【第106号】巻き込む力が店を活性化させる|西村ジョイ(株)

事例紹介巻き込む力が店を活性化させる 〈おもてなしの第一歩は清潔さ〉~西村ジョイ そうじの力 研修~香川県高松市に本拠を置き、県内および近県に11店舗を展開するホームセンター 西村ジョイ。ここで半年前から弊社がお手伝いしての「そうじの力研修」を毎月行っています。同社では10年ほど前からそうじに取り組んできたとのことですが、いまひとつ定着しないということで、弊社に依頼があったものです。当初私が訪れた時は、たしかに定位置化などの取り組みの痕跡は認められるものの、どれも中途半端な印象が感じられました。私が見たところ、問題は大きく三つあるようです。ひとつは、あれもこれも、と手を広げ過ぎているということ。例えば、当初、店舗裏の事務所の壁には、おびただしい数の掲示物が貼ってありました。売上状況、売れ筋商品の案内、競合店の状況、人事異動、注意事項、今週のチラシなどなど。壁一面が掲示物で埋まっているほどです。発信元にしてみれば、どれも重要で伝えたい情報であり、決して無駄な情報を流しているわけではありません。しかし、それを受け取るのは生身の人間です。いくらおいしいものでも、量が限度を超えればおなか一杯になり、それ以上は消化できません。人間がパッと覚えられるのは、せいぜい三つの情報だと言われています。店舗数も多く、売り場面積も広い。扱う商品も多岐にわたります。そうした中で、「拡げる」方向で動いてきた経営を、逆に「絞る」方向に転換する必要があるのではないかと思います。実際、店舗には備品や什器類がところ狭しと置かれていますが、一つひとつ吟味していくと、使用頻度の低い物や最近ではほとんど使われなくなった物がたくさんあります。そうした物を、まず整理しました。掲示物も、ある店舗では以前は21枚あったものが今は13枚へと削減したといいます。物や情報が無秩序に多いと、大事なモノが埋もれてしまいます。使うモノを絞ることで、本当に大事なモノが見えてくるのです。もうひとつの問題点は、今までは「見える所中心」の活動だったということです。私はむしろ「見えない所中心」の活動にすることを勧めました。見えない所にゴミ、汚れ、ホコリ、不要物、不明物が溜まります。見える所だけキレイにするというのは、「表面だけを取り繕う」風土につながりかねません。見えない所をキレイにすると、場の空気が澄んできます。ということで、まずはバックヤードから活動をはじめました。同社に限らず、小売店舗のバックヤードというのは乱雑で汚いものです。原則に従って、使わない備品や什器を処分しスペースを確保しました。置き場の表示をして定位置化を進めました。また、裏の部分などに大量に溜まったホコリをそうじしました。面白いことに、こうしてバックヤードに手を入れていくと、売り場の乱れや汚れにも気づくようになるのです。そして最後の問題点。実はこれが一番の問題なのですが、推進役となる各店長が、「楽しんで」取り組んでいない、ということです。義務感でそうじに取り組むと、つまらないし続きません。そうじは和を作るためのものです。一人で取り組めば孤独ですが、みんなで取り組めば楽しくなります。各店長には、とにかく「みんなでそうじをする機会」をたくさん作るようにアドバイスしました。ある店舗では、店長の音頭で、店頭の陳列棚の商品をすべて降ろし、隅々までそうじをしました。すると、社員から色々なアイデアが出てきたそうです。「売り場通路の床を磨きたい」「ガーデニングコーナーをキレイにしたい」「店員紹介のボードを見栄えよくしたい」などなど。店舗社員全員参加での床磨きの様子を写真で見ると、みな笑顔です。私が同社をお手伝いしながら気づいた同社の強みのひとつは、「すぐに動ける」という風土です。研修中に、店舗内を巡回していて、私が不備事項を指摘すると、参加メンバーが「やろう!」とその場でそうじに取り掛かるのです。この動きの良さがあれば、今後、店内はどんどん良くなっていくでしょう。今後は、幹部以外の社員やパートさんたちをいかに巻き込んでいけるかが課題となります。半年後、一年後の同社が楽しみです。        (小早)おそうじ匠の技そうじ道具は適切なものを使いましょう!~トイレブラシについて考える~そうじをする時に、使う道具によって仕上がりに大きな差が出ます。なので、そうじをする対象に合わせて適切な道具を選ぶ必要があります。ところが、キレイにする目的には実は適していない道具も多いようです。 トイレを例に考えます。便器をそうじする道具としてはトイレブラシが一般的です。 ところが、トイレブラシという名の割には、このブラシでは便器の中に磨けない箇所がたくさんあります。洋式便器のフチの裏側や水たまりの奥やスミ等にはブラシが届きません。その結果、手鏡を使って便器フチの裏を見てみたら汚れが付着して茶色くなっていて驚く、なんてことがあります。 ここで、トイレブラシの代わりに洗車用の大きめのスポンジを使って便器をそうじしてみます。フチの裏側も水たまりの奥、スミもちゃんとこする事ができて汚れを落とすことができます。便器をキレイにするという目的に対しては、トイレブラシに比較して数段優れているようです。さらに、洗車用スポンジでも届かなかったり、キレイに落とせない汚れに対しては、それに適した道具を用いて対応します。便器の中を隅々までキレイにしようと思うと、トイレブラシだけでは対応できません。また、キレイにそうじをするためにはキレイな道具を使う必要があります。汚れた道具でそうじをすると逆に汚してしまうこともあります。トイレをキレイにするためのトイレブラシのはずですが、そもそもトイレブラシ自体を良く洗わなかったり、良く乾かないままケースに入れておくので清潔でない様子を見かけます。さらにケースを洗うことまではしないので、ケースが汚れていたり、中に汚れた水がたまっていることもあります。トイレブラシはキレイで清潔なトイレを保つには不適切な道具だなと思います。そんなわけで、私はただ今『トイレブラシ撲滅運動』を展開中です。(応援団募集中ですっ!)           (飯塚)おそうじコラム「揃える力」~統一感がパワーを生む ~先日、島根県益田市に本社を置くバス会社 石見交通で、三か月ぶりに「そうじの力」研修を行いました。 いつもは益田市の本社で研修を行っているのですが、今回は場所を変えて、大田市の営業所で行いました。 これまでの研修の蓄積のおかげで、営業所内は大変に整理・整頓・清掃が進んでおり、嬉しく思いました。 さて、営業所内を巡回している際に、売店を通りかかった時のことです。スナック菓子が陳列されている棚を見た私は、「んっ?」とびっくりしてしまいました。 下が、この陳列棚です。見事にスナック菓子が揃っています。一般のコンビニエンスストアなどの陳列方法と、ちょっと違います。 マーケティング心理学的に、これが良い方法なのかどうなのかは分かりませんが、少なくとも通りがかる人を「んっ?」と立ち止まらせる効果は十分にあります。 思わず手に取って、買いたくなってしまいます。確認はしていませんが、きっと売上成績も良いのではないでしょうか。 こうやってモノを揃えると、訴えかける力が宿されます。 下は島根県益田市の自動車教習所Mランドの傘立てです。 ここまで揃っていると、来客がビビます。「この会社はタダモノではない・・・」と。訪問客をビビらせたら、こっちのものです(笑)。 こんなことを考えていたら、ふと、昔のことを思い出しました。 私が小学生の頃、父は一時期、大人の草野球チームの監督をしていました。若い頃に野球選手だったわけでもない父が、なぜ監督をしていたのかはよく分かりませんが、いちおう野球理論には詳しかったようです。 その父が当時、あるチームと別のチームが対戦しているのを見ていて、「あちらが勝つ」と断言するのです。 私が不思議に思って理由を聞くと、「ユニフォームが揃っているから」というのです。 草野球ですから、きちんとユニフォームを揃えているチームと、バラバラなチームがあります。父は、「ユニフォームが揃っているチームの方が強い」というのです。 なるほど、ユニフォームの持つ統一感が、チームの団結心を生み、強さにつながるのかも知れませんね。       (小早)出張おそうじデモンストレーショントイレそうじのやり方を実演し、参加者の方にも体験していただく「出張おそうじデモンストレーション」。今回は、あるエピソードをご紹介します。 ある調剤薬局店でおそうじデモンストレーションをさせて頂きました。デモンストレーションが始まると、「そうじの基本は上から下」ということで換気扇を外したり、照明器具を外してそうじをしたりして進んでいきます。徐々に下へとそうじが進むと次は便器のそうじです。そうじをしやすいように便座を分解してみます。参加者の方々は「こんなところもそうじをするんですか」とか「便座は外れるんですね」などと話しながら楽しそうにそうじをしていました。 便座の次は、便器の中のそうじです。そうじを始める前に、便器の裏の目に見えない所手鏡使って見てみます。鏡に映った裏の状況を確認してもらった時に、一人の女性から「えっ」という声が聞こえました。初めて見た汚れにびっくりしたみたいです。 今度は、その汚れをそうじします。素手で便器の中に手をつっこんで、尿石を落とすための道具を使ってガリガリと磨いていきました。 その時、背後にただならぬ気配を感じて振り返ると、先ほどの女性と目があいました。さきほどよりももっと驚いた表情で、明らかにドン引きをしている様子でした。 彼女が話してくれました。「私の仕事の性格上、清潔にしなくてはいけないのでトイレのそうじもきちんとやろうとは思っているんですけど・・・。頭ではそう思うんですが、見ていると手が出せそうにありません。」ということでした。正直な告白でした。 かくいう私なんて、初めてひどく汚れた小便器のミズコシを目にした時、あまりの衝撃と恐怖で見た瞬間に5メートルは飛びのきましたから。「掃除に学ぶ会」に初めて参加した時のことでした。誘ってくれた先輩の方がもっと怖かったので、泣く泣く覚悟を決めた思い出があります。 結局、彼女はしっかりとやりきって最後にはさわやかな笑顔を見せていただきました。デモ後の彼女の感想です。 「とても勉強になりました。そしてとても納得できました。実践するのには勇気のいる作業もありましたが、やっていきたいと思います。」 デモは法人対象で一回二時間三名様まで。お呼び頂ければ馳せ参じます。 (飯塚) 今月の読書から『小説外務省』孫崎享著 『原発ホワイトアウト』若杉冽著~誰のために働くのか?~経済アナリストの藤原直哉先生がご紹介されていた2冊の本を読んでみました。 いずれも官僚(現役およびOB)が、官僚の働き方を告発した暴露本です。いずれも小説の形をとっていますが、実にリアルで、多くは事実に基づいて書かれたのだろうと推測できます。 国家公務員とは、本来は国益のために働くべき人たちです。ところが彼らは、国益ではなく「省益」のために働くといいます。 私たち一般人は、国益=省益と思っていますから分かりにくいのですが、平たく言えば、彼らにとっての一番の関心事は自分の出世だということなのです。 出世するためには、コトを荒立てず、無難にこなすこと。時の権力者におもねって顔色をうかがいイエスマンになること。 しかし、国益を考えれば、時には上司や政治家に対して耳の痛い提言や進言も必要になります。それには左遷や出世レースからの脱落といったリスクを覚悟しなければなりません。そうしたリスクを避ける風土が、国益に反する省益を作っていくのです。 現在の尖閣問題は、多かれ少なかれ、省益を優先する外務省の姿勢が引き起こしたものだと告発します。 もうひとつの『原発ホワイトアウト』は、主に電力会社とそれを取り巻く経済産業省資源エネルギー庁や原子力規制庁の利権に焦点を当てています。 経産省も本来は、国民を幸せにするためのエネルギー政策を推進するのが彼らの役割です。 しかし実際には、いかに業界の利権を守るか、そしてその見返りに、いかに自分が甘い汁をすするか、ということが第一の関心事だというのです。 そうした官僚に誘導された政治家の政策が、国益に反することは明らかで、そのツケを支払わされているのが、我々国民だということなのです。 「何のために働くのか?」という問いかけは、「誰のために働くのか?」と言い換えることで明確になります。 「自分のため」「自社のため」という観念が、エゴの肥大化を招きます。 藤原直哉先生は、「これからの時代、私たちには信仰が必要だ」とおっしゃっています。「信仰がないと、損得で動いてしまう」と。信仰とは、理念や信念と置き換えてもいいでしょう。 こうした政治家や官僚を批判していても、何もはじまりません。まずは私たち自身が身を正すべきでしょう。 『原発ホワイトアウト』の中にも、「国の政治は、その国民の民度を超えられない。」という印象的な一文があります。 まずは身の回りの整理・整頓・清掃から。おっと、こじつけですね(笑)。 (小早)お知らせ◆福井発 実践企業見学会(有)ファインの見学+小早の講演 弊社支援先であるファイン。インクまみれだった工場内は、いまやピカピカ。そうじによって磨かれた社員の笑顔を、ぜひ見に来てください。 日時: 5月17日(土)     13:00~14:00 小早講演     14:00~15:00 ファイン発表     15:00~16:00 ファイン見学会場所: 有限会社ファイン本社工場     (福井県鯖江市下河端517)会費: 3,000円主催: 株式会社そうじの力◆山口発 実践企業見学会ダスキンせらいの見学+小早の講演 弊社支援先である(株)ダスキンせらい。おそうじの会社だけあって床はピカピカですが、整理・整頓が苦手でした。それが今では優等生に! 日時: 5月24日(土)     13:00~14:00 小早講演     14:00~15:00 ダスキンせらい発表     15:00~16:00 ダスキンせらい見学場所: 株式会社ダスキンせらい    (山口県光市光井1-14-17 )会費: 1,000円主催: 株式会社ダスキンせらい◆講演録 無料頒布「働くってどういうこと?」  小早祥一郎が高崎市立高松中学校の生徒に向けて「働くってどういうこと?」と題して講演を行いました。 その講演の全文と生徒の感想文(抜粋)をこのたび小冊子にまとめました。 生徒たちの真剣さと感性の鋭さが伝わる内容です。 ご希望の方に無料で進呈しますので、巻末の連絡先までご請求ください。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動(環境整備=5S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)は、「人づくりと組織づくり」です。講義、プロジェクトチームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。