【第92号】宿題をこなす力|(有)ファイン
事例紹介宿題をこなす力 〈課題を着実にクリアすることが進化成長のカギ〉~有限会社ファイン「そうじの力」活動~福井県鯖江市にある、メガネフレームなどへのデザイン印刷を手掛ける有限会社ファイン。ここで「そうじの力」研修を導入して一年半余りが経ちました。社員十人ほどの小さな会社ですが、進歩は目覚ましいものがあります。取り組み前は、インクが床と言い、壁と言い、機械と言い、あちらこちらに飛び散っていました。それを全員で這いつくばって、スクレーパーで一生懸命にこそげ落としました。当初、「どうせすぐに飛び散るのだからムダだ」という雰囲気もあったのですが、実際にやってみると、「せっかくキレイにしたのだから、再び汚したくはない」ということでしょうか。以後、インクの飛び散りはほとんど見られなくなりました。それだけ、丁寧な作業を心がけるようになったのだと思います。また、ご多分に漏れず、使っていない版、型、机、イスなどがたくさんあり、随分と捨てて身軽になりました。毎朝のそうじ時間も、当初十分間だったものが、「それでは足りない」ということで三十分間に延長され、そうじ後の感想発表では、各人が「気づき」を発表し合って共有しています。こうした活動を進めていくうちに、「そもそも工場内の機械や商品置き場、備品置き場などが機能的かつ快適に配置されているのだろうか」という問題提起がなされ、あらためて全員で検討してレイアウトを大幅に変更することになりました。その結果、当初から比べると格段にコンパクトになり、小さな工場が広々と感じられるようになりました。おかげで、しっかりと通路が確保でき、繁忙期でも商品をストックしておくスペースを生み出すことができました。現在、各エリアを明示するためのラインテープを引いています。こうすることで、商品が通路にはみ出ることを防ぎ、常に最適の位置で作業をすることができます。ファインの特長は、毎回私がアドバイスすることを、次回までに確実にこなしている、ということです。私の予想を超えて隅々まで整えていることも少なくありません。例えばこの写真。溶剤の入った一斗缶の定位置を示すためのマーキング(黄色)です。定位置に据わっていれば、外からはマーキングが見えませんが、定位置からズレると外からマーキングがはみ出してブサイクなので、すぐに気づくことができます。これについては、私が巡回時にチラッと指摘しただけなのに、次回行ってみると、ほとんどの備品に定位置マーキングがなされているのです。これには私も舌を巻きました。一方で、こんなユニークな事例も。下の写真は台車の格納場所をラインテープで明示しているところです。三台あるので、それぞれのオス(台車)とメス(格納位置)に符合する表示をするように、と私が指摘するまでもなく、彼らがやっていました。よく見ると、それぞれ「一郎号」「二郎号」「三郎号」となっています。「どうせやるなら楽しく」というファインの社風が、こんなところにも現れています。もう一つの事例が、右下の写真。手前のストーブの周りにラインテープが引いてあります。当初はこれがありませんでした。理由を聞くと、「繁忙期には、ストーブをどけてここに商品を並べるので…」とのこと。「区画線がないと、危ないでしょ」「繁忙期には、テープをはがせばいいんじゃないですか」と私がつぶやいたのを、彼らはしっかりと受け止めていました。次に訪れた時には、こうしてキレイにテープで囲いがしてありました。こうした対応の仕方は、会社によってまちまちです。「散らかっている」と指摘しても、残念ながらそれがそのまま次回まで残っている会社もある一方で、指摘したすぐその場で片付ける会社もあります。ファインは、藤井高大社長をはじめ、もともと素直な心の持ち主が集まっている会社だったのでしょう。さらに、こうして毎回着実に宿題をこなすことで、成果が実感でき、ますます素直な心が育まれていったのだろうと思います。そうじは、私たちの素直さが露わになる活動です。素直な人は伸びます。素直な会社は良くなります。「そうじの力」の取り組みは、小さな課題を着実にクリアすることを通じて、大きな目標に近づいていくことを身に着けていく訓練なのです。(小早)おそうじ匠の技タイルカーペットのそうじをしてみよう!~かんたん実技にチャレンジ~今回は、会社の事務所などで良く見かけるタイルカーペットをキレイにそうじする方法です。毎日、掃除機はかけていても、それだけではだんだんと汚れていきます。クツの汚れが付いてしまったり、コーヒーなどの飲料がこぼれたところがシミになったりと、気がついてみると結構汚れているものです。そんな時にお勧めする方法が、タイルカーペットを1枚づつ洗う方法です。用意するものは、タワシとデリケート衣料用中性洗剤です。タイルカーペットは、写真のように1枚づつ簡単にはがせます。はがしたタイルカーペットは、タワシで大胆に水洗いします。作業する場所は、外の水場などが良いでしょう。多めに水を流しても差支えない場所が良いです。 まずは、水だけでタワシを使ってこすることをお勧めします。まんべんなく水を掛け、湿らせてからタワシやブラシでこすります。この時のポイントは、汚れている場所だけではなくて全体を洗う事です。洗い残しがあると、乾いた時にその場所がくっきりと跡になって残ってしまいます。タワシで洗い終わったら水で軽くすすいでください。後は良く水を切って、洗濯物と同様に干せば完了です。1日ほどそのまま乾かして下さい。水だけの洗浄でも、びっくりするほどきれいにると思います。(経年劣化の度合いにもよりますが)もし、それでも残っている汚れがあった時には、デリケート衣料用の中性洗剤を1:99の割合で溶いた水を使って、全体をタワシでこすって見て下さい。そのあとは十分にすすいでください。 1枚あたり10分ほどの作業ですので、1日1枚と決めて毎日少しずつ洗うと、部屋の広さにもよりますが、数か月で部屋全体をキレイにすることができます。ビフォア・アフターでくっきりと違いが見えますので楽しく継続ができます。一巡するころには事務所の床が見違えるほどキレイになります。最後に、はがして洗う分のカーペットの代わりに、1枚だけ余分のカーペットを用意しておくと良いでしょう。洗うモノと乾いたモノをローテーションしながらタイルカーペットの床をキレイに維持していく事ができるようになります。 (飯塚)おそうじコラム「揃えるチカラ」の実力~直線、直角、水平、垂直、等間隔~「整頓」とは、「定位置、定量、定方向、表示、標識」のことを言います。そのときのポイントは、「直線、直角、水平、垂直、等間隔」、つまり、どうせやるならば美しく、ということです。 下の写真を見てください。なんとなく「締り」がないのですが、その原因は、向きがバラバラなことにあります。 向きを揃えるだけで、ピシッと筋が通った印象になります。 さらに、向きを揃えるだけにとどまらず、こんなふうにつま先の位置を一直線に揃えてみるとどうでしょう。 ここまで揃えると、見る者からすると、見た瞬間に「ビビッ」と感じるものがあるはずです。これが会社の玄関だとすると、訪れた人は、「ムムッ!ここの社員さんたちは、おそらく、デキル人たちに違いない!」、という予見を抱くはずです。 会う前から、すでに相手の雰囲気に圧倒されてしまうのです。いわゆる「オーラ」というやつです。 掲示物も同様です。左の写真のように、掲示物が斜めに貼ってあると、それだけでだらしのない印象を与えてしまいます。はっきり言うと、「この会社、儲かっていないな」と思われてしまうのです。もっと恐ろしいのは、このような斜めの掲示物を毎日眺めていると、人の心まで斜めになってしまう、ということです。掲示物は水平に。単純なことですが、大事なことです。 知人を通じて聞きかじった話ですが、こんなエピソードがあります。 イラクにPKO活動で派遣された陸上自衛隊は、同様にPKO活動に当たっていた各国の軍隊から、大変に尊敬されていたそうです。 その理由のひとつが、車両の並べ方。方向が揃っているのは当たり前。フロントが一直線に揃い、一台一台の間隔も、「誤差三センチ以内」で揃っていたのだとか。 こうなると、見た相手は、自衛隊と一戦交えたわけでもないのに、「かなわない」とビビッてしまったはずです。私ならば、怖くてチビッてしまったかも知れません。 このように、揃えることには、それ自体に実力があるのです。 (小早)輝ちゃんはミタ!経営計画作成合宿で思考の整理整頓法をミタ!二月初頭に、弊社にとりましては毎年恒例の「経営計画作成合宿in草津」が行われ、参加してまいりました。 参加者は「志ある経営」を目指す経営者仲間十五名です。群馬県の草津温泉という、外界とは完全隔離された環境の下、四日間、集中して今期の経営計画を作成する合宿です。 計画づくりは参加者個々の作業なのですが、途中何度もお互いの内容を発表し合い、感想やアドバイスを交換しながら深めていきます。夜には、お酒を飲みながら互いの想いや夢を語り合います。 この合宿が終わるころには、参加した皆様それぞれに必達を予感させる計画ができ、エネルギーに満ちた表情になっておられました。 読者の皆様にご紹介したいのは、この合宿に来ると驚くほど「考える」という作業がはかどるという事実です。 小早もこの合宿中にいくつものアイデアを形にまとめ上げ、経営計画をはじめ様々な懸案事項を片付けていました。 小早は、「普段でも考える時間はあるはずだけど、合宿に来ると何倍も効率が上がるんだよね」と嬉しそうでした。 小早とともに仕事をさせて頂くようになって二年弱、今でも小早の近くにいて驚くことが良くあります。この合宿で驚いたのは、考えるという行動についても環境を整えていることでした。 二つの事に気がつきました。一つ目は「考える場」の環境整備です。日常の雑事から強制的に離れる環境で、考えることに集中できます。さらに、仲間から様々な意見を聞けることで、自分の考えが一人の時の何倍も深まります。 二つ目は「考えるプロセス」の環境整備です。■目的(理念)「何のためにそれをやるのか?」→■目標(ビジョン)「実現したか判別できるか?」 「わくわくする目標か?」→■方針(戦略)「大局策、概ねどのような手立てをとるのか」→■方策(戦術)「具体的に何を実行するのか」→■計画「具体的日程は」と、この順番で考えていくのだと教わりました。 小早はこれを考える作業を年間のスケジュールに落とし込んで毎年積み重ねています。弊社の歩みもこのプロセスの中から生まれ磨かれたものであったことを知ることができました。 小早が常々実践しているそうじの取組と「考える場」「考えるプロセス」の環境整備は全く同じ性質のものだと思います。 私もこれからそうじの実践を積み重ねていくとともに、思考の環境整備法も磨いていきたいと思います。 (飯塚)今月の読書から『ロシア士官の見た徳川日本』ゴロウニン著 徳力真太郎訳~江戸時代から日本に根付いていた「そうじの力」~幕末に黒船が来航して以来、多くの西洋人が日本を訪れ、様々な記録を残しています。その多くは、日本の文化や教育水準の高さ、勤勉さ、清潔さなどを讃えています。 本書が面白いのは、1810年代という、まだ幕末にはずいぶん間がある時期の日本の姿を、ロシア人が描写してくれている、という点です。 日本と通商関係を結びたいロシアは、鎖国政策を盾に交渉を拒む日本に苛立ち、樺太の日本人部落を襲撃、略奪に及びます。それによってロシアに警戒心を抱いた日本は、千島列島の測量に来ていたロシア士官ゴロウニン氏(すごい名前!)を捕縛し、箱館に監禁します。 2年3か月間に及ぶ監禁生活の中で、ゴロウニン氏が見聞した日本人の性格や習慣を記録したのが、本書です。監禁という環境下にも関わらず、実に客観的に日本というものを描写しています。 ゴロウニン氏が接することができたのは、番卒など決して身分の高い人たちではなかったことから、描写されているのは当時の平均的な日本人像だったと言えるでしょう。 以下、いくつか引用します。 <日本の家屋の最上で最も上品な装飾は、あらゆる階層を通じて守られている、小ざっぱりとして清潔な点であるということができる。> <イギリス人と同じく日本人は清潔と極端な正確さを好む。> <日本人は手仕事にかけて勤勉であるとともに、産業にかけても倦むことを知らない働き者である。> <日本の国民教育についていえば、一国民を全体として他の国民と比較すると、私の意見では、日本人は天下で最も教育のある国民である。> <日本人はヨーロッパ人に比べると非常に小食である。我われはみんな監禁中に運動しなくても日本人の二人分を一人で食べていた。(中略)日本では上流階級でも、その他の階級でも、食事にはあまり金を使わないようである。この点では彼らは非常に節度がある。> <日本人に、「ヨーロッパ人は日本人に比べて非常な優越を享有し、日本人の知らない満足を味わっている」と話すと、彼らは(中略)「大きい町の住民は金持ちで、必要品はもちろん、贅沢品もたくさん持っています。しかし不幸なことに町の住民はみな絶えず喧嘩ばかりしていて、町にはやくざ者が多く、夜は道を歩くのも危険なのです。しかし小さい町では、必要最低限の物しかないのですが、それで住民は兄弟のように仲良く暮らし、喧嘩など全くないのです」日本人はこれらの町はヨーロッパと日本を例えたのだといった。> 日本人の美徳は、昔から「必要以上に持たない」「あるものを生かす」ということだったようです。「そうじの力」の原点、ここにありです。 (小早)◆小早 祥一郎 講演予定講演および実践企業の事例発表 中小企業家同友会のご依頼で、講演をさせていただきます。 講演だけでなく、弊社が支援している「ひかり税理士法人」の実践発表会も兼ねてダブルキャストで行います。 私からは「そうじの力」についての概論を、ひかり税理士法人からは実際の取り組み成果を報告していただきます。 日時:3月22日(金)18:30~20:00場所:高崎市総合福祉センター会費:1,000円対象:経営者(同友会の会員、非会員問 わず、どなたでも参加できます)主催:群馬県中小企業家同友会高崎支部申込先:弊社もしくは同友会高崎支部まで◆「そうじの力」会社案内DVD無料頒布中! (3分間) 「そうじの力」って、どんな会社なの?いったい何をしている会社なの?と、初めてお目にかかった方のみならず、以前からお知り合いの方からも尋ねられることが結構あります(笑)。 そんな疑問にお答えするのが、このDVDです。 弊社の普段の活動風景や、支援先の会社の改善事例、社長インタビューなどを収録しています。 3分間の短い映像です。弊社ホームページ上でもご覧になることができますので、ご興味のある方はチェックしてみてください。◆トイレそうじ参加者募集気軽に体験してみませんか 公園など公共施設のトイレそうじを、体験してみたいと思っても、なかなかその機会がなければ実践は難しいものです。私たちは有志で、気楽に細々と公園のトイレそうじを続けています。ご興味のある方、ご一報の上、お気軽にご参加ください。会場はいずれも群馬県高崎市です。・北三公園トイレそうじ 3月6日(水) 朝6:00~7:00・六郷公園トイレそうじ 毎週日曜日 朝6:00~7:00※予定が変更になることもあります。株式会社そうじの力環境整備(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動は、「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。