【第116号】「鋳造業で一流」から「製造業で一流」へ|(株)マツバラ

事例紹介「鋳造業で一流」から「製造業で一流」へ~やり続ければ、必ず意識は上がる~岐阜県関市の(株)マツバラ。小物部品を得意とする社員百二十名ほどの鋳造メーカーです。弊社のお手伝いにより、同社で「おそうじパワーアップ活動」が始まったのはちょうど五年前。鋳造工場というのは、砂で鋳型を作るため、製造工程で大量の粉塵が発生します。鋳造工場における「そうじ」とは、まさに「粉塵との闘い」なのです。五年間にわたる活動のおかげで、鋳造業界としては非常識なくらいにキレイになりました。同社では、社長宣言により、そうじを「経営の最重要課題」「未来永劫に取り組む課題」として位置づけています。そうじを中心にして、改善提案、原価低減、納期短縮、品質向上などのプロジェクトに取り組んできました。そのかいあって、今では主力製品を「世界最安値」で提供することに成功しています。世界中の自動車メーカーなどにとって、同社はなくてはならない存在になりつつあるのです。とはいえ、同社が存在感を放つのはまだ同業界内での話。先日、ある取引先の社長が工場見学に訪れた際、「鋳造工場としては九十点。ただし製造業としては三十点だ。」という辛口のコメントをもらったそうです。しかし、その状況にも変化の兆しが見られます。今まで改善が進まなかった部分にも、手が入るようになってきました。たとえば、原材料をストックしてある棚。この棚の裏側には大量の粉塵が堆積していました。しかし今では、その粉塵がキレイに取り除かれています。裏側なので、顔を突っ込んで見なければ分らないのですが、そこがキレイになっています。また、補修部品をストックしてある部品庫の棚。ここも、床や棚に粉塵が溜まっていました。ところが、棚に乗っているトレーを一つひとつ取り出して拭いているらしく、棚そのもの、そしてトレーがキレイになっているのです。課題だった「見えない所」に手が入るようになってきたのです。部品庫の担当者がレポートで次のようなコメントを書いています。「(議事録に)営繕室内床が“キレイ”との旨が書かれており、良かった。何度か指摘を受けていた場所だったので、評価されて良かった。今後も継続していき、棚の下を気にされるイメージを持たれないよう、保全の床は“キレイ”だとインプットされるよう努めていきたい」。品質保証部では、品質検査を行うサンプル品を多数ストックしています。以前は、あちこちに部品が置かれていて、ゴミなのかサンプル品なのか分からない状態でした。今は、サンプル品に専用のタグをつけることで、「行方不明」がなくなりました。保全係も品質保証部も、以前は汚く、乱れていました。しかし今は、生まれ変わったように熱心に取り組んでいます。私以前、巡回するたびにケチをつけていましたが、今は誉めることの方が多くなってきました。いずれも、毎回の私の指摘が悔しかったと思います。それをバネにして頑張ってくれているのだと思います。いわゆる整頓も、習慣になりつつあります。鉄のお湯を注ぐ工程で使う「ノロ取り棒」と呼ばれる工具も、きちんと置き場に整うようになってきました。休憩所の椅子も、以前はグチャグチャでしたが、今はいつ見てもキレイにテーブルに入れられています。最近は、社員さんたちの表情が明るくなってきました。自信を持って業務に取り組んでいるのが感じられます。同社の一つの特徴は、経営者による率先垂範です。松原史尚社長は、毎日最低三〇分間、工場内外でそうじをしています。経営陣が真っ黒になってそうじに取り組んでいる姿を、社員はいつも見ています。松原社長のコメントです。「そうじはプラスのエネルギーを発生させます。このプラスのエネルギーは必ず周囲に伝播します。取引先もそれを敏感に感じるはずです。」同社の取り組みは、第二ステージに入ったと言っていいでしょう。  (小早)おそうじ匠の技車のそうじ パート①~積んであるモノは全て外に出す ~統計的に、自分で洗車をする人は事故が少ないそうです。車をキレイにすることにより、愛着が生まれ、丁寧に運転をするのかも知れません。 車のそうじには、いくつかのコツがあります。一度ではご紹介しきれないので、数回に分けてお伝えいたします。まずは①「積んであるモノは全て外に出す」です。いきなり洗車をせずに、まずは車内に積んでいるあらゆるモノを車外に出します。トランクやダッシュボードの中に積んであるモノはもちろんです。シートの下などは、落としたまま忘れていたモノなどがあったりします。ドアのサイドポケットなどにも置きっぱなしになっているモノがある場合があります。とにかく全てのモノを出して並べてみます。その次に、出したモノのうち、不要なモノを捨てます。積んだり下ろしたりが面倒くさくて常時置きっぱなしになってしまうものが多くあります。私の場合、ハンドクリームとかホットカイロとか、使わないのに何年も積んだままになっていました。そういったものを全部捨てました。車検証入れは必ず中身を確認しましょう。期限が切れた自賠責保険証や納税証明書などは捨てて、最新の書類だけを残しておくようにしましょう。モノがすっかりなくなった後の収納スペース内はとても拭きそうじがしやすくなります。隅々までしっかり水拭きします。水拭きが終わったら、ここで車内に残すと決めたモノを所定の場所に収納します。その際にモノを一つ一つキレイに拭きます。あわせて、スペアタイヤやジャッキなども車外に出します。空気圧や安全に使用できるかなどのチェックをします。もし万が一使う場面が来ても安心できます。洗車する度に「積んであるモノは全て外に出す」作業を繰り返します。すると、その度にモノの量が少なくなります。モノが少なくなればなるほど、そうじがしやすい車内になります。また、実際にそうじにかかる時間も短くなります。  まずは車内の「整理」なのです。(飯塚)おそうじコラム依存した人から自立した人へ~雑誌『れいろう』掲載エッセーから ~公益財団法人モラロジー研究所発行の月刊誌『れいろう』平成二七年二月号に、編集部からの依頼を受けて書いた私のエッセーが掲載されました。今回はこの全文を転載します。    (以下転載) 「あのアホな課長じゃ、ダメだよ!」  サラリーマン時代の私は、しょっちゅう上司と喧嘩をしていました。当時、保守的な風土があった会社に対して若い感覚でいろいろな改善提案をぶつけていたのですが、それがことごとく却下されてしまうのです。私は飲みに行っては愚痴をこぼしていました。 結局、その状況を打破できず、十二年間勤めた会社を辞めました。しかし、当初やろうと思っていた仕事もうまくいかず、悶々としていた時に、茨城県の山村で私塾「天命舎」を開き、人間教育をされている黒田悦司先生に出会ったのです。黒田先生にいろいろなことを教えていただいているうちに、私は、自分自身が「依存人格」である、ということに気づいたのです。以前の私は、物事が解決しないのは上司や会社が悪いからだと思っていました。しかし、それは上司に依存し、会社に依存している、ということなのです。 私は、「依存人格」の反対の「自立人格」に転換すると決意しました。ところが誠に残念なことに、人は急には変われないのです。人間を根底から変えるには何が必要か。どんな実践行動が必要なのかと考え、私はその日から「そうじ」を始めたのです。 毎日毎日、トイレそうじや近隣のゴミ拾いなどを続けました。すると少しずつ、でも確かに私の心は変わっていきました。人を批判することが少なくなっていったのです。道端にゴミが落ちています。投げ捨てたのは私ではありません。しかし、自分にできることはあります。立ち止まってゴミを拾えば、そのゴミはなくなります。つまり、問題が解決したということです。 世の中の問題の多くは「責任の所在」と「解決する人」が別々だということに気づきました。言い換えれば、自分が動けば世の中は変わるのです。 そうじを何年も続けながら、私は自分の人生がどんどん加速度的に開けていくのを感じました。私は、そうじとは問題解決力を養うための日常訓練だと確信するようになりました。そこで、この「そうじ」を通じて企業の経営改革や人材育成に役立てるためのコンサルティング会社を立ち上げたのです。世の中を「依存した人」でなく「自立した人」であふれさせるために。 おかげさまで、お手伝いをした多くの企業から有用な人材が育ってきています。志を同じくするスタッフも三人に増えました。すべては、依存人格を自立人格に変える「そうじの力」のおかげだと感じています。(以上転載終わり)  (小早)飛鳥はミタ!そうじ」で通じ合う親子の絆をミタ!埼玉県八潮市に所在する、株式会社右川ゴム製造所。明治三十年ゴム鞠製造会社として創業、工業用ゴム製品を主力とする一〇〇年企業です。 右川誠治社長は四代目社長。「会長(お父上)がなかなかモノを捨てられない人で…」というお悩みを受け、まずは会長と社長の机のある部屋全体を整理してみましょうと、昨年十二月より社長と会長の個人レッスンを弊社で請け負うことになりました。 レッスン一回目。机の上のモノ、中のモノをすべて取り出します。会長だけでなく、社長もモノを溜め込んでしまうタイプのようです。最初の日は、「これはちょっと…とっておいてもいいですか?」と、お二人ともなかなか捨てることができませんでした。 レッスン二回目。社長、会長ともに「捨てよう!」という意欲が高まってきました。社長の机の後ろにあって、物置と化していたテーブルを思い切ってとり除きました。さらに社長と会長の机を遮っていたパーテーションもとり除きました。お互いに、仕事のようすがよく見えるようになりました。 レッスン三回目。「今まで前後に配置していた社長と会長の机を隣同士にしたい」との社長の提案で、机を移動しました。捨てるペースもどんどん早くなり、「社長、この資料は使う?」「要らないです会長、捨ててください」と、会話が生まれてきました。 レッスン四回目が終了し、机も棚も壁もすっきりした部屋となりました。社長は「机や部屋が片づくのと同時に、会長がとても変わったんです」と嬉しそうに仰いました。 「以前は勉強会などでいただいた資料すべてファイリングしていたのが、一緒に整理を始めてからは、『これはとっておいた方がいいか』と私に聞いてくるようになったんです。今までそんなことを聞いてくることはありませんでした。でも今思うと、会長がそのように資料をとっておいたのは、私に見せたいという親心だったんですね。一緒に整理の作業をして、それがわかりました(社長)」  会長の机は書類が再び積み重なることはなく、綺麗に保たれています。場の整理を通じて、親子の心が通い、すれ違いがなくなった、それを強く実感された社長。会社全体での取り組みを決断され、いよいよ三月から同社全体での「そうじの力」活動がスタートします。 (大槻)今月の読書から『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治著~日本国と日本人が「自立」する時~沖縄の住宅地では、米軍機が建物すれすれの超低空でひっきりなしにブンブン飛び回っているそうです。 ところが米軍機は、米軍住宅の上は絶対に低空飛行をしない。アメリカ本土でも、住宅地の上を軍用機が低空飛行することは法律によって厳重に規制されているのだそうです。 話は沖縄のことにとどまらず、実は米軍機は、日本中どこでも好きなように低空飛行ができるのだそうです。 首都圏上空には、米軍の横田空域があって、羽田空港から西へ向かう飛行機は、そこを避けるため、まず東のほうへ飛んで、そこから急上昇・急旋回してこの空域を越えなければなりません。 もっと驚くのは、アメリカ政府関係者や軍関係者は、在日米軍基地へ降り立ち、そこからノーチェックで日本国中に出入りしていると言います。つまり諜報活動などやりたい放題ということです。 これは、日米安保条約とそれに基づく日米地位協定によって認められたことであり、我々日本人は、このことに抗議する権利すらないのだそうです。 つまり、戦後70年も経った今でも、日本は実質的にアメリカの占領下にある、と言えるのです。 「とんでもない!アメリカはケシカラン!」というのが著者の主張ではありません。なぜならば、この状況を作ったのは、他ならぬ我々日本人だからです。 私たち日本人には、これまでに何度もこの状況を変えるチャンスがありました。まず、1951年の占領下から「独立」するためのサンフランシスコ講和条約締結時、そして1960年の安保改定の時。 驚くことに、これらの節目で、引き続き米軍に日本に駐留するように求めたのは、当時の日本の政治家や官僚、つまり日本の支配層だったというのです。 主な理由として、共産主義革命を恐れたこと、天皇制を維持するための条件だったこと、そして、他国からの侵略に対する軍事抑止力を維持するため、などが挙げられています。 なるほど、当時の日本の支配層にとってみれば、やむを得ない選択だったのかも知れません。 問題は、その当時の構造が今だにそのままになっていること。そして日本の支配層が、「米国の言いなりになる=自分の利権が増す」という認識のもとに、これを堅持しようとしていることにあります。 これは、「特定の誰かが悪い」という話ではありません。私たち一人ひとりが「自立」できるかどうか、という問題です。そろそろ、日本という国が自立する時がきているのではないでしょうか。 まずは足下のゴミを拾うことから(笑)。 深く考えさせられる、多くの人に読んでもらいたい力作です。       (小早)お知らせ◆「そうじの力」セミナー日程 ・3月12日(木)18:00~19:30 群馬県    高崎ビジネスパーク小八木 ・3月18日(水)18:30~20:00 東京都    テクノプラザかつしか ・4月9日(木)18:00~19:30 群馬県    前橋テルサ第4会議室 ・4月22日(水)18:00~19:30 静岡県    沼津商工会議所4階会議室D◆実践企業見学会  ・4月15日(水)13:30~17:00 東京都    (株)小河原建設     事務所、建築現場見学および     小早祥一郎の講演  編集後記紹介されました! 日本大学経済学部教授の大森信先生が、『毎日の掃除で、会社はみるみる強くなる』という著書を出版されました。 その中で、本誌〈事例紹介〉で取り上げた(株)マツバラのことを紹介して頂いています。 大森先生は、昨年の1月に、私が同社を支援する際にご同行頂き、取材をして頂きました。 同書の『おわりに』には、「本書のメッセージを一言で言い表わすならば、『掃除の力』です。」と書かれています。参考になる内容です。ぜひお読みください。    (小早)株式会社そうじの力環境整備(5S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を核とした経営改革の支援弊社はそうじを通じた「人づくりと組織づくり」を支援します。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)お気軽にお問い合せください。