【第211号】見せる工場から魅せる工場へ|(有)ファイン
そうじの力だより第211号支援事例紹介見せる工場から魅せる工場へ~オープンファクトリーを目指して~福井県鯖江市の(有)ファイン。メガネのフレームなどに、オシャレなデザインを印刷する特殊印刷の会社です。社員10人ほどの小さな会社ですが、11年前から、弊社の支援により、環境整備が続けられています。当初、工場内は、床も壁も机も機械も、インクまみれでした。モノが多く、手狭で、通路もまともに確保できないような状況でした。しかし、それでも印刷業界の中では、比較的キレイな方だったと思います。社員さんたちの質も、決して悪くはありませんでした。それでも活動のスタート時には、「なんでそんなことやるの?」「今でも十分にキレイだよ」「そうじをするくらいなら、仕事をやりたい」「そんな立派なことはできない」などという意見が出て、消極的な姿勢が目立ちました。とにもかくにも、藤井高大社長の強い意志で、11年前に活動がスタートしました。まずは、不要なものを徹底的に捨てました。当初、作業者1人につき、大柄なスチールデスクが2台置いてあったのですが、それらを捨てて、小ぶりなワゴンに替えました。これによって、印刷機械周りがコンパクトになり、工場内が広くなりました。通路も、きちんと確保できるようになりました。また、物置小屋と化していた部屋にあったものを、いったん全部出して、そのほとんどを捨てたことにより、この部屋をインク部屋として有効活用できるようになりました。そして、床面や壁面、機械表面にこびりついていたインクを、皆でこそぎ落としてキレイにし、自分たちで塗装をし直しました。活動スタート時には、毎朝10分間、拭き掃除や掃き掃除などをしていたのですが、そのうちに、10分間では足りない、という声が上がり、30分間に延長しました。さらに、月に1回、半日かけて、大掛かりな整理・整頓や改善を行っています。こうした取り組みを、この11年間、ずっと続けています。当初、消極的だった社員さんたちも、どんどん積極的になり、いろいろなアイデアを出してくれています。周辺地域のゴミ拾いや、落書き消しなども、社員の発案で取り組むようになりました。活動を通じて、社内のコミュニケーションが良くなり、社内がよりいっそう明るい雰囲気になりました。近年は、工場見学者が増えていました。環境整備に取り組む以前は、工場見学は受け付けていませんでした。「秘匿情報を見られては困るから」というのが表向きの理由でしたが、実際には、工場が汚くて見せられない、というのが本音でした。しかし、こうして工場内がキレイに整ってくれば、見てもらうことに抵抗はありません。取引先や同業者が頻繁に訪れるようになりました。ところが、そこにコロナ禍が襲い、この3年間ほどは、工場見学を停止していました。今年は、いよいよ工場見学を再開します。せっかくならば、より見栄えよくしたい、ということで、昨年、デザイナーを入れて、工場内のデザインを一新しました。これまでは、整理・整頓・清掃の観点から、工場内はピカピカにキレイでしたが、さらに、デザインセンスにおいても、カッコよくなりました。見学者に見てもらうのは、受け入れる側にとっても、メリット大です。いつ見られてもいいように、常に整える習慣がつきます。見られることで、自分たちのやっていることに誇りを感じられます。キレイな工場は、それだけで信頼を勝ち得ることができます。今期の活動目標は、「働く人も、訪れた人も、気持ちよく心地よい空間を創る」です。「お客様を魅了する工場」を目指して、前進します。 (小早)今月の読書から『任侠病院』今野敏 著~経営の立て直しは、まず掃除から~ 今野敏による、コメディタッチの小説『任侠シリーズ』の3作目です。 阿岐本組は、下町に本拠を置く、小さなヤクザの組。「決して堅気には手を出さない」「ゴミ捨て場の掃除だとか、雑草取りだとかいった細かな雑事をこなしておくことで、地元の住民の信頼を得る」といった、彼らなりの「任侠道」を貫く、ちょっと変わったヤクザです。 そんな彼らが、なぜか、経営の傾いた企業の再建を任され、ユニークな手法で改革していき、再建を成功させるシリーズ。 組長の阿岐本雄蔵は、「経営の立て直しは、まず掃除から」という独特の哲学を持った一本気なヤクザ。 以下、印象に残ったシーンです。〈日村は、道路に面して建っている古い建物を見上げた。壁はもともとは白かったのかもしれないが、今はくすんだ灰色で、雨によってできた黒い筋が何本も表面を走っている。窓ガラスは曇っている。玄関ドアもガラスでできているのだが、それもくすんでいた。(中略)阿岐本のオヤジは、車を下りると言った。「なあ誠司。まずやらなければならないことが、はっきりしたよなあ」「はあ・・・」かつて、荒れ果てた高校を立て直そうとしたとき、阿岐本のオヤジがまずやったのは、掃除と荒れた花壇の手入れだった。建物がすさんでいると、その中にいる人々の気持ちもすさむ。〉〈心を入れ替えるためには、まず掃除なのだ。それが阿岐本のやり方だ。人の気持ちは、入れ物で変わる。暗く陰湿な場所にいるだけで、心はすさんでくる〉〈「今までどおりやっていたんじゃ、この病院は潰れちまう。ですからね、思い切った改革をどんどんやっていかなければならないんです。それもわかってもらえますね?」「はい。しかし、それと壁の掃除とどういう関係があるんです?」阿岐本のオヤジは、にっと笑った。「まあ、見ててください」〉〈「掃除なら、定期的に業者がやってくれますよ」「いや、それでは意味がないんで・・・」「意味がない・・・?どうしてです。掃除なんて、誰がやっても同じでしょう」「自分が住む場所や働く場所は、自分の手できれいにする。これが新理事会の方針なんです」〉〈まあ、すぐには効果はないかもしれない。でもね、誰だって薄汚れた病院よりもきれいで明るい病院にかかりたいと思うんじゃないかね?何て言ったっけね?心理的効果ってのかね?そういうの意外と重要なんじゃないですかね?〉〈すでに壁はあらかたきれいになっていた。建物の印象がずいぶん明るくなったと感じた。ただ、壁をきれいにするだけで、病院に対して信頼度が上がったような気がした。〉 単なるエンターテインメントとしても楽しめる、大好きなコメディです。 (小早)株式会社そうじの力 そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社弊社は“そうじ=環境整備”を通じた「企業風土改革」を支援します。講義、実習、チームミーティング、計画作り、現場検証を通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月1回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)そうじの力だより第211号 2023(令和5)年2月1日発行 発行者:小早 祥一郎(株式会社そうじの力 代表取締役)〒370-0078 群馬県高崎市上小鳥町307-1 TEL:050-3709-2333 FAX:050-6868-2721 メール:info@soujinochikara.com