様に幸せになっていただかないといけないのである」という燃えるような使命感があるのか。 「我社の事業が伸びれば伸びるほど、世の中が良くなる。人々が幸せになれる」と本心から思えるかどうか。 こうした大義に、社員は共鳴し、仕事に邁進するのです。 そもそも、○○億円などという売上目標は、お客様や世間一般の人たちにしてみればどうでも良いことであり、あくまでも「我社の都合」でしかありません。 しかし大義を掲げれば、それに共感してくれる外部の人たちからの支持をも得ることができるのです。 売上目標の本来の立て方とは、たとえば以下のようなものだと思います。 「この商品(サービス)を群馬県の全人口の三割に提供する。つまり六十万人に提供するのだから、それに単価をかければ売上は○○億円になる」と。 余談ですが、私がまだ日産自動車に勤めていたころ、エコカーについて当時の経営陣は、「今は経営が苦しいから、エコカー開発を当面凍結する。業績回復が先だ」という方針を打ち出していました。 同じころ、トヨタ自動車がハイブリッドに力を入れて「環境問題に取り組む」という姿勢を見せていたので、私は日産の方針に大いに失望したものです。 社員、お客様、地域の人々すべてが納得できる大義を掲げることは、社長としての最も重要な仕事のひとつです。 (小早)飯塚輝明の輝け!中小企業時間を守ることが優先 ~「やり残す」と継続できる ~以前に勤めていた清掃用具販売会社で常務として私が環境整備の総リーダーに就任し、プロジェクトが動き出して半年ほど経った土曜日の夕方でした。 「スッゴイ綺麗になりましたねー」とサブリーダーのS係長は、満足した様子で私に語りかけます。 その日は、出勤日である土曜日の午前中を使い、社屋裏の雨どいの清掃をやることになっていました。 その雨どいは、長年放置されて、土が溜まり、その土に雑草が生え、地上からも重そうに茂った雑草が見えました。 社屋の外回り担当であるS係長は、それに気づき、計画に盛込み、他のチームにも動員をかけ、はしごの準備もして作業当日を迎えたのです。 計画では午前中で終わるはずでした。 しかし作業を始めてみると思った以上に土が堆積していて、午前中では作業は終わらず、参加メンバーの同意を得て午後の時間も費やしてようやく雨どいを徹底的に綺麗にすることが出来たのです。 私は「良くここまでやったねー」と、S係長に感心して答えました。しかし同時に大きな後悔もありました。 なぜ私がリーダーとして、そして経営者の一人として、昼休みの時点で「今日はここまでで充分だよ」と言って作業を終わらせなかったのか、との思いです。 環境整備活動を始めてみると初体験の作業ばかりで、計画通りに完了しないことがほとんどです。ですが、やり残すと気持ち悪いので「あと少しで終わるから」と時間延長してでも完全に綺麗にしようとしがちです。 しかし、こと環境整備に関しては、「やり残す事を許す」姿勢が必要だと痛感しました。 この雨どい清掃作業を例にするならば、?雨どいを細分化して?局所集中で徹底的に清掃し?やりきれなかった所はあえて残し?計画を組み直す。というのが適切だったと思います。 環境整備リーダーの心構えとして、大切なのは〈成果を出す事〉ではなく〈継続する事〉なのです。 今回、時間延長したことにより、完全に綺麗になったという成果は得ましたが、同時に「時間を守る」という環境整備の大事な一要素をおろそかにしてしまいました。 私は、この一件以降、あえて「やり残す」ことを受け入れ、「出来た所を喜ぶ」ことにしました。 実際「やり残す」ことには、思わぬ効能もあります。 やり残すと悔しくて、「またやってやる」という闘志がメラメラと燃え盛ってしまうのです(笑)。 (飯塚)今月の読書から『賢者の書』喜多川泰著~どんな経験も、人生というパズルのピースにすぎない~喜多川泰さんという作家については、まったく知らなかったのですが、クライアントの社長から勧められて読んでみました。なかなか素晴らしいことを書く人だなあ、と感心して、ご紹介したくなりました。この『賢者の書』の中で、賢者は主人公の少年に向かって、「人間の人生というのは、あのように大きな一枚の絵を完成させるようなものだ。」と語りかけます。そして、「大きな絵、つまり夢を思い描く。そして行動を起こす。そうすると、ひとつだけその絵を完成させるのに必要なピースが手渡される。」と続けます。「つまり、行動の結果手に入るものは、失敗でも成功でもない。絵を完成させるために必要不可欠なピースのひとつであり、それ以上でも、それ以下でもない」この一文が、特に心に残りました。私たちは、何かの行動を起こした時に得られる結果が、自分の望むものであったときに、それを「成功」ととらえ、逆に期待した結果を得られなかったときには「失敗」ととらえがちです。しかし、自分の身の回りに起こるすべての出来事は、自分の糧となり、必ず将来に生きてきます。私ごとですが、私たち夫婦には、結婚してすぐに出来た子供がいました。妻のおなかの中で順調に育っていたのですが、なんと出産予定日の一週間前に、おなかの中で原因不明で死んでしまったのです。当時はとてもつらく、何年も悲しみと恐怖感を引きずりました。しかしその当時から私は、「これにはきっと意味があるに違いない。この出来事があったからこそ良かった、と言える日が来るに違いない」と思っていました。実際、それがあったからこそ、その後に生まれてきてくれた娘と息子に対して、「生まれてくれただけでもありがたい。生きているだけでもありがたい」という感謝の気持ちで接することができている気がします。目の前に起こっている出来事に一喜一憂せず、それを自分にとって必要な経験だととらえて前向きに行動を続けること。そのことをこの『賢者の書』では、パズルのピースという表現を使って非常に分かりやすく説明してくれています。実は喜多川さんの本で一番はじめに読んだのは、『手紙屋』でした。こちらもオススメ。特に進学や就職、転職などで悩んでいる人には、大きな示唆を与えてくれるでしょう。平易な文章で書かれているので、中学生くらいから読めると思います。 (小早)お知らせ◆創業道場 経営者、後継者、起業志望者を対象に「創業道場」を定期開催しています。【内 容】 6:00~7:00環境整備実習 担当:小早 祥一郎 トイレそうじや参加者の事務所 を対象にした整理整頓実習 9:00~12:00あしたの社長学 担当:須田知身(事業再生財団) 各自の経営計画書に基づく実践 発表とアドバイス。 【日 程】 3月7日(水)、5月9日(水)、6月6日(水) 7月4日(水) 【会 場】 高崎市産業創造館他◆創業道場特別編経営計画作成合宿in草津温泉【日 程】 2月1日(水)~4日(土)【場 所】 群馬県草津温泉 中沢ビレッジ【内 容】 「志ある経営」を目指す仲間と共に個人や企業の経営計画をじっくりと練る合宿です。経営計画発表会【日 程】 4月4日(水) 9:00~12:00【場 所】 高崎市産業創造館【内 容】 互いに経営計画を発表し合い、意見交換します。仲間の前で発表することで決意が固まります。◆DVD無料頒布中『そうじの力で会社が甦る!』 13分 環境整備に関する一般的解説DVD。 実際に弊社が支援している会社の映像を交えて、環境整備とは何か、どのような効果があるのか、どのように進めるかを解説しています。『小河原建設 環境整備の取り組み』 10分東京都中野区にある小河原建設では、約1年前から弊社がお手伝いに入り、「徹底する」「自発的に取り組む」をテーマに環境整備強化プロジェクトを推進しています。本DVDでは、実際の同社の取り組み風景や、講義や実習の映像、社長と社員のインタビューなどを収録しています。ご希望の方は、希望枚数と送付先を明記の上、お申込みください。編集後記ことばは正確に・・・ 4歳の息子はプリンが大好き。 特に、ウチの近くのパン屋さんのプリンは、甘いものをほとんど食べない私も大好きなくらいおいしいプリンで、息子の大好物です。 ある日、3時のおやつにそのプリンを買っていってやりました。 息子がおいしそうに頬張る姿を見て、私も食べたくなり、「ひと口ちょうだい」と言ってもらいました。 私はプリンをスプーンで2杯食べたのですが、それを見た息子が怒って言ったセリフ。 「それは、ふた口!」 (小早)輝ちゃん日記ついに恐れていたことが… 飯塚家には、美人なことしか取り柄のない2歳の一人娘がいます。 おしゃべりが大好きで、新しく覚えた言葉を使いたくて仕方がないお年頃のようです。 最近ママがオムツを替える時に思わず言ってしまう「ん~ん、くさいねぇ!」を覚えたようで、一日中「くちゃい!」「くちゃい!」と言っては大喜びしてます。 そんな彼女が満面の笑顔で私の事を見つめてます。 パパとしてはたまらなく嬉しい瞬間です。 次の瞬間、彼女の口から耳を疑う一言が発せられました。 「パパ、くちゃ~い!」 おぅ、パパにだけは言って欲しくなかったよ・・・。(飯塚)株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(5S=規律・清潔・整頓・安全・衛生)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。現状調査(診断)やご相談は無料です。全国どこでも出張が可能ですので、お気軽にお問い合せください。