【第87号】見た目を変えれば意識が変わる|(株)ダスキンせらい
事例紹介見た目を変えれば意識が変わる 〈即決即行の行動力が変化を創り出す〉~ダスキンせらい 環境整備活動~山口県光市のダスキンせらい。同社は確固とした企業理念を基に経営を行っており、瀬来清美社長も大変に誠実で勉強熱心な方です。数年前から環境整備活動に取り組んでいましたが、この春から弊社がお手伝いに入りました。さすがにそうじの専門会社だけあって、床などはピカピカにきれいです。ただ、じっくりと見ていくと、改善すべき課題がたくさん見えてきました。同社の一番の問題点は「モノが多い」ことです。デスクの上は、書類が山と積まれています。壁には貼り紙がベタベタ貼ってあります。棚の上にもたくさんのモノが乗っています。在庫品も無造作に積まれています。もともと良い会社ではありますが、意識を変え、会社を変革していくためには、象徴的な取り組みが必要だと感じました。私は、「とにかくまずモノを減らしましょう」とアドバイスしました。モノを少なくする効用は多岐にわたります。①どこに何があるかが分かりやすくなって、探す時間が減る。②場が広くなり、作業がしやすく安全性も向上する。③気分がスッキリする。ゴチャゴチャした環境では、頭の中もゴチャゴチャしてしまいます。この活動を進めるにあたり、社内に委員会を設置しました。委員には、あえて若手を登用して、新鮮な感覚を活動に生かしてもらうことを期待しました。象徴的な取り組みの一つが、壁に貼ってある掲示物の撤去です。むろん、掲示物は「見てほしい」という思いを込めて掲示されているものです。しかし数が多くなると、いつしかそれらが「景色」と化してしまい、誰も読むことなく本来の役割を果たせなくなってしまうのです。「掲示物をはがしてみませんか?」と投げかけてみたところ、委員のほぼ全員が、「そうですね、はがしましょう!」と同意してくれました。多くの場合、「そうは言っても、これは○○なので・・・」という抵抗が返ってくるものですが、この反応の前向きさに、こちらがびっくりしてしまいました。もっと驚いたのは社長の行動です。議論をしている最中に、いきなり立ち上がり、壁に掲げられていた掲示物をその場ではがしていったのです。おおっ!男らしい!こうした取り組みで大切なのは、「例外を作らない」ということです。例外を一つ作ると、いずれたくさんの例外が生まれてくるからです。そのような話をしたところ、社長が、「じゃあ企業理念もはがしましょう」ということになり、本当に企業理念が書かれたパネルをはがしてしまったのです。とはいえ、やはり掲示が必要なものもあります。一旦すべてはがした上で、吟味して戻すべきものは戻したら良いのです。企業理念パネルも、元の鞘に収まりました。もうひとつの象徴的な取り組みが、「パーテーションの撤去」です。同社のデスクにはパーテーションが設置され、同僚の顔が見えないようになっています。「集中できるんです」という意見は少なくありません。確かにメリットもあるでしょう。しかし、物理的に風通しが悪いと、実は心理的な風通しも悪くなるのです。モノの壁はココロの壁を作ります。遮るものがなければ、コミュニケーションは格段に良くなります。まあ、「真正面に座っている人のハナ毛が気になる」、というデメリットはあるかも知れませんが・・・(笑)。このパーテーションの撤去についても、委員からは「ない方がいいと思う」「取ろうよ」という意見が相次ぎ、あっさりと撤去されました。他の社員からも、「事務所が広くなった」「明るくなった」「人の顔が見え、コミュニケーションが取りやすくなった」とおおむね好評のようです。提案を素直に受け入れる力、すぐに実行に移す力、変化を創り出していく力。こうした力を、同社の社長と社員さんたちは有しています。逆の見方をすれば、環境整備活動を通して、こうした力を養っていくことができると言えましょう。 (小早)そうじにおける「水」の役割とは?~水の功罪~そうじにおいては、水の持つ「モノを抱く力」が活躍します。 普段私たちが接する水の中には、H2Oとしての水以外に鉄分やカルシウム、酸素や塩素、そのほかにもタンパク質や菌など、さまざまなモノが溶け込んでいます。水とは交わらぬ油だってある程度の量は取り込めます。 そのような力が水の「モノを抱く力」です。水の「モノを抱く力」は強力です。そうじにおいてはこの「モノを抱く力」を利用して、汚れを水に抱いてもらった上でよそへ運びます。 わかりやすい例が雑巾がけです。雑巾に含まれた水の中に汚れを取り込み、そこから除去するのです。また、水はモノだけでなく熱を運んだりもします。熱の作用によって汚れを落とすなど、そうじの現場では重宝します。 しかし、物事には良い面があれば必ず悪い面が存在します。水の場合、水分が蒸発すると抱えていたモノをすべて吐き出します。例えるなら、水という「運び屋」が荷物を全部残して消えてしまった状態ですね。この時に残された荷物が「水アカ」とよばれるものです。水の「モノを抱く力」が強力なだけに、残される荷物の量も意外と多いのです。 また、水が蒸発しないでそこにとどまり続けることでも悪いことが発生します。水の中に含まれている有機物が分解されて菌が繁殖し異臭の原因となります。 私たちは水はきれいで清潔なものと思い込んでいます。しかし「モノを抱く」役割を終えたのちに不必要にとどまる水には害の部分もあるのです。 水は便利なものですが、残った水気は、いつもきれいにふき取ることが、そうじをうまく行うコツです。 (飯塚) <補足解説>飯塚の説明どおり、そうじにおける水の役割は大変に大きいものです。よほどのギトギトした油汚れでもない限り、私は「雑巾とバケツと水」だけでそうじすることを勧めています。ここで重要なのは、すすいだ雑巾をしっかりと固く絞ることです。多くの方の絞り方は甘いので、拭いた跡が残り、カビくさい臭いが発生してしまいます。よく「乾いたぞうきんをさらに絞る」などと言いますが、それくらいで良いのです(笑)。水が汚れを抱えてくれるわけですから、拭いた後の雑巾をしっかりと洗うことも重要です。拭いたぞうきんをそのまま洗濯機に入れるケースを見かけますが、まずはバケツの水で手洗いしましょう。手洗いすることで、「丁寧に作業する」習慣が身につきます。よく私は、雑巾の手洗いの合格基準は「その雑巾で自分の顔が拭けること」と申し上げています(笑)。そうすれば、雑巾にも愛着が湧いてきます。 (小早)おそうじコラム『率先垂範』の罠(わな)~そうじは「バンドやろうぜ!」のノリで~先日、ある企業を訪問した時のことです。以前に私の公開セミナーを受講してくれた社長さんが経営する会社で、おそうじ活動に興味がある、というのでお邪魔しました。 行くと、ちょうど社員を集めたミーティングの最中で、社長が「そうじをするといろんなことに気づく」「間違いなく品質が上がる」ということを説いておられました。 そのあと、ざっと社内を見学させていただきました。現在、全社をあげて少しずつ社内をそうじしているとのこと。同社は食品工場だけあって、さすがに工場内はきれいにしています。 しかし、工場の裏手、社員駐車場の周辺は、草がボウボウで、不要物とおぼしき物も多数放置されています。 私は社長に申し上げました。「これはマズイですよ」と。「そうじは大事だ」と説いておきながら、裏は汚い状態を放置しておくと、社員に「見える部分だけそうじすればいいや」という「裏・表」の意識を植え付けてしまいます。 事務所も書類や物が多くてゴチャゴチャしています。私は、「まず社長ご自身が実践しないと・・・」と進言しました。 その時社長は苦笑いしながら、「やはり率先垂範ですね」とおっしゃったのですが、私はその言葉に違和感を覚え、「率先垂範というのとは、ちょっと違うのです。あくまでも社長ご自身の課題としてやるべきだと思います。」と補足しました。 社長は「ちょっと意味するところが分かりません」とおっしゃったのですが、その時には私はうまく説明できませんでした。 今なら説明できます。「率先垂範」という言葉には、部下にやらせることを目的として、まず自分が背中を見せる、というニュアンスが含まれているように思います。しかしそれだと、部下がやるようになったら自分はやらない、ということになりはしないでしょうか。 そうじの活動とは、そのようなものではありません。社長を含めた全員が、あくまでも自分自身の活動として、仲間と一緒に取り組むものです。 言うなれば、「バンドやろうぜ!」というノリだと思うのです。「俺はギターやるから、お前はドラムやれ!」と。 もしやる気満々のメンバーが集まり、「社長はもうギター弾かなくていいです」と言われたら、つまらないですよね(笑)。「頼むから、俺からそうじする楽しみを奪わないでくれ!」という状況になったら、最高ですね。 (小早)輝ちゃんはミタ!トップリーダーの背中にそうじの力をミタ!下の写真は、弊社の支援先である㈱小河原建設様で、床清掃の実習を行った際の一枚です。 狭いエリアに限定して床を短時間でワックス塗布まで行うという内容の実習だったのですが、写真の奥で床を磨いている方は、同社の小河原敬彦社長です。 小早は常々「トップリーダーたる社長が、絶対に環境整備をやりぬくと覚悟して、自ら取り組まなければ、成功しません」とどんな場面でも申しております。同社での取り組みを見ておりますと、まさにその通りなのだなと思わされます。 写真からも感じて頂けると思いますが、率先して取り組まれる小河原社長の背中からは、はっきりとその覚悟が伝わってきます。 小河原建設様は、弊社が支援している会社の中でも、もっとも取り組みが進んだ会社の一つです。環境整備という難しい課題に、社員の皆様を巻き込み、会社全体の取組としてプロジェクトを進行させる原動力は、トップリーダーの姿勢こそだと改めて教えて頂きました。 そんな小河原建設様で先日、会議室に貼ってあった一枚の掲示物にあるメッセージを発見して驚きました。 その掲示物の右下の行には「九月一四日迄掲示予定 社直し委員会」と記載がなされていました。 このメッセージの意味は「期限を過ぎたものであれば、気づいた人が誰でも処分できます」なのだそうです。この一文があるだけで、社内から不必要な掲示物が一掃されます。 このような細かな配慮が実践されている後ろには、相当な量のコミュニケーションが社内で行われていることが推察されます。 そうじを切り口に、何度もミーティングや実践を積み重ねてきた小河原建設様の皆様ならではの配慮を感じました。このような質の高いコミュニケーションや仲間や相手を思いやる気持ちを育むものが、いつも小早が言わんとする「そうじの力」なのではないでしょうか。 小河原社長の背中かから発せられた強い覚悟と小河原建設様の皆様から感じられる配慮の中に、間違いなく「そうじの力」が息づいていることを教えて頂きました。 (飯塚)今月の読書から『日本の国境問題』孫崎享著~日本の取るべき外交戦略は「役立ち力」~著者の孫崎氏は元外交官で防衛大学校の教授も務めた理論派の論客。 私は以前に孫崎氏の『日本人のための戦略的思考入門』を読み、大いに感銘を受けました。そもそも「戦略」とは何か。そして日本が取るべき戦略とはどのようなものか、非常に丁寧に書かれており、こちらもおススメです。 さて今回ご紹介する『日本の国境問題』は、まさに今ホットな領土問題が主題。 これを読むと、尖閣諸島、竹島、北方領土が、そもそもどのような経緯で今のように中国、韓国、ロシアと紛争になったのかがよく分かります。 ところで本書の中で、参考事例としてドイツの領土問題が取り上げられています。第二次世界大戦後、敗戦国ドイツは大幅に領土を削られたにも関わらず、あえてそれらを取り戻そうとせず、根本的な戦略転換を行います。それは、「領土拡大」というハード主義から「影響力拡大」というソフト主義への転換です。 ドイツはフランスなどと協力してEU成立に力を注ぎ、現在でもEUの中心国として大きな影響力を保っています。いわば、「影響力による安全保障」です。 一方の日本はどうでしょうか。軍事大国中国は何百もの核兵器を保有しています。もし仮に日本が核武装したところで、1発や2発ではとてもかないません。また、中国のGDPは2010年に日本を追い抜きましたが、人口の多さからいって、総力としての経済力では日本が中国を上回ることはもうないでしょう。 私は、日本の取るべき外交戦略は「役立ち力」だと思います。「役立ち力」とは目に見えない力ですが、それを提供することで相手国が、「日本がいてくれて助かった」と思ってくれるような英知です。 それは、科学技術や文化・芸術、教育、観光などかも知れません。私は「そうじの力」も、実は大きな「役立ち力」のひとつではないかと思っています。 たとえば、私はゴミ拾いを子供たちと一緒にやったりしていますが、近所のおじさんおばさんたちが「ご苦労様」「いつもありがとう」と声をかけてくれます。我が家を好意的な視線で見てくれているので、子供たちが一人で出歩くときも、ご近所が見守ってくれているという安心感があります。 いわば、「そうじの力による安全保障」です。このことがすぐに領土問題の解決につながるかどうかは分かりませんが、あらためて周辺国との関わりを考えてみたいものです。 (小早)◆本物の経営計画を作る!ワンデーIATセミナーin沼津 私の師匠でもある社会教育家の黒田悦司氏が講師を務めるセミナーです。 具体的な事業計画を立てる前の経営者の意志を固めることを目的とします。 IATという特殊な思考技法を用いて、自分自身とじっくりと向き合います。 私(小早)も、黒田氏のIATセミナーを受講したことが契機で、独立することができました。 日時:10月23日(火)時間:9:00~18:00会場:沼津インターグランドホテル 1F小会議室(沼津市岡一色526-1)会費:15,000円(昼食代含む)申込:事務局 森川 剛存 様 TEL:090-5621-6573 ◆創業道場開催10月の参加者募集 お互いに切磋琢磨しながら経営力を高める少人数の勉強会です。 「創業」という名前がついていますが、参加者はベテランから独立予備軍まで、業種、年齢も様々。 原則、毎月開催していますが、10月の参加者を募集しています。【日時】 10月3日(水)AM6:00~12:00【場所】群馬県高崎市内【内容】そうじ実習(北三公園トイレ)、 経営計画の発表と検証【講師】須田知身、小早祥一郎【費用】1,000円【主催】NPO次世代型人材育成ネットワーク【申込】事務局 赤石 陵勇 様 info@sogyodojo.jsz.jp◆小早 祥一郎 講演予定・福井県の高校生に向けて 【日時】 10月18日(木)12:00~ 【場所】福井県立金津高校 【主催】同校PTA・女性経営者に向けて 【日時】 10月25日(木)18:00~ 【場所】ホテルメトロポリタン高崎 【主催】高崎おかみさん会・福井県の一般市民の方に 【日時】 11月18日(日)14:00~ 【場所】福井県鯖江市内 【主催】(株)ムラケン・倫理法人会モーニングセミナー 【日時】 11月28日(水)6:30~ 【場所】箱根湯本ホテル 【主催】小田原市倫理法人会株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(規律・清潔・整頓・安全・衛生)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。現状調査(診断)やご相談は無料です。全国どこでも出張が可能ですので、お気軽にお問い合せください。