第80号「そうじの力だより」

事例紹介まず動く。動けば意識が変わる! 〈気づかないうちに成長している不思議さ〉~福井県 有限会社ファイン~福井県鯖江市にある(有)ファイン。メガネフレームにデザインを印刷する、社員十名の小さな会社です。もともと会社の雰囲気は悪くありませんでしたが、藤井高大社長の、「もっと社員に積極的になってほしい」「もっと自立的になってほしい」との想いを、環境整備を通じて実現していこうと、昨年八月から「そうじの力」研修をスタートさせました。毎月それぞれ一回のリーダーミーティングと全体研修を通じて、講義、ワークショップ、実習などを繰り返してきました。ここ数か月、社内の雰囲気がぐっと良くなってきた感があります。今回、その変革の様子を、関係者のインタビューを通じてお伝えしたいと思います。――何がどう変わったのでしょうか?藤井社長「見た目でいうと、弊社は印刷の会社ですから、以前は機械や作業台や床がインクで汚れていて当たり前、という状態でした。しかし今は、その汚れを落としたので、逆にキレイが当たり前、というふうになってきました。」「見た目以上に変わったのは、私たちの考え方=意識です。」「以前は、まず意識を改革してから物事に取り組むものだ、と思っていました。しかし環境整備を通じて、とにかくまず行動に移せば、そこから意識が変わっていく、ということを実感しています。」「朝三十分そうじをし、週一回、月一回の重点活動と毎月一回の全体研修をしているだけなのに、急激にではありませんが、着実に社員が成長しています。不思議なことです。」――何か決め手があったのでしょうか?社長「私自身が、動く前に難しく考えて立ち止まってしまうタイプでした。でも今は、まず動くことができています。私自身が一番変わったと思います。」「最初に小早さんの公開講演を聴いた時には、『世の中にはすごい会社があるなぁ。でも、とてもウチには無理だろうな』と、勝手に壁を作っていました。」「でも気づかないうちに、ウチもそういう会社に少しずつ近づいているのです。これは実際の業務においても生きてきます。『どうせこんなこと無理』と最初から諦めずに、まずとにかくやってみよう、という雰囲気ができつつあります。」同社では、社員の互選によってそうじの力のリーダーとサブリーダーが任命され、彼らが取り組みを引っ張ってくれています。リーダーの東さんに訊いてみました。――今、社内はどんな状況ですか?東「とにかく雰囲気が明るくなりました。」「弊社は時期によって受注の波が大きく、非常に納期がタイトな時もあります。当初は、『そうじをするくらいなら仕事を優先した方がいい』という否定的な意見も多かったんです。リーダーの私が『やろうよ』と言いづらい雰囲気がありました。」「今はみんな、朝のそうじの後や研修後などに前向きなコメントが出るようになりました。」「環境整備の進んだ会社はたくさんあると思いますが、前向きな姿勢だけは私たちも負けていないと思います。」――ご自身の変化はいかがですか?東「当初に比べて、みんなの意見を素直に聞けるようになりました」「先日、駐車場にゴミが落ちていて、一度通り過ぎたのですが、ふっと小早さんのことが頭に浮かび、戻ってそのゴミを拾っていました。」東さんと共にみんなを引っ張っていってくれている元気者のサブリーダー笠原さんにも訊いてみました。――どんな点が良かったですか?笠原「まず、機械や台、床などがきれいになったことです。以前はインクで汚れているのを、『そういうものだ』と思っていました。それらを取り除くことで、もっとキレイにしたい、と思うようになってきました。」「一番良かったと思うのは、みんなで楽しく一つのことに向えている、ということです。『やるからには楽しく!』です。」「明るい、というのがウチの良さだと思います。なにせ社名がfineですから(笑)。」筆者が見ていても、もともと明るかった社風が、さらに積極的に前向きになってきているのを強く感じます。最後に、藤井社長に今後の抱負を訊いてみました。社長「ここ鯖江には、(株)ムラケンという環境整備の先進企業があります。そのムラケンと共に、弊社も環境整備の第一人者になりたい。」「私はボランティアで子供たちにバスケットボールを教えているのですが、そうじの力を子供たちにも伝えていきたい。それを通じて子供たちの成長を支援していきたいと思っています。」      (小早)おそうじ匠の技そもそも「汚れ」とは何か? 〈敵を知り、己を知れば・・・〉~「そうじ」を定義する~技術的側面からそうじのコツをお伝えする新シリーズの第2回目。今回からちょっと趣向を変えて、そうじに対してマニアックなほど細かい部分から「そうじの力」目線でアプローチをしていきます。今回は、そもそも「汚れ」ってなぁに?を考えたいと思います。さて、掃除の言葉の意味を辞書で調べてみると「掃除」=はいたりふいたりして、ごみやほこり、汚れなどを取り去ること。(大辞泉) だそうです。これは、わかりやすいですね。ごみは不要なものや役に立たなくなったものだし、ホコリはまさにあのモコモコとしたホコリです。それに汚れは…、「あれ?汚れって?」調べると 「汚れ」=汚れること。汚れた箇所。汚染。(大辞泉) となっていました。「??? そのままじゃん!」辞書の機能を果たしているのかを疑いたくなるほどそのままで、これじゃぁいったい何のことかさっぱりわかりませんよね。なので、「そうじの力」として「汚れ」を定義して皆さんと共有したいと思います。たとえば、お醤油は、醤油さしの中にある時や、醤油皿の上にある時は、調味料としてしっかりと役割を持った「醤油」ですが、いったんテーブルの上や床にこぼれてしまうとその瞬間から汚れになります。モコモコとした綿ボコリなどは、主には繊維から出る細かい糸屑です。布団や衣服である時には本当にありがたい存在ですが、そこから離れ空中に飛び出した瞬間に空気や床の汚れとなります。これらの例を踏まえて定義をすると、「汚れ」とは「そこにあるべきものではないもの。」です。そしてそのことから逆に「そうじ」を定義すると、「そうじ」とは「そこにあるべきものだけにすること。」となります。このように定義すると、かなりすっきりして、どのような活動を行えばよいのかもイメージが湧くのではないでしょうか?たとえば、機械や道具、什器、備品、家具、衣類などという大きな物。それらがもし、使われていないもの、使うあてのないものだったとしたら、それは「そこにあるべきではないもの」ということになります。こうしたものを処分することを「整理」と言います。いっぽう、デスクの上に砂ボコリがついているとします。このままでは手や書類が汚くなってしまいますから、やはりこれも「そこにあるべきではないもの」ということになります。これらを取り除くことを「清掃」と言います。上記のように、対象物が何であるかで、そうじに使う道具や洗剤、段取りが違ってきます。次回以降、対象物別に細かくそうじの方法を考えてみます。                    (飯塚) 活動報告すべてはリーダーの決意次第 〈仕事以前の基本的なこと〉~公開セミナー報告~去る三月十六日、高崎商工会議所の会議室をお借りして、「そうじの力で会社が甦る!」と題して経営者向けの公開セミナーを開催いたしました。 定員二十四名のところ、二十七名もの方々にご参加いただき、超満員で活気あるセミナーとなりました。 二時間のセミナーにおいては、?キレイな会社と汚い会社の違い?「そうじの力」とは何か?さまざまな改善事例?具体的導入方法、などをご説明させていただきました。 参加者のアンケートから、掲載のご許可をいただいたものの一部をご紹介させていただきます。 「すべてはトップリーダーの腹です」とのこと・・・、その通りだと思います。ひるまず、ブレず、あきらめずにやっていこうと思います。(江畑晴彦様) 何日か前に小学五年生の息子が自分の机の上を自主的にきれいにしていて、それから宿題もよくやっています。やはりきれいにするとやる気が出るのですね! (SU様) 気づいた時にすぐ掃除を行うという言葉がとても参考になりました。自分の机の上は現在、物がつみ重なっていますが、会社に戻ったら掃除を行いたいと思います。(SE様) 当社でも取り組んでみたいと思います。事務所と倉庫の整理、整頓、清掃。まず、社長、役員から実践する。(O様) ラーメン屋の店主の話は納得しました。仕事場はもちろん、自宅もキレイにしてみます。(N様) 最後のN様の「ラーメン屋の店主の話」とは、こういうことです。 環境整備を社内に導入しようとすると、必ず社員から返ってくる反応があります。 「言っていることは分かる。自分もやりたいと思う。でも仕事が忙しい。仕事とそうじと、どっちが優先なのか?」という反応です。 そのようなとき私は、「みなさんがラーメン屋の店主だったら、どうしますか?」と問いかけることにしています。 ラーメン屋はおいしいラーメンを作って提供することが仕事です。 しかし、その店内が汚れていたらどうでしょうか?お客様はまた来てくれるでしょうか? お客様に不快な思いをさせてしまっては、仕事どころではありません。 どちらを優先させるか、という質問そのものが愚問だと思います。   (小早)飯塚輝明の 輝け!中小企業会社が楽しくなる!  ~リーダーになると世界が広がる~以前に勤めていた清掃用具販売会社で常務として私が環境整備の総リーダーに就任し、プロジェクトが進行する中で、私自身がリーダーとしてやっていく自信が持てた上に、『会社に行くのが楽しく』なってきた、というのが前回までにお話ししたことです。 私は、三人のサブリーダーとチームを組んでプロジェクトを進行していました。 私自身がリーダーとしての楽しさを覚えたのとほぼ同時期に、三人のサブリーダーにもそれぞれ変化がありました。 プロジェクトの計画書をチームで共に作ると、各サブリーダーがそれぞれの班に持ち帰り、ミーティングの設定や班員への伝達をし、自分の言葉で班員に協力を仰がなくてはなりません。 本業とは違う活動なので、職制上の立場でものを言うわけにもいかず、仕事の合間でやることなので、本人たちも戸惑うことが多かったと思います。 言葉だけで「常務(私)がやれっていうからさぁ、みんななんとか頼むよ~」なんて姿勢であったなら全く班員の協力を得られなかったでしょう。 幸いにも三人のサブリーダーは、前向きに取り組みました。 汗をかいて準備をし、情熱と感謝をもって語りかけることで、自らの班を動かし、ミッションを達成することを体験しました。 素直なリーダーほど、リーダーをやることによって得られるご褒美の意味に早く気づきました。 それは「自ら働きかけることによって世界は変わる」という事を実感できたことです。 それを実感できたサブリーダーから順番に、この環境整備プロジェクトが、常務(私)からの「やらされごと」ではなく、楽しみな「自分ごと」に変わって、活動に加速度をつけてくれました。 あらためて、人間にとって一番楽しいこととは、『仲間と共に成長できる』ことなのだと思います。 これらのことを体験して、私自身がリーダーをやれることの喜びが身に染みましたから、できるだけ多くのメンバーにリーダーをやってもらう事を決めました。 それは、その後の活動の中で、リーダーの輪番制やリーダーの任期制などに活かしていきました。 リーダーの任期は一年とし、私の後にはサブリーダーたちが順繰りにリーダーになっていきました。 のちに彼らは、業務の上でも部長になり、会社の中心となって活躍することになるのです。             (飯塚)今月の読書から『金賞よりも大切なこと』コンクール常勝校 市立柏高校吹奏楽部~環境整備はおもてなしの心~私は知らなかったのですが、吹奏楽の世界では、柏市立柏高等学校の吹奏楽部は、スター的存在なのそうです。 高校生としての数々のコンクールで金賞を総ナメにするにとどまらず、地域での公演活動やテレビ出演、果ては招待されての海外公演も数多くこなしているとのこと。必ず3年間で入れ替わる高校生、しかも公立高校であることを考えると、指導者が相当な人物であるだろうことが想像できます。この本は、同部の指導者である石田修一氏と同部に密着取材して書かれたドキュメンタリーです。私がもっとも共感したのは、同吹奏楽部の目的は決して金賞を取ることではなく、あくまでも「人間教育」である、という点。そしてそのために同部では、いわゆる環境整備を非常に重要視している、という点です。彼らはコンクールや演奏会の後、ステージや演奏会場を丹念に清掃するそうです。また、普段から音楽室や廊下などにゴミが落ちていると、誰が指示することもなく見つけた生徒がそっと拾う、とのこと。さらに、靴を脱ぐ場面では、総勢200名ほどの部員の靴が、見事に揃えられる。極めつきは、演奏会の舞台裏の楽屋で、空になった楽器ケースが「不気味なほど揃えて」並べられている、という話。そこには常に、石田氏の「人に不快な思いをさせないように」という指導があるといいます。また彼らは、演奏しながら踊るなどパフォーマンスする場面があるのですが、その際の指導は、手足の上げ方を、まるで分度器で角度を測定して、2度以下の誤差に収めよ、というくらいに厳しいもの。その理由は、「お前たちの踊りによって、お客さんが幸せな気持ちになれるかどうか。」「だから、現実離れしたようなすごい踊りや演技を見て、何か夢心地に浸っていただくんだよ」「あの人の腕の角度が揃っていない、と感じさせたら、そのお客さんを一気に現実に引き戻してしまうんだよ」ということ。このくだりを読むと、環境整備とは、自分たちが気持ち良いように、作業しやすいようにするためのものであると同時に、他者に対する気遣い、つまりは「おもてなしの心」である、ということを理解することができます。このように、彼らはバックステージ(裏)での行いを非常に重視しています。「裏は客席から見えないがゆえに、そこでは彼らの精神性、まさに彼らの心もまた重要な意味を帯びてくるのである。すなわち目立たない場所で人のために自分がいかに役立てるのかというような心を個々人がどれだけ素直に持てるかどうかである。」「人としてのこの生き方や心だが、実は演奏者の発する音楽を大きく左右してしまう。音楽を聴く人は演奏されるその音や音楽からだけでなく演奏する者の背後に感じられる奥行きや広がりを精神性として、あるいはその人の生き方として同時に感じ取るものだからである。」彼らを大いに見習いたいものです。   (小早)お知らせ◆創業道場特別編経営計画コンベンション 自社あるいは個人の経営計画をA4用紙1枚にまとめ、一人10分の持ち時間でプレゼンテーションする場です。 まだ若干の参加枠が残っています。 また、オブザーバーも募集します。若い創業者の発表は、経営豊かな経営者が聞いても刺激になります。 ぜひ応援にいらしてください。【日時】 4月4日(水) 9:00~12:00【場所】 高崎市産業創造館【費用】 3,000円(昼食代、資料代込)【主催】 NPO次世代型人材育成ネットワーク <昨年参加者の声> 昨年の資料冊子は机の中に入れて、苦しくなると開いて眺めていました。その時の写真や各自の資料を見ては、自分を鼓舞していたのを思い出します。(?草むしり 宮本成人さん)   ◆小早祥一郎が講話します倫理法人会モーニングセミナー 弊社も加入している倫理法人会のモーニングセミナーで、小早が講話をさせていただきます。 タイトルは「そうじの力で会社が甦る」 わずか40分の講話時間なので、かなりのダイジェストになると思いますが、精いっぱいお話させていただきます。 早朝の勉強会は、一日を気持ち良くスタートさせてくれます。【日時】 4月6日(金)AM6:00~7:00【場所】 パークホテル楽々園       群馬県前橋市敷島37【費用】 無料(食事会は実費)【主催】 前橋しきしま倫理法人会 当日、直接会場にお越しください。 ◆群馬100kmウォーク草むしり宮本さんがまたやります!  私の友人であり、公園のトイレそうじ仲間でもある(株)草むしりの宮本成人さん。 仕事にもプライベートにも常にがむしゃらに取り組む彼が、昨年から開催している「群馬100kmウォーク」を、今年も開催するそうです。 小早は仕事の都合で参加できませんが、ご希望の方は、直接宮本さんまでご連絡ください。【コース】ニューイヤー駅伝と同じ【日時】 4月21日(土)AM6時群馬県庁前スタート~22日(日)正午までに県庁前ゴール(昨年実績28時間40分)【連絡先】miyamotoshige@gmail.com編集後記親心がアダに・・・ 息子は、いつの頃からか坊主頭がトレードマーク。髪が伸びてくると、私がホームバリカンで刈ってやります。 長さは6mmが見た目も快適性も「持ち」もベスト。 まず全体を6mmのアタッチメントをつけて刈ります。 次に、後ろや横の裾を3mmのアタッチメントに付け替えて整えます。こうすると自然な仕上がりになるのです。 先日、刈ってやっていた時のこと。 終盤に差し掛かり、頭頂部に少し長い髪があったので、バリカンで整えた時に、「アッ!」と気づきました。 アタッチメントを3mmにしたままだったのです。仕方ないので、全部を3mmに刈り直しました。 ちょっとまだ寒いかなぁ・・・。               (小早)輝ちゃん日記洗濯物の森 毎年のことながら、冬の寒さが緩んで暖かくなるのを感じるのはうれしいものです。 ところがこの時期、私たち一家にとっては悩ましい季節の到来ともいえます。 一家全員が花粉症の我が家では、この時期には洗濯物を外へ干すことができなくなります。 まさに洗濯日和の晴天なんて、なおさら危険な日だったりします。 その結果がこの写真。 我が家のリビングには所狭しと洗濯物がぶらさがり、さしずめ「洗濯物の森」の様相です。            (飯塚)株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(5S=規律・清潔・整頓・安全・衛生)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。現状調査(診断)やご相談は無料です。全国どこでも出張が可能ですので、お気軽にお問い合せください。