【第95号】求められる水準を超えて|Mランド
事例紹介求められる水準を超えて 〈自分たちで何が必要か考える〉~Mランド「そうじの力」活動~島根県益田市。ここにユニークな経営で注目される自動車教習所Mランドがあります。合宿教習で入所した若者たちが、卒業する頃には誰にでも挨拶をするように変身する「若者が育つ」教習所なのです。ハイ・サービス日本300選にも選ばれた素晴らしい会社ですが、お客様に提供するサービスの質をさらに高めるため、昨年の11月から、弊社のお手伝いの下に「そうじの力」活動に取り組んでいます。もともと、そうじには力を入れていた会社です。教習生を交えてのトイレそうじや校内清掃。毎朝の洗車など。「そうじの力」活動がスタートしてからは、あらためて整理、整頓、清掃を計画に沿って進めています。不要物を処分したり、長年の使用でくすんでいた床を磨いてワックスをかけるなどして、「裏も表も」ピカピカに磨き上げる取り組みを進めています。私は毎月Mランドにお邪魔し、現場巡回やプロジェクトチーム「人力捨」のミーティングでアドバイスしたりして、推進をお手伝いしています。秀逸だったのは、50年の歴史の中であちこちに積み上げられてしまった不要物を一斉に整理=捨てたことで、新たなスペースが生まれたことです。今まで物置同然だった部屋が空いたので、そこを改装し、「満点教室」ができました。床や壁、机には無垢のヒノキ材を使用し、集中して瞑想したり勉強したりすることができます。今回、活動から約半年が経過したこともあり、全員参加での研修大会が開催されました。各グループから、この半年間に取り組んだ成果や課題が発表され、私からもアドバイスをさせていただきました。夕食後は、各グループに分かれて、活動計画の練り直しです。多忙な業務の合間を縫って、一日10分間以上のそうじに取り組もう、ということで計画を立てているのですが、忙しくなるとどうしても参加率が下がります。どうすれば参加率が上がるのか、ということが大きな議題となりました。多くのグループで、「昼食懇談会を定期開催することでコミュニケーションを密にし、そうじの参加率を上げよう」ということになりました。あるグループの活動計画書には、「教習生が満点で合格できることを目指す」という目標が掲げられています。普通に考えれば、教習所の役割としては、合格点を超えることができれば、それでいいわけです。しかし、Mランドの使命とはそんなものではない、という自負が見て取れます。翌朝は、全員参加によるそうじの実践です。社員さんたちは、7時に集合した時から、明るい表情。まずはラジオ体操から。皆さん、体操中も楽しそう。全員の手足の先までピッチリと揃ったラジオ体操は、さながら自衛隊を思わせる凛とした雰囲気が漂います。その後、各グループに分かれて実践に入ります。あるグループは、事務用のデスクをどけて、普段なかなか手が入りにくい床面を磨き、ワックスを塗りました。別のグループは、イベント用のグッズが溜まっていた倉庫内を整理して、スペースを広げていました。私が興味を引かれたのは、学科教室を担当したグループです。その教室には以前、各机にスイッチがついていて、教習生が電子的に回答できるようになっていました。しかし現在ではそのシステムは使っておらず、機器や配線は無用のものになっているのです。彼らは教室の床をひっぺがして、隠れている配線を取り除き、溜まっていたホコリも除去しました。そうした配線は、外からは見えません。しかし、彼らは見逃しませんでした。そこまでするのは、「満点合格させる」という使命感があるからでしょう。こうして見えない部分をキレイにすると、不思議とその場の空気が澄んでくるのです。まだまだ課題はありますが、もともと実力のある社員さんたちだけに、今後どこまで盛り上がるのか楽しみです。 (小早)おそうじ匠の技裏の裏までそうじをしてみよう!~便器を分解しました~洋式トイレのそうじをする時には、便座を取り外してしまうと、作業が格段にやりやすくなりますし、隅々まで手が届くのでキレイになるレベルがアップします。便座が取り外せること自体を知らないという方が多いですが、意外にも簡単に外れる場合が多いです。私の家のトイレの場合ですが、便座との接合部(写真①参照)から数点の部品(写真②参照)を取り外すと、便器から便座が外れます。<※トイレによってさまざまです。他にはボタンを押しながらずらすタイプなどあるので良く観察をして見て下さい>普段は見えない所がかなり汚れていることに驚かれるケースが多いです。今までやった事のない方は、ぜひ試しに便座を取り外すことをお奨めしています。ここまでが、日常のトイレそうじです。今回は、便器本体も取り外してみましたので、ご報告をいたします。やってみると、ネジを1本取るだけで簡単に便器が取り外せました。(写真③参照) ※便器は重いので扱いには注意が必要です。取り外して見ますと、便器の場所の床がホコリで汚れていました。(写真④参照) これは、拭くだけでキレイになりました。塩ビの排水溝(写真⑤参照) は接着剤で接着されていてこれ以上は分解できませんでした。手の届くところは全部洗いました。便器を庭に運び出して裏から観察をしてみると排水部(写真⑥参照) の奥の方にだいぶ汚れがたまっていました。手が届かないので、マイナスドライバーなどを用いてキレイにしました。今回、実際にやってみて色々なことがわかりました。トイレの構造や汚れる場所など。また、裏の裏までトイレをそうじすると気持ちが良いです。不思議なことですが、確かにその場の気が変わったように感じられました。 (飯塚) おそうじコラム子供は親から誉められたい~社員を誉めるのは社長の大切な仕事~そうじの取り組みに関して、ときどき、「どうしたら社員がやる気になってくれるでしょうか?」というご質問を受けます。 状況によりけりなので、一概に「こうしたら良くなる」とは言えませんが、岐阜の株式会社マツバラの松原史尚社長が、ひとつのヒントをくれました。 マツバラは、弊社の支援先の中でもとりわけ取り組みが進んだ会社です。鋳造業という過酷な環境にあっても、業界の常識を破るほどのキレイさを誇っています。 なぜマツバラの社員さんたちは、イキイキと楽しそうにそうじに取り組めているのでしょうか。 松原社長は、「私はあまり口出ししません。実務的には現場の総リーダーに任せています。ただ、私は思い切り喜んでやることにしています。『うわっ、どえりゃーキレイになったがや!』とね。社員たちは、私の喜ぶ顔を見るのが好きです。だから喜んでやると、さらに張り切ってくれるのです」と。 喜ぶ=誉めると言い換えてもいいでしょう。これは自分の子供を見ていると、よくわかります。子供は小さなことでも、「今日、逆上がりができたよ!」「跳び箱が飛べたよ!」と親に報告します。それを聞いた親が、「おおっ、すごいな!お前は天才かも知れん!」と大げさに喜んでやると、満面の笑みを浮かべます。 子供は親に誉められるのが大好きです。同様に、社員は社長に誉めてもらいたいのです。社長の喜ぶ顔を見るのが何よりも嬉しいのです。 そうじは地味な活動です。ある個所をそうじした時に、ハッキリと違いが分かる場合もありますが、パッと見には違いが分かりにくい場合もあります。しかし社長は、ちょっとした成果にも気づいてあげて、誉めてあげることが大切です。これはそうじに限ったことではありません。 そのための仕掛けとして、表彰制度などを設けるのもいいでしょう。ある社長さんは、一日一回以上社員を誉めることを日課としていて、実践カードに丸印をつけて自己管理しています。 人の良いところを見つけて誉めるというのは、やってみると意外に難しいものですが、社長の務めとして、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。 コストゼロで、効果は絶大です。(小早)輝ちゃんはミタ!株式会社マルシャンの社員の意識の進化をミタ!これは、ある会社の会議室の電灯スイッチの写真です。部外者の私には、西と東は判別できませんが、「ここ」と「隣」はすぐに理解できて間違いようがありません。 これも同社の掲示板に張ってあった掲示物のメモです。『掲示期間2013.4.12』との記載があります。掲示期間を過ぎた物は、気づいた人が誰でも処分できます。 この会社は弊社支援先である新潟県長岡市の製パン業 株式会社マルシャンです。従業員70名が働くマルシャンですが、昨年12月に新工場への移転という一大事業を行いました。 それから遡る事一年以上前。新工場への移転後も新築時のきれいな環境を維持できる社内体制を構築したいとの仲丸達雄社長の強い思いから、弊社とタッグを組んでの環境整備活動がスタートいたしました。 去ることが決まった旧工場を出来るだけきれいな状態にして新工場に移りましょう、と地道な環境整備活動を続けて、現在は移転した新工場での操業も半年を経過しようとしています。 その間の変化の象徴が、前述の二つの例です。二つとも小早が指示した訳ではありません。活動をされている方たちのご自身の発案です。環境整備と会社に対しての前向きな気持ちが表れています。 先日、新工場の設計者の方が来社した際に「キレイに使われていますね」と言われたそうです。仲丸社長は「まだ半年ですから」と答えたところ、「多くの工場を見てきましたが、大抵使い始めた直後から汚れてしまうし、ドアなどが壊れてしまうのです」と言ってマルシャンの新工場の様子に驚いていたとのことでした。 旧工場で地道な環境整備に取り組み、社員さん一人ひとりの意識が向上したからこそ、新工場に移っても、キレイな状態を保てているのでしょう。 また、先日は新たに任命された若いリーダーによる環境整備の新体制が発足いたしました。社長が課題を指摘するのではなく、メンバーで工場内を巡回チェックをして課題を自分たちで解決する取り組みがスタートしたのです。 新リーダーも張り切っていますので、今後がさらに楽しみです。 (飯塚)今月の読書から『晏子(あんし)』(全4巻)宮城谷昌光著~歩きつづける者は目的地に到着する~紀元前500年頃の中国が舞台。斉という国の宰相である晏子が主人公の小説です。 当時は春秋時代と呼ばれ、各国が群雄割拠する世の中。国と国との争いに加えて、各国内でも、君主の座を巡る王族同士の争い、君主と臣下の裏切り合い、重臣同士の権力争いが繰り広げられる、実にドロドロとした世相です。 我欲むき出しの君主や重臣たちの中にあって、ひとり晏子だけは、正義や忠義、誠実さというものを貫き通します。誰もが君主におもねる中において、晏子だけは、たとえ君主だろうと「ダメなものはダメ」と諫言をはばかりません。 『晏子』には、私たちがお手本としたい、たくさんの教訓が含まれています。 君主霊公の治世下、斉では女性による男装が流行します。風紀の乱れであり禁止すべきとの臣下の進言を受け、霊公は男装禁止令を布告しますが、男装はいっこうに止む気配がありません。 令を破った者への刑罰を重くすべきかどうか、と霊公が晏子に問うと、晏子は、そもそも男装は霊公の愛妾が好んで行っているものであり、これを禁ぜずして民に禁令を発するのは、「牛首を門にかけて、じつはなかで馬肉を売っているようなものです」と直言します。 「他人にやらせたくないことは、まず自分がやめるべきだ」という、当たり前のことです。逆もまたしかりですね。 霊公が愛妾に男装をやめさせたところ、ほどなくして世間から男装は消えていったとのことです。 世の社長さんたちにも、イエスマンではなく晏子のように直言する勇気ある幹部社員が必要ですね。そしてそれを受け入れる社長の度量も求められます。 またあるとき、晏子は強国の楚へ外交使節として出向きます。ところが時の楚王は暴君として知られる人で、晏子に意地悪をして恥をかかせようとします。 楚王と晏子との饗応の席で、庭に斉の罪人が引き出され、それを見た楚王が晏子に「斉人というのは、もともと盗みがうまいのか」と聞きます。晏子は、「橘というのは淮水の南に生ずれば橘ですが、淮水の北に生ずれば枳となります。その者は斉に生まれたときは盗みをしなかったが、楚に入って盗みをしたのです」と言ったといいます。 人は環境によって変わる、ということです。良い社風の会社に入れば、誰もがそのように変わっていくことでしょう。逆もしかりですね。 晏子は引退する時に、忘れられない言葉を残します。 「やりつづける者は成功し、歩きつづける者は目的地に到着する、といいます。わたしは人とかわったところはないが、やりはじめたことはなげださず、歩きつづけて休まなかった者です。あなたがわたしに勝てないというのであれば、それだけのことです」。 参りました! (小早)お知らせ◆実践企業事例発表会&見学会小早の講演+小河原建設の見学 弊社支援先である小河原建設様の実践発表と現場見学会、そして小早の講演をセットにした盛りだくさんのセミナーです。 日時:6月26日(水) 13:30~14:30小早講演 14:30~15:30小河原建設発表 15:30~17:00小河原建設見学会場所:株式会社小河原建設本社 (東京都中野区中央5-4-24)会費:3,000円主催:株式会社そうじの力※どなたでも参加可能です。◆小早 祥一郎 講演「そうじの力で会社が甦る!」 なぜ整理、整頓、清掃を徹底すると会社がよくなるのか、その理由をご説明します。また、様々な企業の実践事例や具体的取組方法のコツなどもお伝えします。 日時:6月27日(木)16:00~17:30会場:ひかり税理士法人本社 2Fセミナールーム (群馬県高崎市問屋町4-7-8 )会費:3,000円(ひかり税理士法人の顧問 先は割引料金になります)主催:ひかり税理士法人申込先:ひかり税理士法人 電話:027-361-5568 FAX:027-361-9591 担当:佐藤様、堤様株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動(環境整備=5S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)は、「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。