【第90号】ルールを決める、守る|税理士事務所2社

事例紹介ルールを決める、守る 〈例外を作らないことがリバウンドを防ぐ〉~税理士事務所の事例~現在、二つの税理士事務所の「そうじの力」活動のお手伝いをしています。ひとつは、香川県高松市の生駒学税理士事務所。挨拶や朝礼の強化による社員力の向上につとめ、各種経営セミナーの実施によりクライアントのお役立ちに努めている、高松においては大きな事務所です。そうじについては、数年前にも取り組んだそうですが、その際にはあまりうまくいかず、今回、弊社にお声掛けをいただきました。私が最初に同所に訪れた時の状況は、あまり良い状態ではありませんでした。各人のデスクの上には書類が山積みされており、床の上にも段ボールに入った書類が置かれていました。別の階に倉庫があるのですが、そこにも書類や備品が溢れかえっていました。「そうじの力」活動は、原則に従ってまず「整理」、つまり不要なものを捨てることから始めました。税理士事務所が扱う書類は、法令上、一〇年間の保管が義務付けられているのですが、倉庫には一〇年以上前の古い書類がたくさん大事にしまってありました。それらの保管期限が切れた書類を、すべてシュレッダー処理または溶解処理しました。また、今では使っていないデスクやイス、ソファなどもホコリにまみれていたので、欲しい人がいれば譲り、それ以外は処分しました。また、あらためて、事務所としてどんな書類があるのかを全部リストアップし、それらの保管場所と保管期限を明確にしました。今まで、書類の種類別だったり、顧客ごとだったり、意外にも統一されたルールのないままに書類が保管されていたのですが、それらの統一ルールを作りました。さらに、税理士事務所の場合、お客様からお預かりする書類が多数あり、これがフロアを乱す原因になります。この預かり書類を、フロアに置かずに、専用の棚を設けて、そこに必ず置く、というルールにしました。これでデスクの上、床の上ともに書類がなくなり、スッキリしました。それでも、繁忙期においては、大量の書類を預かることになるため、棚に収まり切らない書類も出てきます。そんな時に、なし崩し的にデスクや床の上に置き始めると、もう秩序は保てません。なので、どうしても収まり切らない書類については、「そうじの力」委員会に申請をして許可を得たものだけが置ける、というシステムにしました。こうして、どこに何を置くのか、何年保管しておくのか、収まり切らない場合にはどうするのか、というルールを詳細に決めたことで、スペースに余裕ができただけでなく、社員さんの頭の中もスッキリしたはずです。一方、群馬県高崎市のひかり税理士法人。こちらも朝礼や挨拶に力を入れている、勉強熱心な会社です。二年ほど前に弊社がお手伝いして「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の取り組みを行いましたが、今回、その第二弾の取り組みを行いました。同社においても、お客様からの預かり書類がデスク上や床上にあふれている状態でした。あらためて、どんな書類があるのかすべてリストアップし、それぞれの保管場所と保管期限を決めました。また同社には、顧客ごとに「お客様BOX」というのがあって、書類が収められているのですが、パンパンに詰まって盛り上がっているBOXもありました。BOX内に何を入れるかは担当者の裁量だったのですが、今回、BOXに入れるべきものと入れるべきでないモノを明確にしました。これで、BOXが溢れることはなくなりました。今回の一連の研修を終えて、委員会メンバーたちは、「日々の心がけが大切だと気づいた」「フロアの状況を変えたいと思っていたが、こうしてルールを決めたことによって変えられたのが嬉しい」などと感想を述べていました。あまりに事細かにルールを決めると堅苦しい、という人もいます。しかし、ルールが決まっていなければ、そのたびごとに指示したり指示されたりしなければなりません。ルールが決まっていれば、そのルールに則って、自分で判断することができます。スポーツでもそうですが、ルールが明確だからこそ、自分のオリジナリティーを発揮できるのです。  (小早)年末年始のご挨拶そうじの力をより多くの方々に~そうじの力「道場式」普及構想~毎年のことではありますが、本当に一年というのは、あっと言う間に過ぎていくものだなあ、と感じます。 二〇一二年も大変にお世話になり、誠にありがとうございました。 おかげさまで、弊社の支援先も、群馬、茨城、新潟、東京、愛知、岐阜、福井、山口、島根、香川に広がり、業種も、税理士事務所、金物屋、食品工場、工務店、おしぼりレンタル屋、鋳造メーカー、眼鏡専門印刷業、材木店、自動車学校、給食センターと、多業種にわたるようになりました。 ご支援した企業における成果としては、「離職率が下がった」「不良率が下がった」「原価が低減した」「残業時間が減った」「求職者が増えた」「若手からリーダーが育ってきた」「コミュニケーションが活発になってきた」「改善提案が増えた」「前向きな発言が増えた」など、目に見える効果、見えない効果を含めて、様々なご報告をいただいております。 「そうじの力」が、単に物理的に環境をキレイにするだけでなく、社長をはじめ社員さんたちの「人間力」を高めるのに役立っていることを実感しています。 しかし一方で、課題もあります。「チョイ置きがなくならない」「熱心に取り組む人とそうでない人の温度差がある」「やらない社員は相変わらずやらない」といった状況も、残念ながら散見されます。 弊社の支援内容の質を、もっともっと高めて、こうした状況を改善していきたいと思います。 いずれにしても、この「そうじの力」を、より多くの企業に、より多くの方々に広めていきたいと考えています。 ただ、弊社のみが啓蒙活動をしたり、現場でのアドバイスをしたりするだけでは、色々な意味で限界があります。 どのような形で普及していくのがベストなのか考え、妙案が浮かびました。 今現在、弊社がご支援している企業のレベルをもっと上げて、それらの企業が、地域や業界の他の企業に啓蒙し、具体的アドバイスもしていくやり方にしていきたいと思います。 今現在ご支援している企業には、そうじの力「支部」になっていただきます。それだけでなく、各社の社員さんの中で、熱心に取り組み、成果も出ている方々に「段位」を認定発行します。 有段者は、単独で他社にアドバイスをすることができます。場合によっては、「そうじの力」専業で独立する人も出てくるかも知れません。 このやり方を、「道場式」普及システムと呼びたいと思います。 私は柔道と合気道の経験があるのですが、そこからヒントを得ました。こうした武道は、どのようにして世の中に普及していっているのでしょう。 まず創始者がいます。弟子を育て、優秀な弟子に段位を認定発行していきます。やがて有段者の中から、意欲、実力ともに十分な人が自分の道場を開き、そこでまた弟子を育てていきます。その弟子の中からまた新しい道場を開く人が出てきて・・・、という繰り返しです。 「そうじの力」も、こうしたシステムにより、より多くの優秀な指導者と、より多くの愛好家(笑)を輩出していきたいと考えます。 このシステムの良いところは、まず、支部および有段者が、それぞれの経験を基に、導入企業の目線でアドバイスができるということ。 そして、弊社が直接関わらずとも、自立的に「そうじの力」が世の中に広がっていくことができるということ。 さらに、各企業から、その企業の枠を越えて活躍できる人材(=有段者)が育つ、ということです。 「そうじの力」有段者は、単に整理・整頓・清掃のアドバイスができるということに留まらないはずです。彼らは、目的・目標を持ち、計画を立て、自ら取り組み、周囲に渦を巻き起こし、ひとつの物事を成し遂げていった人たちです。つまり、色々な場面で「和的な」リーダーシップを発揮できる人たちなのです。 こうしたリーダーたちが世の中に溢れていったとしたら、この日本はどんなにか活性化することでしょう。 彼らの活躍により、企業や地域がキレイになるのみならず、問題提起や創意工夫により、新たなコミュニティー活動が生まれたり、新たなビジネスが立ち上がったりするかも知れません。 考えただけでもワクワクします。 新たな二〇一三年は、この「道場式」普及システムの整備・確立に力を注ぎます。 二〇一三年中に、支部が数か所誕生する見込みです。また、数名の方に初段が認定されるでしょう。 読者の皆様の元にも、各支部から派遣された有段者の方がお邪魔し、アドバイスさせていただくことになるかも知れません。 二〇一三年も、「そうじの力」をどうぞよろしくお願いいたします。   (小早)輝ちゃんはミタ!「締りのない雰囲気」の正体を見た!先日、ある支援先で、ミーティングに参加するメンバーの集まりが悪い時がありました。 その日の予定では、三時からプロジェクトメンバーのミーティングがあり、当然に事前に参加メンバーには知らせてありました。ところが三時になってみると、参加予定メンバーの半分ほどしか集まりません。 社長が、時間通りに集まったメンバーに「○○さんは出られるの?」「△△さんは?」と確認を取りました。聞いてみると「○○さんは出られないそうです。」という返事がそれぞれにあり、結局参加予定の半分の人数でミーティングが始まりました。 この支援先企業様は、製造業なのですが、業績が良く工場は常に忙しく稼働しております。また、製造の状況によっては作業から抜けられなくなってしまうという事情はあるのですが・・・。 このミーティングに先だって小早と社長の面談では、社長から「現状は、なんとなく締りがない」とのボヤキもありました。くしくもそのように言及された空気が、ミーティングへの集合状況で露呈したようです。 小早は、「約束事を守れない風土は長年をかけて出来上がってしまった風土。トップリーダーが本気になって変えると決意しなければ変われない」と、強くアドバイスしておりました。 私は、この工場で小早が毎回のように指摘しながら改善されないあることが、気になっていました。それがこれ。各室の時計の時刻がバラバラなのです。 小早がよく引用する森信三先生の言葉「時を守り、場を清め、礼を正す」の「時を守り」とは、「約束を守る」とほぼ同じ意味だと思います。 現象面での時計の時刻がバラバラという状況は、「約束を守ることには執着しません」というメッセージを、意図しなくても発しているように受け取れます。 時計を合わせただけで約束を守る風土にすぐになるわけではないでしょうが、「我々は約束を守ることにこだわります」という姿勢は示すことができるように思います。 社長は、その日のうちに、さっそくすべての時計を合わせたそうです。  (飯塚)今月の読書から『完訳 太平記〈一〉~〈四〉』鈴木邑、上原作和、小番達 訳~歴史に乱世の生き方を学ぶ~太平記は、鎌倉時代から建武の新政を経て室町時代へと移行する、いわゆる南北朝の戦乱の世を描いた歴史書。 ある方から、「歴史を学ぶと大局が分かる」と勧められて、現代語訳を読んでみました。 後醍醐天皇の蜂起により、110年間続いた鎌倉幕府が、わずか4か月で崩壊してしまうところから物語は始まります。 体制の崩壊というものが、あっけなく訪れるのは、ソ連の崩壊を見ても分かるところですが、現代のアメリカによる支配構造も、意外にあっけなく終わるのかも知れません。 太平記を読んでみると、この時代はとにかくとんでもない乱世なのです。40年以上にわたって、合戦また合戦の日々。心休まる日が一日たりともありません。 驚くのは、武将や公卿、僧侶たちの節操のなさです。今日は北朝側で戦ったかと思えば、翌日には南朝側に寝返る。しかもその理由が、「褒美が少なかったから」とか、「誰々が自分より目立ったから」とか、ささいなことなのです。 まったくもってポリシーも信念もありません(笑)。彼らは目先の利益につられて立ち位置をコロコロと変えるのです。 なんだか、今の日本の政治の状況とよく似ています。前回の選挙では民主党が政権交代を成し遂げましたが、今回は自民党の圧勝でした。でも、きっと来年の参院選では、また反自民が巻き返してくることでしょう。 以下、この本の中で印象に残ったフレーズです。 〈おろかなるかな、関東の勇士。長年天下を保ち、全国津々浦々に威勢を及ぼしたものの、国を治める心がなかったために、すぐれた武器甲冑をそろえ、多くの兵を抱えても、そまつな棒や枝のたぐいによってむなしく打ちくだかれ、瞬時のうちに滅亡してしまったのだ。〉〈合戦の勝敗はかならずしも多勢・無勢によるものではない。ただ士卒が気持ちをひとつにして戦えるかどうかにかかっているのだ。〉 〈人に利益を与える者に対して天は必ずこれに幸福を与え、人をそこなうものに対して必ず罰を与える。〉 〈権力の頂点に立つ者一人が無欲になろうと思われるなら、それに応じて自然と多くの人々の欲心が薄くなるでしょう。人が欲深い気持ちで訴え出てきたならば、それは自分の欲を捨てきれないためだと自身を恥ずかしくお思いなされ。〉 結局、本当に世のため人のために働こうとする大義(使命感)を掲げ、それを着実に実践する実行力を備えたリーダーにしか、世の中を変える力はないのでしょう。 ちなみにこの本は、分厚いのが四巻セットで、合戦の描写が多いので、よほどの歴史好きか読書家でない限り、読むのはおススメしません(笑)。   (小早)お知らせ◆読者プレゼント!「そうじの力」スタッフジャンパー  「そうじの力」のロゴマークを胸と背中にあしらったスタッフジャンパー。 このスタッフジャンパーを読者の皆様にプレゼントいたします。 応募条件は、本『そうじの力だより』を3人の方に転送していただくこと。 ご希望の方は、3人の方に転送していただいた上で、お申込みください。◆CD無料頒布中小早 祥一郎 講演CD 群馬県高崎市の市立中学校で、小早が生徒に向けて『働くってどういうこと?』というテーマで講演した模様を収録した音声CD(約42分)です。小早の創業のキッカケ、現在の仕事の内容、「働くってどういうこと?」についての小早なりの見解、中学生として心がけて欲しいこと、などを話しています。「働くとは給料をもらうことではない」このフレーズが中学生の心に響いたらしく、後日、全員が熱い感想文を書いてくれました。ご希望の方は、希望枚数と送付先を明記の上、お申込みください。◆DVD無料頒布中『マツバラおそうじパワーアップ活動』  岐阜県にある(株)マツバラは、鋳造メーカー。約3年間の取り組みにより、工場内は床が光るほどにキレイに。そして「不良品が少なくなった」「若手が成長してきた」「人が辞めなくなった」などの効果が出ています。活動の様子と社長インタビューを収めた9分間の映像DVDです。『小河原建設 環境整備の取り組み』 東京都の(株)小河原建設では、2年間かけて弊社がお手伝いに入り、「徹底する」「自発的に取り組む」をテーマに環境整備強化プロジェクトを推進しました。活動の様子と社長インタビューを収めた10分間の映像DVDです。ご希望の方は、希望枚数と送付先を明記の上、お申込みください。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援環境整備(規律・清潔・整頓・安全・衛生)は「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。