【第112号】徹底すると楽しくなる!|(株)小河原建設
事例紹介徹底すると楽しくなる! 〈ここまでやるか?と言わせよう〉~小河原建設「そうじの力」の取り組み~東京都中野区の(株)小河原建設。十年ほど前から「環境整備」という名目でそうじに取り組んできましたが、なかなか定着しないということで、四年ほど前に私にお声がかかりました。当時から、ある程度のレベルにはあったものの、私の目から見ると、まだまだ不十分でした。そこで、活動のテーマを、①徹底する②自主的に取り組む、としました。当初は、とにかくモノが多かったのですが、徹底的なスリム化を図りました。モノが多いと、秩序づけることが難しくなります。事務所内では、書類が山積みになっていたデスクを、机上ゼロにしました。風通しをよくするために、パーテーションを廃止しました。やたらベタベタと壁に貼ってあった掲示物を撤去しました。倉庫には、建築現場から引き上げてきた資材が積み上げられていましたが、これらも処分したり売ったりして、なくしました。トイレも、当初は、見える所はキレイなのですが、目皿をひっくり返すと裏に尿石がこびりついていたりしました。実習を繰り返して、とにかく裏まで徹底して磨くようになりました。建築現場のそうじにも、力を入れました。同社の目標は、「東京一キレイな現場」です。この目標を達成するために、「素足で歩ける」ことを、現場の基準としました。こうしたことを、「言われたからやる」ではなく、「自らやる」風土に換えるために、リーダーの育成に力を入れました。あえて、役職にこだわらず、素直で前向きな人をリーダーに任命しました。リーダーミーティングにおいて、「どうしたら皆が自発的に動くようになるのか?」「どうしたら徹底できるのか?」といったことについて、いろいろなアイデアを出し合いました。年間スケジュールを立てることで、より大局的な視野で活動ができるようになりました。また、週に一回、テーマを決めて活動する「週一環境整備」も、リーダーが自ら毎回のテーマを考えて企画し実施しています。おかげさまで、今では誰に言われることもなく、自分たちでどんどん進化・深化させていっています。歴代リーダーたちがグイグイと引っ張って行ってくれるので、私が見てもビックリするくらい整ってきています。たとえば事務用品。定位置化がすごいのです。セロテープやパンチなどが定位置化してあるのは当たり前。驚いたのは、置時計やハンガーツリーにも定位置化のためのマーキングがしてあります。また、事務用品が残り少なくなってきた時に発注がしやすいようにタグがつけてあります。さらに、単価を表示することで、コスト意識も上げようと試みています。実は事務用品の整備を行っているのは、パートの女性です。彼女は、この活動が楽しくて仕方がないそうです。彼女に任せることで、格段にレベルアップしました。建築現場のレベルも上がっています。先日の研修においては、私もついに素足で現場を歩きました。さすがに黒い靴下がうっすら白くなりましたが(笑)、危ないモノが一切ないため、安心して歩くことができました。同社では、定期的に近隣の公園のトイレそうじや駅前のそうじにも取り組んでいます。おかげで公園のトイレはキレイになり、余力があるので、今は遊具の清掃なども行っているそうです。以前はゴミがたくさん捨てられていた駅前も、最近ではほとんどゴミを見かけなくなったそうです。不思議なことに、こうして徹底して取り組むと、自然に楽しくなってきます。相手に「おい、そこまでやるか?」と言わせようと、エスカレートしていきます(笑)。同社の今後のテーマは、まさに「楽しむ」こと。楽しむための色々なアイデアを試しています。 (小早)出張おそうじデモンストレーション実施レポート⑨「油汚れ対策に近道なし」私が取り組んでいる「法人向け出張おそうじデモンストレーション」も、お陰様で通算80回を超えました。 ほとんどのお客様に、「こんなに分解できるとは知らなかった」「毎日そうじをしていても、細かい所にまで目が行っていなかったことに気づきました」「見えない部分にまで気を留めることは、仕事にも役立つと思いました」「時間を決めて行うことの大切さを理解できました」「とても丁寧かつ解りやすく教えていただきました」「トイレそうじだけでなく、書類の片付け方法や部屋のそうじのやり方も教えていただけたらと思います」などと、ご満足を頂いております。 ところが、ある業種の企業さんには、なかなかご満足が頂けず、苦戦が続いております。それは、飲食業です。 もちろん、飲食業においても、デモンストレーションの内容は同じです。トイレを徹底的にキレイにしていくのです。 そのこと自体は評価をしていただくものの、「ところで、厨房のこびりついた油汚れは、どうして落としたら良いのか?」「忙しく、人も少ない中で、もっと短時間で汚れを落とせる道具や洗剤はないのか?」といったご質問をよく受けるのです。 私自身が心得ている知識と経験を総動員して油汚れへの対処法をお伝えするのですが、なかなか満足した表情をして頂けることが少ないのです。 そこで、懇意にしている(株)BMコーポレーションの室岡社長を訪ねました。同社は、プロの清掃業者向けの資材や機材を販売しており、室岡社長は清掃用具に関してはどんな疑問も丁寧に答えてくれるプロ中のプロです。 室岡社長いわく「古くなった油汚れは結局強い洗剤が必要で、かなり手間をかけなくては落ちないよ。そんな大変なことにならないように日々の手間を惜しまないことしか解決方法はないんだよ。」とのことでした。「それができないならプロの業者に依頼をするべきだね。」とも。 厨房を常にキレイにしている焼き鳥屋さんは、「月に一度定休日を使って丸一日かけて徹底的に油を取り除くそうだよ。そして毎日のそうじも丁寧にしてキレイな厨房を維持しているよ。」とのこと。油汚れ対策に近道はないようです。 常々弊社がお伝えしている、「毎日コツコツと取り組むこと」の重要性を再確認できました。 (飯塚)おそうじコラム続けると本物になる~ブームとは「続かない」ということ ~昨年の夏の甲子園では、わが群馬県の代表である前橋育英高校が初優勝しました。同校ナインが、毎朝近隣のゴミ拾いをしていることが紹介され、全国から、「実はわが校もゴミ拾いをしています」「ウチはトイレそうじをしています」という話題が聞こえてくるようになりました。 その影響を受けて、ずいぶん多くのチームがそうじに取り組むようになったことでしょう。 そのこと自体は、大いに結構ですし、喜ばしいことではあります。 しかし、それが一時の「ブーム」あるいは「流行り」で終わるとしたら、それはとても残念なことです。 そうじに取り組むチームが、勝っているうちはいいのです。勝てなくなると、途端に「あんなのはダメだよ」と言ってやめてしまうことが多いのではないでしょうか。 物事が「本物」であるためには、二つのことが必要です。「徹底」することと「継続」することです。最初の動機がどうであれ、この二つのことをすれば、本物になります。 たとえば、ハガキを書く、ということがあります。私も以前はハガキなど書いたことがなかったのですが、今は、名刺交換した人やお世話になった人、家族などにちょくちょくハガキを書いています。 その話をした時に、ある人が、「ハガキを書くというのが、何となく営業的なテクニックのような気がして嫌なんですよね」と言っていました。確かに、私も当初は営業テクニックのつもりだったかも知れません。しかし、それでもかれこれ十年ほど書き続けています。 私のハガキが「本物」になったかどうかは分かりませんが、十年続けてきた以上、私は一生続けていくでしょう。 たとえ偽善であっても、続ければ本物になります。著名人や社会的地位の高い人が、多額の寄付をしたとします。世の人は、「あれは売名行為だよ」と冷ややかな目で見るかも知れません。しかし、その売名行為も、十年、二十年と続ければ、立派な「本物」ではないでしょうか。 最近、某大手スーパーマーケットチェーンが、店舗近隣のゴミ拾いを始めた、と聞きました。 こうしてそうじに取り組み始めた企業や学校が、飽くことなく、目先の結果にとらわれることなく、地道に続けていってほしいと願わずにいられません。 (小早)輝ちゃんはミタ!小河原建設発表会で一番喜んでいる小早をミタ!9月25日に小河原建設の外部向け発表会が開催されました。はや3回目の開催となりましたが、そのたびに活動が進化・深化していることに驚かされます。それを一番喜んでいるのがこの発表会で講師をつとめた小早のようです。 本誌の巻頭ページでも紹介があるように、多くの改善が成果として目に見える形になっていました。その一つ一つに小早が喜んでいるのは表情から一目瞭然だったのですが、一番の喜びはそこではなかったようです。 発表会は、①リーダーからの活動報告、②社内・現場見学会、③小早の講演という構成です。 社内・現場見学会では小河原建設の皆様がそれぞれの持ち場で参加者の方々に活動の成果を説明しました。この時、説明する際の皆様の表情が過去2回の発表会の時と大きく違っているように見えました。 今までの活動の成果に自信を持ったのでしょう、説明する様子は堂々として熱がこもっています。なにより楽しそうで「もっと見てほしい」「もっと聞いてほしい」という感じがひしひしと伝わってきます。 中でも今回事務用品の整頓方法を劇的に改善した女性パート社員のSさんの説明は圧巻でした。 忙しい日頃の業務の合間時間でこの活動に注いだエネルギーがどれだけのモノだったのかSさんの楽しそうな表情が雄弁に物語っていました。 今回の発表会で総じて伝わってきたのは小河原建設のスタッフの方々は皆さん会社が好きなんだなあということです。 小早が一番喜んだのはまさにそこでした。社内がキレイになったり、業績が良くなったりすることはもちろん嬉しいことですが、自ら進んで喜んで楽しく仕事をする皆さんの姿がなによりの喜びのようです。 私たちスタッフも、小早の掲げるそうした理念に共鳴して集っています。支援先のそのような姿を見ると私も嬉しくなります。 (飯塚)今月の読書から『日本人の知らない武士道』アレクサンダー・ベネット 著~武士道の神髄は「残心」~著者はオーストラリア出身で、高校生の時に交換留学で日本に来て剣道を始め、その魅力にハマり、以後日本に定住して武道と武士道を研究している人です。剣道七段で、関西大学の教授というのだから、筋金入りの「武士道フリーク」です。 大学の先生だけに、この本は「武士道とは何か」ということをややアカデミックに論じているので、もっと生々しい体験記を期待していた私には少々退屈でした。 しかしこの本の中で、ひとつ強烈なインパクトを感じた一節がありました。それは、武士道の神髄は「残心(ざんしん)」にある、というくだりです。 私は合気道をやっているので分かるのですが、残心というのは、相手を投げた後に(剣道ならば打った後に)、相手に背を向けたり自分の体勢を崩したりせず、投げたまま(打ったまま)の姿勢を保って相手を制することを言います。 これは、相手がいつ反撃してきても良いように備えるということです。武道とは本来、殺し合いの真剣勝負のための稽古だったことから来ています。 著者は、「柔道はガッツポーズで堕落した」と言います。確かに、剣道にガッツポーズはありませんし、もちろん、合気道にもありません。残心すれば、ガッツポーズは不可能なのです。 残心は、相手の不意の反撃に備えるだけでなく、相手への慮りという側面もあります。真剣勝負ならば、相手は死んでいるわけです。勝負事とはいえ、死んだ相手にガッツポーズは失礼でしょう。死者に対する憐憫の情を表すのも、残心なのです。 学生時代、(まだ合気道に接していない頃)柔道でガッツポーズを何度もしていた自分が恥ずかしくなります。 このくだりを読んでいて、なんとなく、「残心」はそうじにも通じるものがあるな、と感じました。決してこじつけではありませんよ(笑)。 具体的に言うと、そうじをした後の片付けです。 そうじをしてキレイにしただけではダメなのです。次回、そうじがしやすいように、そうじ道具をキレイに洗って干して、所定の保管場所に格納しておく。 そうじそのものも、単に汚れを落としたり磨いたりするだけでなく、使う人が気持ちよく清々しく使えるように気を配る。たとえば、トイレットペーパーを三角折りにしたり、手拭きタオルの四隅をきちんと伸ばしたり、一輪挿しを飾ったり。 使う人が、より使いやすく、という観点は、いわゆる「整頓」というのも、これに含まれるでしょう。 「残心」を意識することで、そうじがより高次元のものに進化していくでしょう。武道とそうじには、何か通じ合うものがあります。 (小早)お知らせ◆福井発 実践企業見学会(有)ファインの見学+小早の講演 弊社支援先であるファイン。眼鏡のフレームなどにデザインを印刷する会社です。インクまみれだった工場内は、いまやピカピカ。そうじによって磨かれた社員の笑顔を、ぜひ見に来てください。 日時: 12月13日(土) 13:00~14:00 ファイン発表 14:00~15:00 ファイン見学会 15:00~16:00 小早祥一郎講演場所: 有限会社ファイン本社工場 (福井県鯖江市下河端517)会費: 3,000円 ※詳細はお問合せください。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動(環境整備=5S=整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、「人づくりと組織づくり」です。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。