【第119号】やり続けていると、いつの間にかベクトルが合ってくる|(株)小河原建設
事例紹介やり続けていると、いつの間にかベクトルが合ってくる〈自ら課題を見つけ、取り組む〉~株式会社小河原建設 環境整備の取り組み~東京都中野区にある(株)小河原建設。「都心で暮らす本物の木の家」をキャッチフレーズにした注文住宅を提供する住宅事業部と、高層ビルなどを請け負う特建事業部があります。同社は「東京一キレイな現場」を目指して活動中です。同社が環境整備を始めたのは今から十二年前。もっともっと活動の質を高めたいということで私にオファーがあり、強化プロジェクトを立ち上げたのが今から五年前でした。それから二年間、毎月二回お邪魔し、お手伝いしてきました。最初は他社と同じく、「捨てる」ところから始まりました。現場から持ち帰った材料や使っていない道具など、大型トラック一杯分を捨てました。また、トイレそうじや車両の整備、事務所のデスクの整理・整頓、そして、建築現場のそうじにも取り組んできました。二年間で、会社全体が見違えるほどにキレイになりました。今は、年に一~二回の研修を受けていただき、それ以外は自分たちで活動を進めてもらっています。先日、この小河原建設で環境整備の見学会が開催されました。同社がこの見学会を開催するのはこれで五回目です。驚かされるのは、毎回、見学会のたびにレベルが上がっていることです。今回印象に残ったことのひとつが、周辺地域の清掃です。以前から、月に一回、最寄り駅である地下鉄の新中野駅周辺の清掃には取り組んでいました。そのかいあって、新中野駅周辺はゴミも減り随分とキレイになってきたと言います。それだけでは飽き足らなくなった彼らは、新中野駅からJR中野駅までの間の歩道、徒歩にして約二十分の距離を清掃するようになったのです。マンネリを打破するために、「何か面白い取り組みができないか?」と彼らなりに考えて出てきた案のようです。地域をそうじしていると、色々な人から「ご苦労様」「ありがとう」と声をかけられるのが嬉しいと言います。また、会社の宣伝にもなるので、一石二鳥です。もう一つ私が感心したのは、「そうじ道具の管理方法」です。今まで、使い終わったそうじ道具は、キレイに洗って干した上で、棚に収納していました。しかし、生乾きのまま棚に収納したり、棚の中で道具が崩れて乱雑になったりする問題がありました。そこで、ある社員の発案で、干した状態をそのまま収納状態とするようにしたのです。これならば、見た目もカッコイイし、生乾きのまましまうこともありません。この場所は、事務所の裏側にあるスレート屋根で覆われた「半屋外」です。表からは見えない「裏側」です。通常、こうした裏側はなかなか整わないものですが、こういう場所にも手が入るようになったということは、同社の取り組みが、まさに「やらされる」取り組みを脱却して「自ら行う」取り組みにステージが上がったという証拠でしょう。今期のプロジェクトリーダーである藤田さんは、まだ若く社歴も浅いのですが、彼なりの感性を存分に発揮して、先輩たちを引っ張っていってくれているようです。建築現場も見せてもらいましたが、同社が目指している「素足で歩ける」現場に近づきつつあります。安全対策も万全で、仮設の階段は、まるで本設の階段のように頑丈でキレイです。同社の協力会社の人が言っていましたが、同社の現場は、他社に比べてトイレがキレイだと。協力会社の人間が誉めるのですから、同社の取り組みは上っ面だけではありません。見学会の冒頭に挨拶に立った同社の高橋正樹専務は、「当初、私自身がそうじに対して抵抗感がありました。それでも、続けているうちに、不思議なことに、いつの間にか社内のベクトルが合ってきたのです。」と言っていました。同社の業績も、ここのところ快調なようです。同社の小河原敬彦社長は、以前から、社員たちが「自ら考え自ら動く」ことを願っていました。同社は環境整備を通じて、まさにそうした社風になりつつあります。 (小早)おそうじ匠の技車のそうじパート④~見えない所をそうじする~洗車の締めくくりとして忘れてはいけないコツが「見えない所をそうじする」ということです。例えば、①車の内側ならシートの下、ハンドルの裏側など。そのほか隙間があれば全て隙間の奥の見えない所までそうじするようにします。②車の外側ならばエンジンルーム内部やタイヤハウスの内側、給油口の周囲やドアのヒンジ部やスライドドアのレールなどです。 「見えない所」は「そうじがやりにくい所」でもあります。コツとしてはその場所に適した道具を用意するということです。車内では歯ブラシや竹串などがあると便利です。細かい隙間に挟まったホコリなどを歯ブラシで丁寧にかき出します。また、エアコンの送風口などは竹串にぞうきんを巻くと奥までキレイにすることができます。シートの下は直接目で見てみましょう。 見てみると落ちているゴミやホコリに気がつきます。シートのレールの隙間など竹串やぞうきんを使って拭き上げます。 車外でも給油口の周囲を磨く時には歯ブラシが役立ちます。タイヤハウスの内側も洗います。その時にはタイヤブラシが有効です。水洗いをするだけでキレイになります。 エンジンルーム内部は水を掛けたりしないで固く絞ったぞうきんで拭き上げます。ボンネットの内側も拭きます。 この時、エンジンオイル、オートマオイル、ブレーキ液、バッテリー液、ウォッシャー液、冷却水などのチェックもします。これで安心で快適です。もう安全運転しかできません(笑)。 (飯塚)おそうじコラム共感できるビジョンを掲げているか?~誰もあなたの我欲についてはいかない ~この四月は、全国で市町村長選や県議会議員、市町村議会議員選挙などが行われました。 四月末、県議会議員選挙を翌日に控えた日の夕方、私は群馬県内のとある場所で歩道を歩いていました。 候補者の街宣カーが、大声を張り上げて「最後のお願い」に走り回っています。 その中のひとつの車から、「勝たせてください!負けるわけには参りません!」という絶叫が聞こえてきます。 私はそのあまりに身勝手なセリフに、怒りを通り越して笑ってしまいました。 「勝ちたい」「負けるわけにはいかない」というのは、アナタの事情であって、私たち市民には何ら関係ありません。 「○○(候補者の氏名)です!頑張ります!一生懸命やります!」というセリフも同様です。いったい、「何を」頑張るのですか?「何を」一生懸命やるのでしょうか? 政治家(候補)の姿勢は滑稽ですが、よくよく考えてみると、企業経営者でも同じことが言えます。 たとえば、「今期の売上は○○億円を目指すぞ!」という目標(スローガン)。一見、合理的な目標に思えます。しかし、売上が何億円になろうと、社員にはいまひとつピンと来ません。ましてや、お客様や世間一般の人たちから見れば、その企業の売上がいくらになろうと、どうでもよいことです。 辛辣な言い方をすれば、「それは単なるアナタの我欲でしょ」となります。 政治家であれば、「自分が議員になったら○○という政策を実行します。そうすると、県民の暮らしがこんなふうに良くなります。県内の問題が解決します」と宣言すべきでしょう。 同じく企業経営者であれば、「○○という製品を世に出す。○○というサービスを世の中に広めていく。そうすると、人々の暮らしがこんなふうに便利になる。世の中がより豊かになる」というビジョンを掲げるべきでしょう。その結果として、売上が○○億円になるのです。 政治家にせよ、企業経営者にせよ、我欲とまでは言わないにせよ、ひとりよがりのビジョン(目標、スローガン)ではなく、みんなに共感してもらえるものを掲げるべきだと思います。 (小早)おそうじ実践レポート「とんかつこがね」の環境整備日記②前回は客席部分のおそうじが主体のレポートでしたが、今回は玄関入り口部分の実践作業を紹介致します。 以前より玄関上部のガラス面には、パウチをしたPOP広告を張り付けていましたが、長年日光に晒されて色が褪せ、パウチも劣化してきたのでそろそろ新しく張り直さないと、と考えていました。 いざパウチを剥がしてみると、両面テープがガラス面に残ってしまい、糊の部分が半分溶けてネットリと糸を引くような状態で、直接触ると手にへばり付いてきました。 そこでスクレーパー(ほとんどカッターの様な鋭利なタイプ)を使って、少しづつこそげ落していったのですが、ガラスを傷めないよう慎重に作業を進めました。 スクレーパーで、ある程度こそげ落したら濡れた雑巾でテープを湿らし、またこそげ落すという作業を続け、結局全部のテープを剥がすのに2時間ほどかかりましたが、スッキリとした状態になりました。 こうしてようやく新しいパウチPOPを貼ろうという事になったのですが、母親との会話の中で「貼らない方が良いんじゃない」との言葉が出てきました。 再度貼ったら数年後には同じ作業をする羽目になるからという理由でしたが、母親の一言で自分が一つの事に囚われていたと気づきました。パウチPOPはずっと貼ってあったから、無くす訳にはいかないと決め込んでいたのです。 パウチPOPを貼ると、店内から両面テープが丸見えになっていた事と、ガラスとの隙間に汚れが溜まりやすく清潔感が感じられないので、これは剥がしたほうがいいと、前々から思っていたのですがなかなか踏ん切りが付けずにいました。 ガラス面を塞いでいたものが無くなった事で、日光が差し込んで、店内が以前より明るくなりました。拭きそうじもしやすくなり、母親と「こんなに変わるんだね」と話をしましたが、これも思い切って現状を変えてみたおかげだと感じます。 そうじのコツはまず「要らないものは捨てる」です。この言葉を体感できた今回の実践作業でした。 (森川)今月の読書から『下町ロケット』池井戸潤 著~現場を見れば、企業の実力が分かる~「半沢直樹シリーズ」の池井戸潤による、中小企業を舞台にした企業小説です。平たく言えば、「中小企業 vs 巨大企業」。 とある中小企業が開発した特許技術をめぐり、日本を代表する巨大企業とこの中小企業が対立します。巨大企業の物量に圧倒されつつも、持ち前の底力を発揮したこの中小企業が粘り、最後には逆転、そして和解へ。 意図的に大企業を「悪者」に仕立て上げているところはありますが、中小企業の立場に立って読んでいると、ハラハラドキドキして、最後にはスカッとする、池井戸潤得意のストーリーです。 池井戸氏は銀行に勤めていた経歴があり、そのせいか、企業における人・モノ・金の描写がリアルで、読者を引き込んでいく力があります。 この小説の中で、くだんの巨大企業が主人公である中小企業を視察するシーンがあります。当初、中小企業のことをバカにしていた巨大企業の社員たちは、次のようなプロセスを経て、徐々にこの会社を見直すようになります。 〈社内を歩き出して最初に感じたのは、雰囲気だ。雰囲気がいい。それはすぐにわかった。すれ違う社員が会釈していったり挨拶をしたりといったことはもちろん、表情がいい。〉 〈そのとき、ある作業工程の前を通りかかった財前は、見慣れない光景にふと足を止めた。三十歳そこそこの若い工員が作業服を着て、ドリルを操作している。手作業で鉄板に穴を開け、そこにネジを填め込む作業だった。〉 〈その穴は、まるで精密な機械でも使ったかのように、垂直に穿たれていたからだ。仕事柄、いろいろな工場によく足を運び、自ら試作品の製造にも実際に関わっていたこともある財前だが、手作業で、これだけ精緻に鉄板に穴を開ける工員は、見たことがなかった。〉 〈社内見学の最後に入ったのは、研究部門だった。(中略)大企業の研究室のように厳重に隔離された空間なのだが、そこにいる研究者たちにはどことなく気楽な、肩肘を張らない自由な雰囲気が漂っていた。それが佃製作所の、社風なのかも知れない。〉 私としては、このシーンに、「工場内が整然として、清潔感にあふれていた」というセリフが入っていると、「やっぱり!」と思うのですが、残念ながら、それはありませんでした(笑)。しかし、そうした表現はなくとも、作者が企業を見る目には、そうした視点が入っていることと思われます。 半沢直樹シリーズにも、業績の悪い会社や倒産した会社のシーンには必ず、「雰囲気の悪さ」や「暗さ」「汚さ」などが描かれています。要するに、銀行マンはそこを見ている、ということです。 雰囲気を良くする。社風を良くする。本当に大事なことですね。 (小早)お知らせ◆「そうじの力」セミナー日程 ・6月10日(水)18:00~19:30 静岡県 沼津商工会議所 4階会議室D・6月11日(木)18:00~19:30 群馬県 太田市新田文化会館 第一会議室 ・7月8日(水)18:00~19:30 群馬県 桐生商工会議所 404号室 ・7月13日(月)18:00~19:30 東京都 都内を予定(会場未定) ※6/10、6/11、7/8、7/13の講師は 小早 祥一郎・8月4日(火)18:00~19:30 群馬県 ビエント高崎 402号室 ※8/4の講師は飯塚輝明 株式会社そうじの力環境整備(5S=整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を核とした経営改革の支援弊社はそうじを通じた「人づくりと組織づくり」を支援します。講義、現場巡回、チームミーティング、体験実習、計画作りを通じて、社長と社員の意識改革を図り、健全な企業風土作りをお手伝いします。支援期間は1年から。毎月2回訪問を原則としますが、状況とご要望に応じて、プログラムをオーダーメイドします。また各種団体向けの講演のご依頼も受け付けております。(全国対応)お気軽にお問い合せください。