【第96号】活動を地域に拡げていく|(有)ファイン
事例紹介活動を地域に拡げていく 〈すべては一人からはじまる〉~有限会社ファイン 落書き消しと合同ゴミ拾い~福井県鯖江市。日本一の眼鏡の産地で、眼鏡のフレームやライターなどにデザインを装飾する特殊印刷の会社、有限会社ファインがあります。社員12人のこの小さな会社で、弊社のサポートによる「そうじの力」活動がスタートしたのが、ちょうど二年前。それからコツコツと活動を続けてきました。印刷会社だけあって、当初は、床や壁、機械などにインクの飛び散りがこびりついていました。工場内にはモノがあふれ、通路も狭くなっていました。こびりついたインクを、全員でこそげ落としました。「汚れているのが当たり前」だった景色は一変して、それ以降は汚さなくなりました。一人につき2台置いてあったスチールデスクを撤去し、代わりにコンパクトな机を配置しました。全体のレイアウトも変更し、手狭に感じられた工場が広々として、通路も確保できました。最近は、モノの定位置化と表示、標識、つまり「整頓」に特に力を入れて活動しています。通路や商品置き場にラインテープを貼ってスペースを確保する。インク置き場にも、メーカー名と商品名を表示することはもちろん、発注時期も明記しています。同社では、毎朝30分間をそうじに充てるとともに、毎週金曜日に飛び散ったインク消し、そして月に2回の弊社の研修を実施して、レベルアップさせていっています。今年に入ってからは、自分たちでチェックシートを作成し、自分たちで現場を巡回してチェックし、その結果を全員で共有するために報告会を毎月開催しています。一般的にチェックシートというものは、上位者が部下を評価するためのもので、賞罰とからめて強制的にそうじさせようとする会社もあります。しかしファインのやり方はまったく違います。あくまでも自分たちの気づきの感度を高めるためのチェックシートなのです。同社では、毎月1回、周辺地域のゴミ拾いを行っています。活動を続けるうちに、隣のT社も毎月地域清掃を行っていることに気づきました。せっかくならば、他社にも呼びかけて、合同で周辺地域の清掃をすれば、もっと盛り上がるし、もっと地域がキレイになるのではないか。ある社員の発案により、合同地域清掃が企画され、周辺の14社(店)に声をかけたところ、4社から合計32名の人たちが集まってくれたのです。周辺地域の地図を作成し、班分けをして、ファインの社員が各班のリーダーとなり、合同のゴミ拾いが実施されました。実施後の社員たちの感想として、「自社だけでなく、他の会社の人たちと一緒にするのは良い緊張感がある」「自分は歩道の上のゴミだけを拾っていたが、他社の人たちは車道脇のゴミも拾っていた。見習わなければ、と思った」「ゴミ拾いだけでなく、草むしりもやれば、もっとキレイになると思う」という多くの気づきと良い刺激が得られたようです。今後も、三か月に一回、定期的に実施していくとのことです。また、別の試みとして、高架下の落書き消しにも取り組んでいます。同社は印刷業だけあって、どのような薬剤を使えばこの手のインクが消えるのか、よく知っているのです。商売道具である薬剤を携えて、イザ出動。インクがコンクリートに染み込んでしまっているので、完璧には落ちないものの、言われなければ分からないくらいにキレイになりました。キレイになると気持ちが良いものです。ましてそれで地域の人たちにも喜んでもらえる。自然とテンションが上がり、笑顔がこぼれます。いずれの取り組みも、誰かが彼らに強制したわけではありません。社員さんたちの発案による、自主的な活動です。自分たちが始めた小さな活動が、周りを巻き込んだ大きな活動に育っていく。その醍醐味を、今彼らは味わっています。どんな大きなことも、すべて、一人からはじまるのです。 (小早)おそうじ匠の技換気扇をそうじしてみよう!~分解して漬け置き洗いをしました~~油でギトギトに汚れてしまったレンジフード(換気扇) は、 そうじの大変なところです。取り外せる部品をすべて外して、漬け置き洗いをすることで、ベトベトの油汚れもさっぱりきれいに洗い落とせます。 用意をするものは、「粉末漬け置きタイプの台所用強力洗剤」「スプレータイプの油落とし洗剤」「ブラシ」「スポンジ」「ぞうきん」です。作業をする時には手肌を傷めるので、ゴム手袋は必須です。①取り外した部品をシンクにまとめて置きます。そこに排水口のフタ(網)をラップでくるんでフタをして、シンクに40度のお湯を張ります。②指定の量の「粉末漬け置きタイプの台所用強力洗剤」をシンクに投入します。その後、30分から1時間放置します。その途中では、2度3度と洗剤がなじむようにシンク内をかきまぜて下さい。③漬け置きをしている間にレンジフード内の油汚れをそうじします。「スプレータイプの油落とし洗剤」を吹きかけ、汚れが浮いてきたところをスポンジでこすり落とします。最後に洗剤分を残さないようにぞうきんで丁寧に水拭きをします。④シンクに戻ります。30分から1時間放置した後、ブラシで軽くこすります。ベトベトだった油汚れが、驚くほど簡単におちます。油で傷んだ塗装は剥げてしまうことがあるので、その場合はさっとこすって終わりにして下さい。⑤あとは、食器を洗う要領で水洗いをして、しっかりと水気を拭き取って下さい。元のとおりに取り付けたら完成です。今回のポイントは2つあります。(1)分解できる部分は分解すること。 (2)漬け置き洗い(化学力)とブラシ洗い(物理力)を組み合わせること。この2点は、換気扇だけでなく、色々なものに応用できそうですね。 (飯塚)おそうじコラムゴミの出し方に、人間性が表れる~後始末とは「気遣い」~近所のゴミ拾いをしていると、時々、カラスあるいは猫がゴミを喰い散らかしてしまっている光景に出くわします。 一瞬、ひるみますが、ここで逃げては意味がありません(笑)。「うわぁー」と思いながらも、勇気を出して片づけます。 この作業中、嫌でもそのゴミ袋の中身をじっくりと見ることになります。 何度も同じような現場に出くわすと、喰い散らかされるゴミには、ある共通の要素があることに気づきました。 ①カップ麺、弁当、パック詰めお惣菜、スナック菓子、加工食品など、いわゆる「コンビニ食品」が大量に含まれている。 ②食べ残しや生ゴミが多い。おにぎりがそのまま捨てられてあったり、まったく調理された形跡のない生肉がたくさん捨てられてあったりする。 このうち、①は、学生さんなのかも知れません。料理が面倒な気持ちは分かりますが、こんな食事ばかりしていたら、体を壊してしまうのではないでしょうか。さらに、①のゴミは②の特徴も併せ持っていることがほとんどです。 台所から出たと思われる食材も、自分が食べられる量を超えて購入し、それをそのまま捨てている、という感じです。 食べ残しが多い、あるいは、使わなかった食材をそのまま捨てるというのは、おそらく「食物に対する感謝」の念が足りないのでしょう。 もちろん、魚の骨や鶏の骨、野菜のヘタなど多少の生ゴミが出てしまうのはやむを得ません。 しかし、それらを捨てる際にも、ひと工夫することで、ずいぶんとゴミ出しの様相は違ってきます。 私の妻は、生ゴミをまず新聞紙にくるんで、それをビニール袋に入れて捨てています。こうすると、水分が新聞紙に吸収され、臭いも抑えられるので、カラスなどに喰い散らかされにくくなるのです。 よく、「後始末が大事だ」と言われます。ゴミを指定の場所に出したら、後は知らない、ではなく、出した後のゴミが気持ちよく処理されるように配慮すべきでしょう。 仕事や人間関係でも同じです。後工程や受け取る相手のことを考えて物事を進めたいものですね。 (小早)輝ちゃんはミタ!車内をそうじすると車が輝く!を見た!群馬県高崎市で毎月、そうじを学ぶ実践型勉強会「目覚ましお掃除会」を開催しています。公園のトイレそうじや事務所の整理、整頓など、毎回テーマを決めて取り組んでいます。 先日は、Yさんの社用車(軽トラ)を題材にご提供いただき車両のそうじ実習が実施されました。今回の参加者は5名。 まず指導役の小早から、「今日は洗車はしません。洗車の前にやることがあります」との言葉。 洗車の前にやることとは、①車内にある不要物の処分、②車内の裏の裏まで磨くこと、です。 まず、車内にあるモノをすべて外に出すことから始まりました。書類や作業用具はもちろん、ゴムマットやハンドルカバー、さらには座席も外しました。 車内からは色々なものが出てきました。その中で、巻尺が2個、ライターが3個など同じ用途のモノが複数個あるものもあります。ひとつあれば十分、ということで、それ以外を処分しました。 参加者はそれぞれ、ドアの内側、ゴムマット、座席の下などをそうじしました。裏の裏まで徹底してキレイになったところで座席と必要なものを戻してそうじを完了しました。 感想発表では、Mさんが「見えない所をキレイにすると空気が澄んでくる気がします」と語ってくれました。 Oさんは「泥だらけのゴムマットをせっかく洗ってキレイにしたのに、Yさんが『よくよく考えてみるとこれはいらない』とマットを処分したのはショックでした」と涙ながらに語ってくれました(笑)。 最後に小早が、「ダッシュボードの上には何も置かないようにしましょう。視界を遮るので危険です」とアドバイスしたので、Yさんは「分かりました」と力強く宣言してくれました。ところが、後日Yさんにお会いした時には、「実は、またダッシュボードの上にモノを置いちゃってます・・」とのことでした。 次回の車両そうじ実習の題材は、またYさんの車になりそうです(笑)。 (飯塚)今月の読書から『椿と花水木』(上、下)津本陽著~勤勉さは、成功への第一歩~前回、前々回に引き続いて、歴史人物小説です。本書は、ジョン万次郎の生涯をイキイキと描いています。 ジョン万次郎という人物については、歴史の教科書などで名前だけは聞いたことがあるものの、ほとんど知りませんでした。 土佐(高知県)の漁村で生まれ育った万次郎は、1841年、13歳の時に、漁船に乗って漁に出かけ、暴風雨に巻き込まれて遭難します。 たどり着いた無人島で、仲間たち数人とサバイバル生活を送っている時に、沖を通りかかったアメリカの捕鯨船に助けられます。アメリカに渡った万次郎は、船長の厚意により現地で高等教育を受け、捕鯨船の船乗りとして活躍します。 その後、チャンスをとらえて日本に帰国し、明治維新前後に、日本と西欧諸国とのパイプ役として活躍するのです。 幕末の幕閣たちが、もっとうまく万次郎を登用していたら、ひょっとすると幕府は滅びなかったかも知れません。 さて、アメリカのフェアヘブンで暮らしはじめた万次郎の目には、アメリカというのはなんと清潔な国だろう、と映ります。 〈町なかは掃除がゆきとどき、景色の色あいが土佐とちがい、目のさめるようにあざやかであった。〉 そんな万次郎は、船長の家にお世話になっているので、かいがいしく働きます。 〈泊めてもらうからには、どんな用事でもして好意に酬いようと、万次郎は台所へゆく。〉 〈彼は水桶をとり井戸端で水を汲み、台所の水溜めを満し、庭を掃き雑草を抜く。〉 〈万次郎は家の内外をかたづけ、薪割りをはじめる。〉 こうした勤勉さが、船長をはじめとするアメリカ人に好印象を抱かせ、その後の万次郎の出世の土台となったと言えるでしょう。掃除をはじめとする雑用を引き受けることは、実は成功のための黄金法則なのかも知れません。 アメリカでの生活で、男女平等や鉄道、蒸気船など、すっかり「文明」に慣らされた万次郎には、故郷はあまりにも世界と隔絶された閉鎖空間でした。 〈11年ぶりに帰った故郷の家にはのみ、しらみがいた。肥溜めは臭気を放ち、住人たちは眼病で瞼を赤く腫らし、貧困に慣れた暮らしを続けていた。〉 〈彼は世界三大都会のひとつである江戸の町なみに塵芥が多いのにおどろく。〉 〈路面にうずたかくごみが積り、異臭をただよわせる。〉 本書はあくまでも小説なので、事実というよりは作者の考えを反映したものでしょう。総領事ハリスなど、日本の清潔さを誉めた外国人もたくさんいたのですから、一概に当時のアメリカと日本と、どちらが清潔であったかは論じられません。 ただ、いずれにしても、清潔さというのは、その国や地域の「民度」に比例するものなのでしょう。 (小早)お知らせ◆読者プレゼント!「そうじの力」オリジナルビブス 「そうじの力」のロゴマークを胸と背中にあしらったオリジナルのビブス。 地域清掃などの折に着用すれば、映えること間違いなし! このオリジナルビブスを読者の皆様にプレゼントいたします。 応募条件は、本『そうじの力だより』を3人の方に転送していただくこと。 ご希望の方は、3人の方に転送していただいた上で、お申込みください。◆トイレそうじ参加者募集気軽に体験してみませんか 公園など公共施設のトイレそうじを、体験してみたいと思っても、なかなかその機会がなければ実践は難しいものです。私たちは有志で、気楽に細々と公園のトイレそうじを続けています。ご興味のある方、ご一報の上、お気軽にご参加ください。会場はいずれも群馬県高崎市です。・北三公園トイレそうじ 7月8日(月) 朝6:00~7:00・浜川公園トイレそうじ 毎週日曜日 朝6:00~7:00※予定が変更になることもあります。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動=(環境整備=5S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)は、「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。