【第113号】気づきの感度を高めると面白くなる|西村ジョイ(株)

事例紹介「気づく」ことの大切さ 〈気づきの感度を高めると面白くなる〉~西村ジョイ「そうじの力」の取り組み~香川県高松市に本拠を置き、県内外に十一店舗を展開するホームセンター西村ジョイ。ここでちょうど一年前から、「そうじの力」のお手伝いをしています。同社では、もう随分前からそうじには力を入れてきたのですが、なにぶん、店舗数が多く、一店舗あたりの面積も広い、働いている人の数も多いということで、隅々にまで浸透させるのは容易なことではありません。ところで、なぜ意識して「そうじ」に取り組む必要があるのでしょうか?小売店舗として、売り場をキレイにするのは当たり前です。お客様に気持ち良く買い物をしてもらう基本は、キレイにすることです。しかし、もっと大事なのは、「見えない所」をキレイにすることなのです。バックヤード、倉庫、備品置き場、事務所、トイレなどです。表はキレイだけれども裏が汚い、というのは、どこかに矛盾を抱えています。表だけつくろっていても、どこかにボロが出てしまいます。見えない所をキレイにすることで、裏表のない「本物」のサービスが身に付くと考えます。人間でもよく「内面の美しさが外見に出る」などと言います。そこで研修では、主にバックヤードをキレイにする実習を重ねました。各店舗、売り場ごとに計画を立てて活動を進めていますが、最近では、自分たちで不備に気づいて、積極的に取り組むようになってきています。たとえば、ある店舗の木材売り場では、木材を並べている棚の奥もキレイにそうじをしたそうです。一般的に、木材棚の奥はホコリや木くずで汚いものですが、それに気づき、こうした見えない所に手が入るようになったことは、大きな成長です。今では、各店舗とも、売り場の商品棚をそうじする時には、単に並べてある商品のホコリを落とすだけでなく、一旦すべての商品を棚から降ろし、棚も動かして、棚の下や奥もキレイにそうじをするようになっています。またある店舗では、更衣室が大きく変わりました。以前は不要なモノがたくさん置いてあり、床も汚く、薄暗い更衣室だったのです。これではいけない、と、社員たちが立ち上がり、大改造に乗り出しました。不要物を捨て、スッキリさせました。床は、店舗で売れ残っていたカーペットに貼り換えました。壁も塗り替えました。暗い雰囲気だった更衣室が、男女ともに明るい部屋に生まれ変わりました。さすがにDIYの専門家です。この大改造に要したコストは、ほぼゼロです(笑)。更衣室がキレイだと、働く意欲も湧いてくるというものです。商売の質を高めるためには「気づき」の感度を高めることが大切です。先日、ある店舗を巡回していて、ふと上を見上げました。すると、天上からたくさんのフックが出ていることに気づきました。イベントの看板や電源コードなどをかけておくためにつけたものが、そのまま残っていたのでしょう。もちろん、すぐに取り外したことは言うまでもありません。「慣れ」から脱却して「ん?何か変だぞ」と感じることは、とても大切です。実習において、「そうじ道具のそうじ」をしたこともあります。えてして、そうじが終わったらそれですべてが完了した気分になり、道具の管理がおろそかになりがちです。しかし、そうじ道具が汚いと、キレイにしようというモチベーションが高まりません。実習では、雑巾やホウキ、チリトリなどをキレイに洗って干しました。実習後の感想では、参加者から「いかに自分の気づきの感度がにぶいか痛感した」「もっと気づく人間になりたい」といったコメントがたくさんでてきました。では、気づくにはどうしたら良いのでしょう?それには、「そうじを徹底する」のが一番です。何だか禅問答のようですが、間違いなく、そうじは気づきの感度を上げてくれます。(小早)おそうじ匠の技おそうじデモンストレーターのワンポイントレッスン~外せるモノは外す~そうじには「3つのコツ」があります。①「上から下」②「外せるモノは外す」③「隅・裏・奥・見えない所から」この3つのコツをおさえると本当にきれいにそうじをする事ができます。今回は、その中の②「外せるモノは外す」に焦点をあてます。「外せるモノは外す」というのは、どんなモノをどこまで外すのでしょうか?どの場面でも当てはまるコツですが、トイレを例にしてご説明します。 照明器具を外します。例えば、天井埋め込みの器具などは外れそうもないように思えますが、下に引っ張るだけで意外に簡単に外れるタイプのものもあります。換気扇はもちろん外して分解します。 ネジなどで留まっている部分も丁寧に外していくと羽の部分まで外すことができます。羽にたくさんホコリが溜まっています。窓も外します。外した窓は丸ごとシンクなどで洗います。外すことによってサッシのレールも洗いやすくなります。 トイレットペパーホルダーは、まずトイレットペーパーを外して裏まで拭きます。場合によってはドライバーを使ってホルダー自体も外します。このようにして外したモノは、バケツやシンクの中で水洗いをします。ブラシやスポンジを使って隅々まで洗います。 洋式便器の便座やフタなども外します。外してみると、ヒンジ部分や隙間になっていた部分が水拭きできるようになります。いろいろな型があるので絶対にとはいえませんが、多くの場合外れます。例に上げたトイレの場合に限らず、他の場所でも同様です。取り付けられたモノである以上必ず外せます。モノを外してそうじすることの最大の効用は、キワや隙間や裏までもキレイになりまるで新品の仕上がりになる事です。先日ある会社で、見たことのない最新型の便座に出くわしました。なんとか外そうだと思った瞬間、バシャーッと水が噴き出して水浸しに・・・(涙)。大失敗でしたが、おかげで仕組みがわかりました。失敗で学ぶこともあります(笑)。 (飯塚) おそうじコラム「そうだ 京都、行こう」~モノが少ないことの美点 ~ 決してJR東海の回し者ではありませんが(笑)、毎年この時期になると、『そうだ 京都、行こう』のキャンペーンが気にかかります。 そう言いつつも、京都に行く機会はそう多くないのですが、新幹線の中に貼ってあるポスターなどを眺めていると、確かに京都に行きたくなってしまうのです。 京都の魅力は何か、と問われれば、十人十色の答えが返ってくると思いますが、私の場合には寺社仏閣です。信心深いわけでも、普段から寺社に興味があるわけでもありませんが、過去に廻った京都の寺社は、今でも強烈に印象に残っています。 その印象を一言で表すならば、「モノが少ない」ということに尽きます。 どの建物を見て回っても、室内といい、庭といい、モノであふれている、という場面には出会ったことがありません。 といっても、モノが「ない」わけではありません。たとえば茶室。室内に、掛け軸がひとつと茶釜がひとつ。場合によっては、壺や屏風。 もし、同じ部屋に、掛け軸が十枚や二十枚掛けてあったとしたら、どうでしょう?いくら一枚一枚が値打ちのある掛け軸だったとしても、見た人が感じる価値は下がってしまいます。まして、たくさん掛けてあるだけで、もう「じっくり見よう」という意欲もなくなってしまいます。 寺院でもそうです。中にはたくさんの仏像を置いてある寺院もありますが、それよりも、一体の仏像をデンッと安置してある寺院の方が、高級感があります。 モノが少ないと、一つひとつのモノの持つ重みが増し、その空間全体の空気が締まる感じがします。 枯山水も、その典型だと思います。 砂で表現される水面に浮かぶ、石で表現される山々は、数が少ないからこそ、それぞれが庭の中で圧倒的な存在感を放っています。 もし、枯山水の中に、たくさんの山があったとしたら、興ざめですね。 「量は多ければ多いほど良い」と考える人もいますが、量が多くなるほど、一つひとつの持つ価値は小さくなります。 普段の生活の中でも、モノの量を減らし、少ないモノを活かし切る心を持ちたいものです。             (小早) 飛鳥はミタ!意欲ある若い方々の「そうじ」からの「気づき」をミタ!11月8日、(株)市川環境エンジニアリングの芝崎さんの主催する若手勉強会「Multiplication of Wisdom」にて、「そうじの持つ力」と題して、セミナーとミニおそうじデモンストレーションを実施させていただきました。 この勉強会は、「異なる専門分野を持った人々が集まって学ぶことで得られる、新たな発想や気付きを、自己の成長につなげ、生き方や仕事に生かすこと」を目的とし、持ち回りで講師をします 。メンバーは、個人でお仕事をされている方、経営者を目指している方、よりよい仕事を目指している会社員の方など様々です。          今回は、私が小早に同行したり、「出張おそうじデモンストレーション」を実施することで、自分なりに気づいた、『日々の「そうじ」が私たちひとりひとりにもたらす力』を3つに分けてお話しました。①気づく力 デモンストレーションでトイレの床をぞうきんで磨いていると、便器の裏や便座の隙間にほこりや汚れがあることに気づきます。普段の生活では見ない部分に目が行くようになります。トイレの臭いなどは普段は見えないところに隠れていることが多いのです。②判断力 小早は支援先にそうじを教える際に、まず徹底的にその場所の「整理」をするように指導します。長い期間では半年以上整理にかかるところもあります。整理は「要る・いらない」を判断することの連続です。つまり判断の訓練なのです。③決断力 要る・要らないを仕分けても、「勿体ない」と捨てられないでとっておく方もいます。小早は支援先で使われていなさそうなものを見ると必ず、「最後に使ったのはいつですか?」と確認します。「手放さないことで実は損をしていること」に気づいてもらい、処分する決断を促します。これも繰り返すので、自然と訓練になるのです。 セミナーの後は、実際の社屋トイレにて、おそうじデモンストレーションを実施しました。実際に便器や壁に触り、「なるほど~」とご納得いただきました。メンバーの皆さんから嬉しい感想をいただいたのでご紹介します。 「『そうじ』は、汚れを溜めて一気にやるものではなく、歯磨きのように毎日やるもの、そこで力が磨かれていくものなんですね。奥さんと早速実践します」(舘) 「初めて聞く話で、目からウロコでした。たかがそうじ、されどそうじですね!」(芝崎)  素敵な勉強会となりました。次回勉強会での実践報告が楽しみです。 (大槻)今月の読書から『外国人だけが知っている美しい日本』ステファン・シャウエッカー著~もっと郷土に誇りを持とう~著者はスイス出身で、カナダ留学中に日本人と出会ったことがきっかけで日本に興味を持ち、来日。現在は、日本人の妻と群馬県藤岡市に住み、日本への旅行を考えている、あるいは日本に興味を持っている外国人に、日本の観光情報を提供するサイト 『ジャパンガイド』を運営しています。 本書は全編にわたって、日本を賛美する内容になっています。富士山や京都、桜、紅葉、歌舞伎、温泉旅館といった定番の観光スポットはもちろんのこと、ちょっとマニアックな人里離れた穴場的観光地にもスポットを当てて紹介しています。すべて、著者が自分で歩いて得た情報を基に書かれているとか。 「日本では、財布を落としても、中身の現金がそのままで戻ってくる」とか、「女性一人でも夜の街を歩ける」とか、私たちにとっては当たり前のことが、外国人には驚きで、ゆえに日本が愛されるのだと言います。 こうした本を読んでいて思うのは、私たち日本人は、もっともっと日本という国、そしてそれぞれの住む地域を誇りに持つべきではないだろうか、ということです。 私も、子供の頃から、仕事、プライベートを問わず、いろいろな国を旅してきました。確かに、それぞれの国にそれぞれの魅力があります。とても印象に残っていて、何度も訪れたい国もあります。しかし、トータルで考えて、日本以上に素晴らしい国はないと思っています。 もっともっと、地域の良さを国内だけでなく、海外にもアピールしましょう。 ちなみにわが群馬県は、残念なことに、日経リサーチによる『地域ブランド力ランキング』が、毎年のように最下位前後の屈辱を味わっています(涙)。 しかしそれは、本当に魅力がないのではなく、地元の人たちが、地域の魅力に気づいていない、ということが大きな要因のように思います。群馬県には、草津温泉があります。万座スキー場があります。国定忠治で有名な赤城山があります。下仁田ネギやコンニャクがあります。上州牛と上州豚もおいしいです。 とはいえ、慢心してはいけません。 世界に誇れる郷土のひとつの条件は、「キレイである」ことだと思います。 実はこの本のタイトルを見たとき、きっと「日本は掃除が行き届いていてキレイだ」というような文章が書かれているのだろうと思って期待して読んだのですが、なぜかそのような記述はまったくありませんでした。 著者にとっては、日本はさほど清潔だとは感じられなかったのか、あるいは、タイトルにあるとおり、それは言わずもがなの前提だということなのでしょうか。 いずれにしても、身の回りのそうじを通じて、郷土をもっともっと魅力あるものにしていきたいです。         (小早)お知らせ◆福井発 実践企業見学会(有)ファインの見学+小早の講演 弊社支援先であるファイン。眼鏡のフレームなどにデザインを印刷する会社です。インクまみれだった工場内は、いまやピカピカ。そうじによって磨かれた社員の笑顔を、ぜひ見に来てください。 日時: 12月13日(土)      13:00~14:00 ファイン発表      14:00~15:00 ファイン見学会      15:00~16:00 小早祥一郎講演場所: 有限会社ファイン本社工場      (福井県鯖江市下河端517)会費: 3,000円 ※詳細はお問合せください。株式会社そうじの力環境整備を核とした経営改革の支援「そうじの力」の活動(環境整備=5S=整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、「人づくりと組織づくり」です。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。支援に当たっては、まずは調査に伺います。全国どこでも可能ですので、お気軽にお問い合せください。